第294話 王者健在、そして波乱
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
米井沢は立見対策を行ってきた、普段しない奇襲までやったりと冬の王者を相手に得点を狙い勝ちに行こうとしていた。
だが前半の時点で5ー0、更にシュート無しと立見相手に全く歯が立っていない。
攻略の糸口さえ見えぬ中でロッカールームに戻ると監督からは「諦めるな、精一杯やれば必ず弱点は見えて来る。まずは一矢報いるんだ!」と励ましの言葉を貰う。
励まされた米井沢の選手達は「よし、やるぞ!」と気合いを入れ直す。
ただ正直空元気だった。
精一杯やれば弱点は見えて来ると言われるが実際目にする後半戦の立見の動きは後半も衰えない。
詩音が立て続けに2点を決めてこの試合ハットトリックを達成すると田村も右サイドから侵入し、右足で豪快にゴールネットを揺らしていた。
更に川田がゴール前からロングスローを放り込み半蔵が頭で落とすと影山が気付かれる事なく上がっており、左足でゴールを奪う。
そして最後は30mのFKを明が壁の右横を抜けて大きく曲げる右足のキックでダメ押しの10点目を取る。
「(何でこんな強いんだよ…立見…)」
決められたGKは立見の強さを体感し、うつ伏せに倒れたまま試合終了のホイッスルを聞くことになる。
全国の舞台で2桁得点の完勝、立見の強さが今一度再確認された試合となった。
「おいおいマジか…これ予選じゃなくて全国なのにこの点差って」
「今の立見ってひょっとしたら去年の八重葉並…いや、それ以上か…!?」
相手は予選を勝ち抜いた猛者のはず、それで何故この点差を付けられるんだと記者達はざわついている。
予選やリーグ戦で立見が2桁得点で勝っていた事は知っていたがまさか全国までそれをやってくるとは思っていなかったようだ。
記者や観客達からの目から見て立見はとんでもない強さ、その彼らは普通の高校生プレーヤーと変わらずフィールドで勝利を喜び合っていた。
立見10ー0米井沢
詩音3
石田2
玲音1
緑山2
田村1
影山1
もう一つの試合の八重葉も立見に負けるかと序盤から攻めに出ていた。
3年となったエースにしてキャプテンの照皇を中心とした新生八重葉の攻撃陣は素早いパスや個人技で相手を圧倒、更に左サイドから2年左SDFの月城が全国1、2を争う俊足を活かし上がってチャンスを演出。
前半から多くのゴールを奪い照皇は前半30分で早くもハットトリックを決めてしまう。
更にダメ押しとなるこの試合1人で4点目のゴールを決めると照皇はベンチへと下がって行った。
守備では仙道佐助、政宗のUー19にも選ばれている兄弟2人が活躍しゴール前にしっかりと鍵をかけていく。
立見と同じく攻守で圧倒し、2桁得点とまでは行かなかったものの8ー0とこちらも大差で勝利していた。
八重葉の方も新たな1年が入りそれを育て、2年や3年と融合させてよりチーム力を上げていく。
今年は要となっていた3年や天才GK龍尾がいないとなって弱くなったのではと囁かれていた八重葉だがそれを否定するかの如く圧倒的な試合を見せたのだった。
「(誰だよ今年の八重葉は弱くなったって言ったのは…相変わらず化け物じゃねーか!)」
SNSで八重葉は去年程の力は無いと噂されてそれを見た者が観客の中に何人か居たが、この試合を見る限り力が落ちているとは思えない。
浅い知識を持った誰かが根拠も無しで書いたデマだろう。
今年の八重葉も強いとしっかり証明し立見と同じく3回戦進出を決めていた。
更に琴峯も室が1回戦の時よりも調子を上げてきたのか照皇に続き頭だけで3得点を決めてハットトリック達成。
此処に高校サッカー界の巨人ありと存在感を見せつける。
試合は4ー1で琴峯が快勝し3回戦へと駒を進めていく。
立見と共に東京代表として出場している前川もGK岡田の活躍で広島の強豪校を相手に1ー0で勝利、2試合連続無失点とこちらも好調だ。
1回戦と同じく強豪校がいずれも勝利していく、この2回戦も大きな波乱は無く終わるかと思われたがその波乱は起こっていた。
優勝候補の一角とされていた最神のイレブンが崩れ落ちるようにフィールドへと倒れており、光輝は呆然と立ち尽くしている。
「うああ〜!負げだぁ〜!何でやぁ〜!」
最神を率いる想真はまさかの2回戦で負けたショックでぼろぼろと涙を零し大泣きしていた。
観客や記者も最神が此処で負けるとは思ってなくて驚いており、スコアは2ー1と表示されている。
最神の方が1点、そして想真率いる守備陣から2点を奪ったのが対戦校の牙裏学園だ。
ダークホースと言われていた彼らが1回戦と違うのは酒井狼騎がこの試合にフル出場した事。
彼が最神から2ゴールを奪い勝利へと導き、最神の方は光輝が1点を返したものの力及ばずそれで精一杯だった。
「狼騎先輩やりましたね!最神相手に勝利ですよ勝利!」
牙裏は関西の強豪と言われる最神相手に勝って全体的に喜びを見せており、ベンチで控えていた五郎も飛び出して狼騎の元に駆け寄り興奮気味、その中で彼にドリンクを差し入れる事は忘れていない。
「フン…どいつもこいつも優勝が決まったような喜び方しやがって」
2ゴールを決めて勝利に導いた狼騎に喜びは一切無い、不機嫌そうな顔で五郎からドリンクを貰えばグイッと勢い良く飲んでいった。
番狂わせだと外で騒ぐ者は多い、だが彼にとってはどうという事は無い。
狙った獲物を狼の牙の餌食とした、ただそれだけの事だ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
大門「順調に勝ち上がって行ったかと思ったら最神が負けてる…去年は彼らから1点取るの苦労したなぁ」
弥一「そうそう、想真の守備陣が硬くてねぇー」
優也「PKに入ってもおかしくなかったな、その最神から2ゴール…やるな」
大門「守備もそんな大きな失点してなくて1点に抑えてるから、守りも結構硬そうだよ」
弥一「そんな強いんだなぁ牙裏」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます