第293話 疲れ知らず


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。










 大会1日目が終わり琴峯が3ー1、最神が2ー0と有力校が順当に勝ち上がりを見せればダークホースと言われる牙裏も2ー1で勝利。


 そして休む間も無く次の日の大会2日目、此処から立見に八重葉とシードの出番がやってくる。


 立見の初戦、相手は秋田代表の米井沢(よねいざわ)高校で1回戦を4ー3と撃ち合いを制して勝ち上がった攻撃的なチームだ。


「初戦しっかり勝ってくぞー!立見GO!!」


「「イエー!!」」



 キャプテン間宮の掛け声と共に皆が声を揃えた後に各自がポジションへと散って行く。センターサークルには明と半蔵の姿があってボールはセットされている、立見の先攻でスタートだ。



 ピィーーー


 立見のキックオフで試合が開始されると半蔵が軽くボールを蹴り出し明が後ろの影山へと戻す。


 秋田のFWがこれにプレスをかけていくが立見は素早いショートパスで繋ぎ迫りくる相手に慌てない、立ち上がりからそう来る事は想定済みだった。



 遡る事キックオフ前



「向こうの前線いきなりハイプレスでボール奪う気満々で来るんで注意してくださいねー」


「マジか、向こうの1回戦とか見たけど序盤でそんな仕掛けは無かったぞ」


「でも立見対策って事でこの試合はやってくるかもしれないから、警戒するに越したことはないよね」


 弥一は前線の米井沢FWが考えている事を読み取り伝えていた、これを守備陣は把握しハイプレスの奇襲に備える事が出来たのだ。


 米井沢はデータに無いであろう戦法をこの立見戦で仕掛け、高校随一と言われる立見の守備を翻弄して崩そうとしていた。



 だが心を読まれてるとは知らないまま相手が仕掛けるハイプレスに対してボールを持った弥一はスルッと一気に寄せて来る2人の間を突破。


 奪わせないだけでなく前へと出て行き弥一は明へとパス、これに明はしっかり足元に収める。


 すると普段両サイドへと散っている氷神兄弟が此処で動き出す、2人とも中央の方へと向かって走っているのだ。


「真ん中固まれ真ん中ー!」


 相手DFの指示で守備陣はゴール前を固めていく、明が氷神兄弟を使い何時ものサイドを捨てて真ん中からぶち抜いてくると読んでの指示だった。


 だが明は2人が真ん中へと寄ったタイミングで左サイドへと大きくパスを出す。


 そこには立見の左SDF翔馬が走っている、氷神兄弟の動きに釣られて真ん中へと寄っていた為にサイドはガラ空きだ。


 相手のSDFが翔馬へと向かうも時すでに遅し、左足のクロスで高くボールは上がり半蔵がジャンプ。

 190cmを超える長身は相手DFと頭一つ抜けて空中戦を制すると頭で下へと落とし走る選手へと合わせた。


 その走り込んでいた玲音が半蔵の落としてくれたボールを普段蹴る左足とは逆の右足でダイレクトに撃てばゴール左へとシュートは飛んでいく。


 GKが右腕を伸ばすも届かない、そのままシュートはゴールネットを激しく揺らしていった。


 早い時間帯に立見の先制、ゴールが決まればたちまち会場は歓声に包まれる。


 全国の舞台でゴールを決めて玲音は詩音と共に喜び合い、中学で全国を経験しているせいか彼らに変な緊張などは無かった。





「立見、これ去年より強いよな…?」


「去年の立見は此処まで攻撃力確か無かったはずだし、いくら氷神兄弟や石田と中学の猛者を揃えたとはいえこの勢いは…並じゃないぞ」


 注目されている立見、そんな彼らを記者達が放っておくはずもなく多くがカメラを手に試合を見ている。


「しかしこれ、初戦から飛ばし過ぎじゃないか?」


 記者達の前では立見が前半から先制を決めたかと思えば米井沢の反撃を防ぎ、すかさずカウンターへと出れば今度は氷神兄弟が大きくサイドへとそれぞれ走る。


 今度はシンプルに右の空いているスペースへと影山が大きく蹴り出すとそこに詩音が走り込み、追いついてトラップすればそのままエリア内へと侵入。


 キックフェイントでDFを1人翻弄し躱せば右足でシュート、右下の隅を狙ったシュートにGKは取れず再びネットは揺らされる。


 早くも2点差とリードを立見は広げていく。


「うーん、確かに結構飛ばしてるかな…勢いがあるのは良いけど今回の夏の大会でこれは危ないんじゃないか?」


「見てる分にはたくさん様々なゴールが生まれて楽しいけどな」


 記者達はこの立見の勢いは持たないのではないかと思われた。


 間違いなく優勝候補筆頭であろう強さだがそれが持つのかと、何処かで疲れが出て思わぬ所で躓く事もあるかもしれない。


「神明寺弥一とか特に全試合フル出場でフランスから帰ってきてそこからのスタメン出場だろ?何週間か間が空いたとはいえ疲れは残ってるはずなんだよな」


 同じフランス組の優也はベンチスタート、フランスで出番が無かった大門はスタメン出場でゴールを守っている。


 弥一は世界の強豪の居る大会で決勝も含め全試合フル出場、にも関わらずこの試合からスタメンで何時もの位置に立って声を出して明るく鼓舞する姿があった。


 いくら天才と言われた高校No1プレーヤーといえどあのスケジュールで疲れてない訳がない。


 何処かで疲れが出る、そうやって本命と言われた強豪は次々と敗退していく。


 それを立見が耐え凌げるかどうか、記者達がそう思っている間に前半が終わり既に5ー0と立見が5点差と大差をつけていた。

 半蔵が2点を決めていき明も前半終了間際に1点を取っている。



「神明寺先輩…疲れは大丈夫ですか…?」


 ロッカールームへと戻る中で明は弥一へと声をかけた、この中で一番ハードな日程であろう彼の体調を気遣い無理してないかという心配があった為だ。


「全然?休みの間しっかり休んだり遊んだりしたし美味しいご飯も食べて来たからね、それにこの試合も給水ちゃんとやってるしさ♪」


 弥一は給水可能なタイミングでしっかり水を飲んでいた、それは薫からの教えでもあり給水出来るタイミングを逃すなと立見サッカー部は指導されている。


 サッカーの技術だけではない、こういった体力回復等の術も連戦を戦うには必要だ。


 その指導があるとはいえ平気そうに笑う弥一の顔を見て明はどんな回復力してんだと内心思いつつ共にロッカールームへと引き上げた。





 ーーーーーーーーーーーーーー



 大門「フランスで全試合出て今回もスタメン、大丈夫か?ってそりゃ思うよ!」


 弥一「だから大丈夫だってー、美味しい食事しっかり摂って遊んで休んだりしたら元気なれるもんでしょー?」


 優也「飯で全回復って漫画かアニメだろうそれ」


 弥一「漫画、アニメねぇー。この作品もそうなってくれるといいなー。という訳でサイコフットボールはもうじき300話到達します♪可能な限り毎日投稿は続くので応援やご贔屓よろしくお願いしますー♪」



 サイコフットボールは300話に迫ろうとしてますがまだまだ話は続く予定なので、皆様の手で盛り上げてくれると幸いです。

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