第295話 サイキッカーDFは狼に興味を持つ


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。










 2回戦が終了し2日目は最神がまさかの2回戦敗退、ダークホースの牙裏が3回戦進出を決めており関係者達を驚かせる結果となっていた。


 明日はオフとなり連日の試合からは少しだけ解放、各自が徹底して体を休める事だろう。

 選手はコンディションの方に集中し監督やコーチは次の試合に向けての作戦と布陣を考える、大体がこんな感じだ。


「(牙裏かぁ、気になるなぁ〜)」


 立見に用意された宿泊施設、利用する部屋の一つ一つが広々して解放感ある空間で窮屈にさせないよう配慮されていた。


 弥一はベッドの上に寝転び仰向けになりながらスマホを触っている、試合結果はもう全部発表されており牙裏が最神を下した番狂わせは弥一も把握済み。


「(こういう調べ物は摩央だけど次の対戦相手調べたり忙しいだろうし、最神に聞きに行っても想真が大泣きしててそれどころじゃなさそうだよね…)」


 自チームのデータ担当や対戦した本人に聞こうかとも考えたがいずれもそんな場合ではないはず、弥一はその線での情報収集は捨てて自分で調べる事にした。


 その気になればスマホ1つである程度の情報収集は可能、便利な今の世の中だ。


 試合動画の方は動画配信サイトに残っており弥一は今日行われた最神と牙裏の試合が行われた動画を再生する。


 茶色のユニフォームの牙裏が相手の司令塔光輝を徹底して封じ込めようとマークがかなり集中していた。

 牙裏が攻撃に転じる時も1人付いており一瞬の隙を突くカウンター対策もしている。


 それだけ光輝にマークが集中するという事は他が手薄になりがちだが光輝無しの攻めを牙裏の守備陣は跳ね返し対応。


 中々守備は硬めだ。


「(肝心の酒井狼騎はっと…)」


 守備陣のレベルは分かり弥一は五郎の言っていた狼騎という選手に注目する。

 何しろ想真の守備から2ゴールだ、どう取ったのか見ておいて損はない。

 立見の攻撃の参考になって+に働く可能性もあるからだ。


 狼騎は前線で特に動く気配は無い、前線で守備をしない今時珍しいタイプのFWのように見えた。


 守備をしないと判断したか最神の最終ラインはプレッシャーを感じる事なくボールを回している。


 すると突然彼は動き出した。



 最神のCBの1人へとボールが行った瞬間に狼騎はダッシュを開始、すぐにトップスピードに乗ると一気にCBへと迫って来ていた。


 咄嗟にダイレクトでボールを回そうとしたがそれよりも速く狼騎がこれをインターセプト。最終ラインからボールを奪い取ればゴール前へと一直線に突き進む。


 そこに想真が狼騎の突破を阻止しようと彼の正面に立ち塞がる。


 すると狼騎は速くもシュート体制、強引にミドルを狙う気のようで想真は動作をよく見る。キックフェイントで抜き去る可能性もあって見極める必要があった。


 だがフェイントは無い、狼騎は前に想真が居るにも構わず右足の鋭い振りによって強引にシュートを撃っていたのだ。


「かっ…!」


 ボールは想真の腹へと当たり、想真の顔が苦しみで歪む。これにより腹を押さえて動きが止まってしまう。

 当たってセカンドボールとなると狼騎は誰よりも素早く動き出し追っている。


 走った時のトップスピードに乗るのが速く、転がったボールはDFが追い付く前に拾い狼騎は1人で最神DFを突破。


 そしてゴールへと向けて左足でシュート、先程と同じ鋭い振り脚から繰り出されたボールは矢のように加速していた。


 最神のゴールを守るGKは関西No1と言われた洞山の後を引き継いだ優秀な選手だが彼はこのシュートを止める事が出来ない。


 想真達による堅い守備を誇るはずの最神ゴールを狼騎が個の力でぶち破り牙裏が先制。


「(瞬発力とか反射神経凄いみたいだな、2歩か3歩ぐらいでトップスピード乗ってるしボールへの反応も速かった)」


 狼騎はかなり瞬発力と反射神経に優れた選手、更に左右どちらでも同じようにシュートが出来る。


 去年の総体や選手権では見なかった未知の強敵、照皇や室の他にもまだこういうFWが居たのかと弥一はスマホ画面に映る狼騎の姿を見つめた。


 1ー0で牙裏がリードしたまま後半戦へと入り光輝も封じられっぱなしでは終わらず、天才的な足技を使って相手を翻弄しチャンスを演出するようになり流れを最神へと寄せていた。


 しかし中々フィニッシュまで決める事が出来ず牙裏の反撃、キャプテンマークを右腕に付けた短髪黒髪の選手がボールを持つ。


 牙裏キャプテンを務める3年OMFの佐竹丈(さたけ じょう)、180cmを超える大型の司令塔が迫りくる最神の選手を技で躱すのではなく強引に力で蹴散らすと狼騎へと少し浮かせたグラウンダー気味の速いパスを送る。


 この時最神のDFは彼へと付いているが狼騎はそのDFへと背を向けた状態でボールをトンと左足で軽く蹴ると相手の頭上を球が浮き上がって通過。

 そして狼騎自らも相手の横を通り過ぎてボールを追って行った。


 狼騎はそのまま追い付いた途端に右足を素早く振り抜きシュート、低い弾道で右下隅を狙った良いコースのシュートだ。


 だがこれを黙って見ている想真ではない、狼騎の放ったボールに対して懸命に飛び込み左足でブロック。2点目を阻止すればボールはこぼれて転がって行く。


 それに誰よりも速く反応し動き出したのはまたしても狼騎。


 他のDFが追いつくよりも、想真が起き上がる前に狼騎はセカンドボールを追っている。


 その姿は獲物を追いかけて狩る狼を思わせ、狼騎がこのボールに追い付けば振り向きざまに左足でシュート。


 追い付いた途端に素早いシュートを放たれDFはブロックに間に合わない、そしてGKが飛び付くも触る事は叶わず再び最神ゴールネットは揺らされた。


 2ー0、優勝候補と言われた最神が2点差を付けられて大盛り上がりの牙裏応援団とどよめく観客達。


 そこから最神も光輝がDF陣の一瞬の隙を突いて間を通す絶妙なスルーパスをFWへと送り届けると相手GKとの一対一を決めてくれて1点差まで追い上げる。


 ただその頃にはもう時間はアディショナルタイムで時間もあと僅か、追撃するには遅すぎる時間帯だった。


 牙裏が狼騎のゴールを守り逃げ切って最神は2回戦で姿を消してしまう。


 これが彼らの2回戦の戦いだった。



「おーい、弥一。飯だぞー」


「んー、今行くー」


 ノックと共に川田の声が聞こえてきた、どうやら夢中で動画を見ていて夕飯の時間にいつの間にかなっていたようだ。


 弥一はスマホをしまうと部屋の外へと出て来た。


「普段なら何時も飯は早い時間に行くのにお前、何かあったか?怪我してるとか無理してるなら早めに言えよ」


「そんなんじゃないから大丈夫だよー、動画見てて時間忘れただけだしー」


 川田に体調を心配されるが弥一は元気だと明るく笑って伝える、本当に疲れておらず何処か痛む所も無くスマホを見ていたのも事実であり嘘は言ってない。



「ちょっと珍しそうな狼の動画があったからさ♪」




 ーーーーーーーーーーーーーーー




 川田「狼ねぇ、お前フォルナとか動物も好きだなぁ」


 弥一「そう言ってる間にこの作品120万PV行ってたよー♪やったー♪」


 川田「マジか!?嬉しいもんだなー、此処まで見てくれるのは」


 弥一「このまま勢い乗ってどんどん先行きたいねー、300話も近づきますがサイコフットボールまだまだ続きまーす♪この先どうなるかお楽しみに!」

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