第280話 絶好のチャンスを迎えるエース
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『さあ日本の攻勢!左サイドの月城またしても左を突き崩すか!?』
中盤でパスが繋がり弥一、光輝、月城と素早く流れる華麗なワンタッチのパスワークはベルギーに寄せる隙を与えず。
この辺りのテクニックなら日本も欧州には負けてはいなかった。
「(こいつに縦に突破されたら不味い!)」
ベルギーの右SDFケントは月城のスピードを知ってから縦への突破を強く警戒している。
一瞬でも気を抜けばあっという間に置き去り、それ程の速さを彼は持っていた。
ドリブル突破を警戒していると月城は大きく右へとサイドチェンジの為に、左足で逆サイドの白羽へと浮かせたボールを蹴って送る。
今のUー19日本の長所は両サイドの選手にスピードあって優秀な選手が揃っていることだ、つまり右からでも左からでも攻められる。
中央の守備が硬い今このサイド攻撃を効果的に使えればベルギーとしても嫌がるはずだ。
送られた月城からのサイドチェンジのボールを白羽は綺麗にトラップし、自分の足元へと収めれば左SDFトールマンとの体をぶつけ合う激しいデュエルが始まる。
「(流石に激しいね!けどこれくらいなら慣れてる!)」
フランスの2部リーグでプロとして活躍する白羽、海外の選手と日々激しい当たりを経験しているので今更ベルギーのチャージに怯むことは無い。
トールマンが右足を出してボールを取ろうとした所に白羽はちょん、とスパイクの先でボールを軽く浮かせて空振らせればその隙に抜き去って突破。
『白羽トールマンを抜くー!快速ドリブラー白羽が此処からスピードに乗って右サイドを独走!!』
そこにダインが迫って来て白羽のドリブルを阻止しようとしていた。
「(今ならマーク甘い!)」
迫るダインの姿が見えると白羽は今なら光輝のマークは甘くなっていると判断すれば右サイド突破から中央へとパスへと切り替え、右足のインサイドで強めにボールを転がしていく。
思った通り左右のサイドに振られまくってきた影響か光輝はフリーの状態、これに気付いてメラムが動くが既に遅い。
ようやく光輝はボールを受け取る事が出来た。
メラムはスピードを上げて光輝へと寄せに行く、この辺りの寄せの速さは流石ベルギーだ。
だから光輝はこの一瞬でのプレーと判断が求められる、高いレベルになればなる程に1秒の遅れが命取りになるだろう。
室は今の所アキレスに高さで競り負けている、照皇には2人ぐらいのマークが居た。
相手GKドンメルは中々の曲者であり余程上手くコースをついてのシュートでも無ければキャッチされてベルギーボールになってしまう確率がかなり高い。
このままパスもシュートも駄目なら此処からドリブルで切れ込む。
光輝は中央からドリブル突破を試みる。
そうなれば相手DFは光輝を大人しく行かせる訳が無い、エリア内に入られては面倒だと照皇をマークしていた1人がターゲットを光輝へと変えて向かう。
『三津谷ドリブル!正面突破だ!』
照皇をマークしていたセインがまだ外にいる間に光輝を止めに走る。
まだ1人照皇のマークに付いている、自分が止めに行っても問題ないとセインは見ていた。
これに光輝は引っかかったと一瞬口元に笑みが浮かぶ、すると次の瞬間セインの右側をボールが通り過ぎていた。
照皇のマークが薄れて自分へと注意を向けた時、ほぼノーモーションで左足のアウトサイドを使って照皇へとパスを送っていたのだ。
ケントが照皇のマークに残っていたがパスに対しての動き出しは照皇の方が素早く反応し、左足でトラップすれば得意の右足へと持ち替えてエリア内でシュートを撃つ。
ゴール左下隅へとボールは向かっていきケントが出した足はブロックに届かなかった、ドンメルはこのシュートに反応するもコースはGKにとって難しいコース。
低いダイブで右腕を懸命に伸ばすも届かない。
先制ゴール、誰もがそれを過ぎった。
カァンッ
だがボールは無情にもゴールポスト左を叩きゴールラインを割ってしまう。
『あー!ポストだ!非常に惜しい三津谷から照皇へという決定的チャンス、鉄壁のDF陣の包囲網とドンメルの手を潜ってきたかと思えば次に阻んだのはゴールポスト!日本試練が続きます!』
『これは決めたかったですがポスト…!後少しですよ後少し!此処で下向いたら駄目ですよ!』
「くそぉ!あの絶好球を、俺とした事が!」
冷静な照皇が感情を表に出して悔しさを見せる、それだけこの試合での1点がいかに大事で欲していたのが伝わってきた。
「先輩、もう一本!もう一本行きましょ!」
「!ああ、すまん月城…!」
次に切り替えようと月城は八重葉の先輩へと声をかけていた、少し前までは自分が落ち着かせていたのが後輩に励まされて自分もまだまだ甘いなと自らを反省しつつ照皇は守備へと戻る。
「此処に来て月城が結構動いて積極的にプレーへ攻守で関わってますね」
日本ベンチ前から左サイドの月城が攻守でよく動いてるのが分かる、得意のスピードを活かした動きでベルギーの守備を脅かしたり攻撃を食い止め遅らせる事に貢献していた。
「歳児にアップを」
マッテオは時計を見れば富山に優也のアップを伝えるよう指示を出し、富山はベンチに座る優也へと準備をするよう言う。
月城が張り切っているのを見て後半早めのガス欠もあるかもしれない、そう思ったマッテオは早々に交代出来るように優也出場の準備を進める。
一方ベルギーの攻撃は今ひとつ噛み合わなくなってきていた。
司令塔ルイから始まる攻撃が単調になってきてエースのアドルフへこの後半はパスが全く通っていない、日本の守備が良くなったというより相手が調子を崩しているという感じだ。
ベルギーの攻撃が上手く行ってない今ペースは日本にある。
そして此処もルイがスルーパスを狙うも白羽がそれを読んでいた。
『ルイ、左サイドのスペースへとスルーパス!っとしかしこれを白羽が読んでパスを弾く!』
ルイのパスの成功率が下がっている、ベルギーボールのスローインになったタイミングでアドルフはルイへと近づく。
「どうしたんだよルイ、攻撃が単調になっててあいつらに読まれてるぞ。疲れが出たか?」
「疲れてない…余計な心配してる暇あったら」
ふいっとそっぽ向いてアドルフをルイは突き放そうとするが、アドルフはそのルイの顔を両手でガッチリ掴むと自分の方へと向けさせた。
「!?」
「不調なキャプテンを心配すんのは当たり前だろ」
ルイはアドルフを引き剥がそうとするが力も体格も上のアドルフ相手にそれは敵わなかった。
構わずアドルフは話を続ける。
「フィールドに余計なもん持ち込むな、お前はベルギーのキャプテン。ルイらしく堂々とやってりゃ誰にだって勝てる、違うか?」
自分に対して真剣な目で語りかける幼馴染にルイは何も言えなくなり黙ってその目を見ていた。
まるで自分がディーンを意識していたのを見透かされてるかのようだ。
「後は自分で解決しといてくれよ、相棒」
アドルフはルイを放すとポジションの方へと走って戻って行く。
そして遠くから今のやり取りを弥一は見ていた。
「(簡単に総崩れは起こさせない、かぁ)」
心を見てみればアドルフの言葉を受けた影響かルイの心は荒ぶっていた時よりも落ち着きを取り戻し始め、立ち直るのはおそらく時間の問題だ。
だったら立ち直ってしまう前に彼に一仕事してもらおう、弥一の視線は月城へと向くと彼を呼ぶ。
「おーい月城ちょっとー!」
「あ?なんだよこんな時に」
弥一に呼ばれた月城は歩み寄って来ていた、文句を言いつつも話を聞く気はあるようだ。
「あのさぁ………」
そして弥一は月城と打ち合わせ、スローイン開始までの僅かな間だった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
明「まだ0ー0か…本当にこれ1点勝負になってくるぞ」
詩音「1点勝負だったら神明寺先輩負けやしないよー」
玲音「先に力尽きるのはベルギーってねー」
半蔵「けど相手のアキレスやドンメルは優秀なプレーヤーだ、そして前線にはアドルフ…少しでも気を抜けば神明寺先輩がやられる可能性もあるぞ」
詩音「どっちの味方してんのさ半蔵ー!」
玲音「さてはベルギーワッフルやチョコレート大好きだからそっち寄りだなー!?」
半蔵「可能性を言ってるだけだろうがー!?」
明「…今日もあいつら賑やかだよなフォルナ…」
フォルナ「ほあ〜」
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