第279話 後半立ち上がり日本の奇襲
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『再び出てきました日本とベルギーの両チーム、この後半でどちらかにゴールが生まれて決着なるか?』
『また1点が重くのしかかる試合になりそうですよね』
フランスのスタジアムでの大歓声に迎えられながら両者共にフィールドへと立って再度ポジションへとそれぞれ向かう。
「延長とか考えるな!この後半で日本を叩き潰すぞ!」
「お、おお?どうしたルイ、すげぇ気合いというか顔が怖いぜ…?もうちょい笑ったほうが美少年っぷりが」
「からかってる暇あったら前向け前!」
弥一に煽られた影響かルイはピリピリした雰囲気を纏い後半に日本を叩くとチームメイト達に伝え、アドルフが和ませようと声をかけるがルイはきつく返していた。
「なんなん?あっち喧嘩でもあったんやろか?」
「さあー?それで仲間割れして大崩れしてくれたら儲けもんだけどね♪」
知らない間に何か変化が起きてるベルギーに想真は何が起きたんだと気になり、それを起こした張本人である弥一は良い感じで効果あったとルイを見ながら何時ものマイペースな笑みを浮かべていた。
かなりディーンの事は意識していたようで彼の事に関して煽れば効果あるとは思ったが予想以上だったようだ。
後半戦、日本ボールから始まりセンターサークルに立つ照皇と室。
ピィーーー
キックオフで試合再開の時を迎え、照皇が軽くボールを蹴り出すと室は後ろの光輝へと戻せば両選手のFWは前へと向いてベルギーゴールを目指し走る。
すると光輝は左サイドの方に僅かに空いているスペースを発見、後半開始早々に向こうのSDFがまだ集中しきれてないようだ。
光輝と月城の目が合うと光輝は左手で走れとジェスチャーで伝えれば月城は自慢のスピードを飛ばし左サイドを一気に走る。
その瞬間に光輝の正確無比な右足の浮き球のパスが大きく出ると寸分の狂いなく狙っていた左サイドの空いているスペースにボールを落とす事に成功、月城はこの試合初めてスピードの活きる場面を迎える。
『三津谷左へといきなり大きく出した!そこに走り込む快速の月城!』
「寄せろーー!」
飛んでくるルイの怒号と共にベルギーの右SDFケントが月城にボールを取られる前に蹴り出そうと向かう。
だがこの世代の日本において1、2を争う月城のスピードは想像以上だ。
風のように、その表現通りに月城はケントがボールに触る前に送られたパスへ先に到達、前方に相手がおらず前が開いてると素早く判断すれば月城は前へと強く蹴り出せば自らもそれに追い付き走る俊足を活かすドリブルで左サイドに敵陣深く切り込んで行った。
「中には入らせるな!」
ゴール前のドンメルが大きな声でDF陣へと伝える。
最悪なのはあのスピードで中へと切れ込まれて接近される事、そこから揺さぶられては非常に面倒だ。
ケントが必死に戻り月城へと迫っている、この時月城の視線はゴール前にいる照皇へと向けられていた。
すると照皇をターゲットに月城は低く速いクロスを左足で蹴り出す。
高さが揃うベルギー相手には低いボール、照皇の技術をもってすればこの速い球も合わせられるはず。
ゴール前厳しいマークにも関わらず照皇はいち早くクロスに反応、低いボールに対してダイレクトで蹴りに行く構えだ。
それに対して大胆にも前に出て来るドンメル、先程までゴール前に居たのがいつの間にか照皇の元まで迫っている。
恐るべきダッシュ力でドンメルはこのボールを両手に触れて弾き、照皇がこのボールに合わせる事を阻止。
だが日本の攻撃はこれで終わりではない、弾かれたボールはラッキーな事に光輝の元へと転がっており光輝も反応して走る。
ボールに追い付く光輝、ドンメルが前に出ているこの状況で選択したプレーは右足のループシュート。
弧を描きベルギーのゴールへとDFの頭上を越えて向かっていた、ドンメルは立ち上がるもあそこからボールに飛びつくのはおそらく無理だ。
このまま先制、そう思われた時にボールはゴールに吸い込まれて行くかと思えばベルギー選手の頭によってクリア。
室のマークに付いていたアキレスが光輝の絶妙なループに対して持ち前の長身とジャンプ力を持って飛びつき頭がボールに届いていたのだ。
この時に室が迫っていたが彼の追撃を避けるように後方へとクリアしてコーナーに逃れる。
後半いきなりのビッグチャンスだったがあと一歩の所で決まらなかった、だが日本のセットプレーとなるのでチャンスは続く。
「FW2人は絶対に逃すな!外は両サイドハーフの動きに注意だ!」
ゴール前からドンメルが大きく声を上げてどんどんと指示を飛ばしていく。
再び光輝がキッカーを務める右からのCK、光輝は考えている。此処まで低いクロスを多めに蹴っていてそろそろそう来ると読まれる時だ、それならと意表を突く狙いで蹴り方を決めると右手を上げた。
光輝は此処でシンプルに室の高さに合わせようとハイボールを右足で放り込んで行く。
室にはアキレスがマークしているが高さに自信ある室の事だ、このまま得意の高さで負け続けは納得しないだろう。
再び室とアキレスの空中戦、しかしそれに割って入るような形でドンメルが飛び出しており空中で二人の頭が触れるよりも先に両手でボールを掴み取りキャッチングに成功。
そしてすぐに前へと目一杯スローイング、これが伸びを見せれば一直線にアドルフの元へと届かせて彼はすかさずドリブル開始。
『あー!ベルギーのカウンター!アドルフに渡って日本危ない!』
「(させへんわ)!」
アドルフの前に想真が素早く迫れば彼との真っ向勝負のデュエルとなる。
得意のテクニックを駆使したドリブル、体を使ってのフェイントも織り交ぜて翻弄するが想真は抜かせず喰らいつく。
ボールは奪えないもののこれでベルギーの攻撃は遅らせられて日本の守備の陣形は整えられていく。
するとアドルフは強引にシュートへ行こうと右足を振り上げてシュート体制、想真は飛んでくるコースを予測しサイドステップで回り込みブロックを試みる。
「(上手いけど、甘いな!)」
「!?」
右足でシュートに持っていこうとしたアドルフだが瞬時に右足のアウトサイドパスへと切り替えて軽く右へと転がしていた。
これには想真も意表を突かれてしまいすぐには動けない。
そしてそこに走り込んで行くのはアドルフと幼馴染の付き合いのルイ。
するとルイに対して弥一が詰めてきてその姿が見えてきた。
「らぁぁー!!」
雄叫びと共にルイは弥一が来る前に力を込めて左足のインステップシュートを日本ゴールに向けて放つ。
この瞬間に弥一はニヤリと笑う。
何故ならルイが蹴ったボールは大きく浮いてしまい日本のゴールを捉えられていなかったからだ。
そこから急激に落ちるドライブ回転もかかっていない、ボールが落下する気配が無いと見れば藤堂は落ち着いてシュートを見送り日本ゴールのゴールキックと主審は指示する。
『ベルギーのカウンターでしたが日本助かった!シュートが精度を欠いていたかルイのミドルシュートは枠を大きく逸らしてくれました!』
『高い確率で枠に行く彼のこのミスは珍しいですね』
「ち…悪いアドルフ!チャンス無駄になった!」
「また作るって、それよりお前はもう少し落ち着けな?」
「俺は落ち着いてる!」
シュートを外したことをアドルフに謝るもその後で落ち着くよう言われたことに対してルイは言い返しポジションへと戻る。
「皆ー、後半は日本が支配するチャンスだからガンガン攻めようー♪」
ベルギーのリズムが狂い始めて来ているのを察知したか弥一は此処で攻めようと皆へと声をかけて盛り立てていた。
前半攻められた分今度は日本が攻める番だ。
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優也「何か知らないけど、ルイの奴少し調子悪くなったか?」
大門「結構な大ホームランだったからなぁ、でもまだ立ち上がりだし気は抜けないだろ?」
優也「それはそうだ、気を抜けばアドルフにやられかねない。向こうの守備を思うと取られたら取り返す、が簡単には出来ないだろうからな」
大門「また、1点勝負かなぁ?」
優也「大事な試合だと1点の重みが違うから大体そうなるものだろ、立見にとっては何時もの事だけどな」
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