第278話 狙いを定めて仕掛けるサイキッカーDF
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
前半が終了して0ー0、日本とベルギーの決勝はスコアレスで折り返しを迎えて選手達はハーフタイムの為にロッカールームへと戻り体力回復に務める。
ロッカールーム 日本チーム
「すまない、あの絶好のチャンスを外してしまった…!」
照皇はロッカールームに到着するとすぐにチームの皆へと点が取れなかった事を謝罪。
「大丈夫ですよ、まだ前半ですしチャンスはまだ作れると思いますから」
「しかし…」
「むしろ謝るのこっちですわ、思うようにパスが送れへん」
政宗はそんな事無い、大丈夫だと励ますが照皇は決めきれなかった己を悔いている。
更に照皇と同じく攻撃出来てなくて点が取れてない事を気にするのはベルギーの中盤にこの試合抑えられている光輝、少しでも体力回復に努めようと水を飲んでいく。
「あのベルギーのアキレスってCB相当高いよ、体はアメリカのデイブの方が大きかったけど結構体の強さあってガツンとふっ飛ばされるし」
室をマークして止め続けているベルギーのCBアキレス、高さだけでなく非常に強い肉体を持っているとぶつかり合い続けた室は自らの体験からそんな感じがしたとチームメイト達へと伝えていく。
「DF陣だけしゃなく後ろにいるGKも中々の曲者だ、流石今大会まだフランスにしかゴールを許してないだけある」
ベルギーのDFに加えてその最後尾に控える守護神のドンメル。
彼の反応やキーパー技術も侮れない、決定的な照皇のシュートを見事セーブしてみせた実力は伊達ではないだろう。
同じGKから見て彼は出来ると藤堂はドンメルをそう評価していた。
「後はアドルフやな、あいつ結構マークしづらいわ。気付けばスルッとぬかれそうやし気が抜けへん」
想真はアドルフが今までのFWと比べやりづらい相手だと感じ、弥一や佐助達の助けが無ければ1人で抑えるのは難しい。
頭の中で彼の姿とプレーを振り返り彼をどう抑えようか、想真の頭の中はそればかりだ。
「スピードあるしボディバランスも抜群だからね、腕も上手く使ってくるから相手すると中々厄介だよー」
「はっ、欠点無しかい。流石一足先に活躍するプロやわ」
「欠点ならあるよ?すぐ脱ぎたがる」
「ただの変態やないか!」
真面目にアドルフを抑える打ち合わせでもするかと思えば何処か漫才のように思える弥一と想真のやりとり。
それに思わず笑ってしまう者もいて良いリラックスとなり結果オーライだった。
「アドルフばかりに気を取られてるけど他の攻撃陣も動き速くてパワーもあるよな、エースをデコイにして他が決める得点力は充分でそこも気を付けないと…」
佐助はアドルフだけでなく両サイドハーフのアドンやトーラスといった攻撃も注意が必要と言葉にする、確かに彼らもゴール出来る力は充分持っているので警戒しなければならない。
「いや、彼らはむしろ遠目からなら撃ってもらった方がいいかな。あれくらいのシュートなら取れるでしょ藤堂さん♪」
「…無茶振りだな、まあ取れないとは言わないし取る自信もある」
弥一は藤堂の実力さえあれば遠めなら両サイドのシュートは撃たれても大丈夫と、藤堂へと微笑んで振り返れば振られた本人は軽くため息をつくも止められるという自信を見せていた。
コースを切って限定させてなおかつ遠めから撃たせれば藤堂なら取れる、そこから彼のスローイングやパントキックで攻撃へと繋げて行けば相手の守備が整わぬ奇襲へと繋がるかもしれない。
実際に実行するのは危険に思える、弥一や藤堂のような優れたDFとGKがいなければ成り立たない作戦だ。
一歩間違えれば即失点に繋がる諸刃の刃なのだから。
「それにお前は不思議と相手が撃ってくるタイミングが分かるらしいからな、俺達ならこの無茶振りに思える作戦もひょっとしたら上手くいくかもしれない」
「博打みたいですねー、外したらどうなります?」
「賭けに勝つなら最後まで己の勝利を信じて疑わない事だ」
「はは、ですよねぇ。愚問でした」
白羽からの問いに対して藤堂は迷いなき目で言い切り白羽はこれに右手で軽く頭を掻いて笑った。
「面白い、良いでしょう君達の思うようにベルギー相手にかましてみなさい」
「監督!?」
「野球にもあるじゃないですか、わざとバッターに打たせてアウトを取って得点をやらないというのが」
弥一達の考えた作戦は無茶であり富山は止めようと考えたがマッテオは止めない、作戦を考えた選手達に思い切りやるように伝えるのみだ。
「やらせてみましょう、彼らがこのUー19で優勝を期待される日本代表になれるかどうか見届けようじゃありませんか」
ロッカールーム ベルギーチーム
「危ない所だったな、ドンメルいなかったらあいつらに得点やってた所だったわ」
どっかりと椅子に座れば勢い良くゴクゴクとペットボトルの水をアキレスは一気に飲み干す速さで飲んでいた。
「…ショウオウとかいう日本のエースは中々やる、一歩反応が遅れていたらやられていた」
一旦キーパーグローブを外したドンメルは同じくペットボトルの水を手に取り口にする、守備の2人は思ったよりも良い攻めをしてきた日本の実力を評価していた。
「油断するなよ、相手はA代表のワールドカップでベルギーを追い詰めた日本なんだからな」
「分かってるさ、日本が弱いと侮るような事は無い。そもそもこの決勝まで勝ち上がった時点で強者だろ」
アドルフは守備の要である2人へ話しかけ、彼らの活躍を労いながら日本を侮らないようにと警戒を促す。
それはアキレスやドンメルだけでなく他のチームメイト達も皆同じだった。
今の日本は決勝の舞台に立つ力を持つチーム、スコアは0ー0とベルギーが攻めているにも関わらず点が取れない状況が続いている。
こんな状況で日本を侮る者は誰もいないはずだ。
「ルイ、後半も良いパスを頼むな。勿論チャンスあったらお前が決めちまえ」
「言われなくてもそのつもりだ」
アドルフはルイにも声をかけていき、ルイは此処まで日本に粘られて予想外だったのか表情は険しい。
このハーフタイムで心を落ち着かせて後半に臨もうとルイはペットボトルの水を飲み干すと時間が迫ってるのを時計で確認すると席を立つ。
「行くぞ、後半でベルギーが優勝を決める!」
「おお!」
ルイの言葉と共に皆が声を揃えればチームの士気は高まり後半に向けて既に臨戦態勢。
ロッカールームを出ていくとそこに日本チームの姿もあってそれぞれがフィールドに出ていた。
そしてルイがフィールドに出ようとした時。
「ベルギーのキャプテン君」
突然声がしてルイがそちらを見ればいつの間にか弥一の姿が側にありいつも通りのマイペースな笑顔でルイへと話しかけていた。
「なんだ、日本のチビ」
弥一の事をあまり歓迎してないのか不機嫌そうな顔で睨むように見ているルイ。弥一は日本語でなく英語で語りかけており会話は互いに通じている。
すると弥一は笑ったまま近づきルイの耳元で喋りかける。
「あんな程度の力でディーンを超える?笑わせないでほしいな」
「!!」
マイペースな微笑みから一転しニヤリと不敵に笑って弥一はルイじゃディーンの実力に及ばないと刺激させる。
「ディーンはもっと上の世界だよ、じゃね♪」
弥一はいつも通りの顔に戻るとルイより先にフィールドへと出る。
取り残されたルイは両拳を強く握りしめて弥一を睨みつけていた。
「(神明寺弥一…!!)」
弥一から言われた言葉が頭から離れずルイは激しい怒りが湧いてくる。
そしてこの試合の目標を決める、ディーンの力を知る元ミランの弥一を日本共々粉々に粉砕する。
二度と立ち上がれない程に。
そう決意しフィールドに向かう彼は気づいていなかった。
ディーンへのライバル視を心で読まれ、それを利用し強く煽って揺さぶってきた弥一の心理戦である事を。
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佐助「気付けば8月か」
弥一「日本だと総体やってる時期ですねー、ああ地獄の日程かぁー」
想真「夏祭りや海とかそういうのゆっくり楽しむ暇もあらへんわ俺ら!」
弥一「去年だと楽しめてたけどねー」
佐助「え、去年っていうと俺ら八重葉はインターハイでそっちが…?」
弥一&想真「水着のお姉さんにナンパされて海デート」
佐助「何だその男としてめちゃめちゃ羨ましいイベントはー!」
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