第224話 期待の新入生とサイキッカーDFの初顔合わせ


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












「よーし、終了!今日は此処までだ、早々に帰って体をよく休めとけよー」


 新入生のサッカー部体験練習、練習時間は休憩時間も含めて150分。練習内容は厳しめで時間の方は2時間半で収めていた。


「けど啓二よぉ…何もあいつら居る時にインターバル決行なくても良いんじゃね?」


 週に2、3回行う厳しいトレーニングを今日はあえて新入生が居る時に行っていた、これは間宮が決めた事であり最初はまず軽めのメニューで様子見ても良かったのではと田村は意見を述べていく。


「あいつらはついこの前まで中学生だったんだ、つまり体は60分の試合に慣れちまってる。入学式とかこれからあって一旦間は空くし90分と行かなくてもまずは80分戦える体へと効率的にまずは鍛えた方が良いだろ」


 まずは体力面を彼らには強化してもらい60分より更に長い時間を戦える体力を身に付けさせる、かと言ってそればかりやらせずボールにもちゃんと触れさせておく。その辺りのバランスも考えて練習メニューを考えなければならない。


 今年の立見はインターハイ、選手権だけではない。リーグ戦も戦わなければならず更に弥一、大門、優也と3人の選手がU-19の代表候補に呼ばれて場合によっては彼ら無しで戦う事も考えられるだろう。

 戦い抜くには早い段階から1年をしっかり鍛えて2、3年のレギュラーに割り込めるぐらいの実力者がその中から何人か出て来てもらう必要がある。


「いやー、もうちょい熱血や根性みたいな感じでお前行くのかと思ったけどちゃんとキャプテンやってんなぁ」


「馬鹿にしてんのか」


「まーまー、とりあえず着替えようよ」


 からかう感じで間宮の肩を叩く田村、その2人へと影山はもう着替えようと伝えればそれぞれ汗で汚れた練習着を脱いで着替えていった。






「つっかれた~」


「あ~、早くシャワー浴びたいよ~」


 中学時代は全国制覇を経験した氷神兄弟、更に全国準優勝の半蔵とこの3人を筆頭に新入生達は立見の練習をその身で体感して1日を終えるとそれぞれ更衣室で練習着から着替えていく。


「おー半蔵すっごい筋肉だー♪」


「本当だぁ、マッスルだー」


「お、おい。あんまベタベタ触れて来るなよ…」


 半蔵が上半身の練習着を脱ぎ捨てると鍛え上げられた筋肉が解放され、詩音と玲音はそれぞれ興味深そうに触れていた。その双子の彼らは2人揃って華奢で半蔵とは逆だ。


「当たり負けしない訳だよねぇ、DF吹っ飛ばしてゴール決められたもん」


「そうそう2-0から追い上げられて焦ったよあの時」


 中学の全国決勝で氷神兄弟と半蔵のチームは対戦しており詩音が1ゴールに玲音が1アシストと双子揃って活躍し2点のリードを広げていたが半蔵達の方も意地を見せ、相手のCDFに体を激しくぶつけられた半蔵は逆にそれを蹴散らして右足のシュートで豪快なゴールを決めていた。


 追い上げるも後一歩及ばず決勝は氷神兄弟の方に軍配が上がる。


「こっちはお前らの連携プレーの対応に苦労しまくりだったんだけどな、ちょこまか動き回られてうちのDF「どんだけ動くんだよ」とぼやいてたぞ」


「そりゃあ立ち止まって呑気にマークとか誰もされないでしょ」


「ねー」


 彼ら双子は小柄な体格だが身軽で素早い、それ以上にボールを使ったプレーは軽業師を思わせる程。詩音と玲音の数々のゴールとアシストがチームを全国に導いたのだ。


 半蔵は強靭なフィジカルと長身を武器にチームを引っ張りゴールを量産してきた、長身を活かしたヘディングは勿論右足のシュートも得意にして強烈、互いにタイプは違えど攻撃的な選手。


「あ、帰ったら荷物整理の続きやらないといけないんだった…」


「「荷物整理?」」


 帰宅したらすぐに荷物整理、半蔵の言葉に双子らしく2人の高い声は綺麗に重なる。この辺りも息ピッタリは流石双子と言うべきか。


「立見にはつい最近サッカー部専用の寮が出来たんだ、今住んでる場所から此処までちょっと遠いから寮住まいにしようと…ってお前ら知らなかったのか?」


「寮暮らし全然考えてなかったからー」


「ていうか創部から数年で結構施設が充実してるんだね立見サッカー部って」


 半蔵と違って特に寮住まいは考えていなかった詩音と玲音。


 立見は去年の夏に東京の総体予選を優勝した辺りで寮の建設は始まっており、それが3月に完成していて既に立見サッカー部の選手の中に何人か寮生活をしている者が居る。半蔵や他の何人かの新入生も申し込んでおり4月の入学式を経てからの寮生活は決定していた。



 今日は半蔵は家に戻り荷物整理なので詩音や玲音と共に帰り、高校の練習を経験して彼らは4月の入学式を迎える。










 桜の木が咲き誇る4月、立見は入学式を迎えて新たな新入生達を迎える。その中には詩音、玲音、半蔵の姿もあり彼らは無事に立見高校1年生となっていた。


 そして多くの新入生と共に立見サッカー部への入部手続きを行い、そこで練習時間について説明を受けて朝の6時50分から開始。終わりは8時20分と1時間半の朝練、放課後は3時40分から6時10分までの2時間半。それが立見の練習開始時間と終了時間だ。

 その後は立見サッカー部の寮に関しての説明が行われて管理する寮母への挨拶も済ませる。




 迎えた初日の朝練、新入生達は大体の部員に事前の練習で顔を合わせているが今日はその時に不在だった3人の立見サッカー部のメンバーが来る。


 その内の1人が姿を見せれば彼らは小柄な人物へと注目の目を向けていた。


「新入生の皆さんようこそー、立見2年の神明寺弥一です♪」


 陽気に笑って後輩へ挨拶する弥一の姿は選手権をテレビで見ていた彼らからすればそれとは同一人物に見えない、だが今目の前に居る者こそが伝説のゴールを決めて絶対王者と言われた八重葉を倒し、立見を全国制覇へと導いた今や高校サッカー界のスーパースターだ。


「キャプテンとかまあまあ怖いけど皆怒られないように頑張ってねー♪」


「今お前に怒りてぇわ弥一」


 間宮をまあまあ怖い先輩だから怒られないようにと伝えれば間宮はその弥一に腕を組んだまま怒りの視線を向けていた。



「神明寺先輩って何か実はめっちゃノリ良い人?」


「なのかなぁ?」


「(ついに神明寺先輩が目の前に、決勝よりも緊張してきた…!)」


 詩音と玲音がヒソヒソと話す中で半蔵は憧れる弥一を前にして緊張し胸が高鳴っていた。


 すると弥一は3人の方へ小走りに近づいて行く。


「え、こ、こっち来たよ?」


「僕達の声聞こえて怒りに来た…!?」


 急にテレビで見てきた人物が自分達へと迫るとマイペースな双子達も動揺してしまう、だが彼らが慌ててる間に弥一はその隣に立つ半蔵の前へと来た。


「そこのでっかいキミー、試合前でもなんでもないのに緊張して固くなり過ぎだよー。肩の力もっと抜いて楽に行こうよ♪」


「!?あ、は…はい!すみません!」


 弥一に緊張を見抜かれて半蔵は頭を下げて謝罪。



「うーん、どうにも言葉じゃ駄目そうだから此処は…フォルナー」


 少し考える仕草をするっと弥一は立見の部室ある建物へと呼びかける、新入生達が何だろうと注目していると建物から白い猫が出て来る。


「ほあ~」


 綺麗な青い宝石のような瞳が印象的な猫は弥一の呼びかけに応えて姿を見せた。



「この白い猫は立見サッカー部のマスコットでフォルナって名前だよ、サッカー部に入ったからにはこの子と遊んだりとかしてあげてね♪」


 猫を飼うサッカー部というのは彼らはおそらく聞いた事も見た事も無いだろう、だが現に立見で猫が居る。弥一はフォルナの頭を優しく撫でてあげつつ紹介した。


「わー、猫だー♪」


「可愛いなー♪」


 詩音と玲音は愛らしい猫を見て癒される気持ちになっている、共に猫好きの様子だ。




「さて、それじゃあ立見式のフィジカルトレーニングを皆にも今日やってもらおうかなー」


 此処で弥一からついに部活開始が告げられる、天才DFと言われる彼とこれからどのような練習をしていくのか。立見式のフィジカルトレーニングと言われ、皆どのような内容なのか興味深く思う中で続けて弥一は言う。




「今から道場に皆で行って合気道するから♪」


 その言葉に皆が「え?」という反応や顔になったのは言うまでもなかった。




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影山「此処まで見ていただきありがとうございます」


間宮「この話が良い、先が気になると思ったら応援よろしく頼むぜ」


田村「というか弥一仕切ってんなぁー」


間宮「ま、あいつが後輩をどう面倒見んのか注目か」

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