第150話 止まらぬ波状攻撃、ゴール前の攻防戦


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












「あいつ、中学時代はFWとかMFやってたのかよ」


 立見ベンチにて摩央はスマホでこれからフリーキックを蹴ろうとしている相手GK小平を調べていた。


 その経歴は中学時代、東京では無名校のサッカー部でFWやMF。右ウイングや右サイドハーフを勤め、GKへ転向したのは中学3年から。


 元々チームでプレースキックが一番上手く、任されておりGKとなってからも役割は変わらず小平はフリーキックを蹴れる小さなキーパーとなったのだ。


 西久保寺は立見ゴール前に長身の選手を揃えている、高さある彼らのヘディングも西久保寺の攻撃力を支える一つでそれによるゴールも今大会既にいくつか決めていた。


「此処で得点はやれない、智春。お前も此処は行ってくれ」


「分かった」


 成海は此処での攻防はかなり重要と考え、守ってカウンターを狙うより確実に守る選択を取りFWの豪山も守りに参加させようと立見ゴール前に向かわせる。


 立見で180cm代の長身選手は今出ているスタメンではDFの間宮、DMFの川田、GKの大門、そして豪山の4人だ。


 西久保寺がゴール前にずらりと高さある選手を揃えるなら立見も対抗して高さある選手を集結させていた。



 小平は地面のボールを足で拾い上げると軽くリフティングでトントンと自らの頭上にボールを蹴り上げ、そのままトラップしてボールをセット。


 元々フィールドプレーヤーというのは伊達ではなく器用な足技を見せていく。



「(僕が思うのもだけど、凄いインターセプトする彼も流石に高さには弱いはずだよね)」


 ゴール前には既に立見と西久保寺の両選手で入り混じり、体の小さい弥一の姿は小平から見て見えなくなっていたがエリア内には必ず居るだろう。


 これまで数々のスーパープレーを弥一は見せてきたが、こういうパワープレーならいくら弥一が凄かろうが致命的に身長の低い彼では栄田や土門に高さでは競り勝てないはずだ。


 此処で弥一の脅威は無い、シンプルに高さで土門辺りに合わせれば良い。


 キックの方針は定まった、後は自分が正確にその場所へと放り込むのみ。




 西久保寺のフリーキック、小平は短い助走から右足を振り上げて強めにボールを蹴ると立見ゴール前へと高く上がり、落下地点には土門が待っている。


 ほぼ狙い通り、そう確信しつつ小平は蹴った直後に自陣のゴールへと走っていた。


 チーム1の高さを誇る土門がジャンプ、これに競り合うのは川田だが土門の方が高く飛び、彼の頭が競り合う中で当たり立見エリアの中へと高い浮き球が向かう。


 ボールに反応し、次に飛び上がるのは栄田。土門が頭で繋いだボールを栄田はヘディングシュートの態勢に入っている。


「うおらぁ!」


 気合の声と共に栄田と共に飛び上がって空中戦に挑むのは間宮。


「っ!」


 この気迫に押されたか、身長で勝る栄田相手に間宮は競り勝ちヘディングでエリア内からボールを外へと出す。


 だが出された左サイドには辻が追いついていてタッチラインには出さずプレーはそのまま続行、辻に対しては翔馬が止めに向かっていた。


 先程は弥一との1対1で止められた辻、此処でその汚名を返上しようと止めに来た翔馬にクロスを上げると見せかけて、キックフェイントからの切り返しで抜きにかかるが翔馬は辻へと喰らいつき、粘って抜かせはしない。



 すると辻は逆方向へと進路を変更してのドリブル、これに一瞬翔馬は意表を突かれてその間に辻はすぐさま左足のクロスを蹴った。


 今度は低いボール、高さに警戒しているであろう立見の心理状態。その証拠にグラウンダーのボールに反応したのはゴール前に残っていた前田。


 これに右足で合わせに行く。






 前田が右足を振り抜くがその感触は無い。


 その前に弥一が辻の低いクロス、それが前田に行くと読んで彼にボールが行く前に自らの右足で球を蹴り出してクリアしていた。



「(またあいつかよ!?)」


 先程に続いてまたしても弥一に得点を邪魔され、辻は頭を抱えたくなる。



 クリアされたボールはそれほど大きくなく、立見の陣内で高く上がる。これに土門が追っており、それに豪山が向かい再び空中戦でのぶつかり合い。


 今度は勝負は互角であり球は溢れてセカンドボールとなり転がって行く。



 拾ったのは若杉、またしても西久保寺のボールとなって中々プレーは途切れず立見は息つく暇の無い連続攻撃を受ける事となる。


「集中ー!此処が正念場だぞー!」


 ゴール前、間宮は集中を切らさぬようにと声を張り上げた。


 直後に若杉はボールを取った位置から立見のエリア内へと高いボールを放り込む、そこにDFに戻らず前線に残っていた前田がジャンプ。


 これに川田も飛んで前田へと体を寄せる。ボールを頭に当てたのは川田、なんとかボールをエリアの外へと弾き出していく。



 しかしサイドへ流れたボールを今度は明石が取り、またしても立見に息継ぎの暇を与えない。


 止まらぬ西久保寺の波状攻撃、これを守り続ける立見。



 どちらが先に音を上げるのか根比べとなりつつあった。



「行け行け西久保寺ー!」


「守れ立見ー!」


 両者の応援も熱が入り、精一杯の声援を送り続ける。そんな中でまたもチャンスの西久保寺、左サイドでボールを拾う明石は田村が迫る前にクロスを上げていった。



 またもハイボール、だがこれはエリア内ではなく外の方へと行っている。高いボールに栄田が待ち構えており、ゴール前の混戦を抜け出して彼は何時の間にか外で張っていた。


 そして栄田は飛び上がると頭ではなく右足のジャンピングボレーで合わせ、彼の右足がボールを捉えると勢いを得てゴールへと速いスピードで飛んで行く。



 だが、そこにブロックに飛び込む影があった。



 普段から目立たず気づかれにくい彼、だからこそ栄田も気づかなかったのかもしれない。


 栄田のジャンピングボレーに対して影山が果敢なシュートブロックで体を張って肩にシュートを受けていた、肩から感じる痛みにより苦痛で顔を歪める影山。


 それでも相手のチャンスを潰す事は出来た、彼のこの働きはかなり大きい。


 大きく弾かれてボールは立見エリア内の頭上へと上がっており落下地点に大門が走り、地を蹴ると高く飛び上がり両手でボールをキャッチ。


 西久保寺の波状攻撃をこれで止める事が出来て立見のDF陣はようやく息継ぎが許される。




 そして大門が大きくボールを蹴り出すと審判の笛が鳴って前半終了、時計を見れば前半の40分はもう過ぎており西久保寺の猛攻を凌ぎ切った立見は0-0でハーフタイムを迎える。



『西久保寺、DF2人も上がっての超攻撃サッカー、そして長身を活かしたハイボールも何度かありましたが惜しくも決まらず立見が守りきり前半終わりました』


『良い攻めでしたが立見もよく守りましたよ、西久保寺が今大会無得点で前半終わったのはこれが初めてでしたね』



「マサー、ナイスブロック!」


「影山先輩助かりました!」


 間宮、大門の2人が影山へと近づき先程のブロックをそれぞれが褒め、礼を言う。あれが無かったらどうなっていたか分からなかった。



「良かった、とりあえず点差無いまま攻撃乗り越えたね」


 駆け寄って来た幼馴染と後輩と共に影山は笑い合う。




「(彼も良いボランチだな、影のように急に現れて攻撃や守備に参加と非常に厄介だ)」


 西久保寺ベンチで影山の姿を見てから高坂は選手と共にロッカールームへと歩く。


 東京予選は両者スコアレスで前半が終わり、それぞれが後半に備えて僅かな休息を取る。











 おまけSS



 弥一「本日で「サイコフットボール~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~」は150話目に突入となりましたー♪」(クラッカーをパーンと鳴らし)


 摩央「うお!?またかよ!」


 弥一「これで驚くなんて摩央ってひょっとしてクラッカー苦手?」


 摩央「違ぇよ!ちょっとビックリしただけで…とりあえずまあ150か、結構長く続いたんじゃね?」


 大門「そうだね、結構長いと思う。去年の10月終わりぐらいからこれ始まってずっと更新してきた訳だからさ」


 優也「気づけば半年近くか、なんだかんだで此処まで来れたな」


 弥一「うーん、何処まで続くんだろうねこれ?作者もそれは分からないらしいしー」


 摩央「着地点見えて無いのかよ!?何処で終わるか分からない、大丈夫かこの物語!」


 大門「大丈夫、と思いたいけど…!」


 優也「とりあえず書き続けろ作者」


 弥一「ちなみにその作者は今日の3月28日が誕生日だそうなので、150話おめでとう!だったり作者おめでとう!という方が居てくれたらお祝い代わりに☆をポチポチポチ、とタップだったりクリックして送ってくれたり作品フォローとか良ければお願いしますー♪誕生日だから今日ぐらいは図々しく、みたいですよー」

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