第127話 力をつけたライバル達


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












 季節が秋へと入り選手権の戦いは各地で予選が開催、そこから2次トーナメントを目指し更にその上の優勝と全国出場を目指し9月から戦う高校がある。


 少し前は自分達と同じ位置だった立見、だがインターハイ予選の快進撃で彼らは一気に躍進。その勢いのままに東京王者へと輝いていった。


 支部予選からでもやれると証明した立見に続けとばかりに初戦から参戦の高校は今まで以上にやる気と野心に満ちている。



 その中でも特に勢いのある高校があった。






 前川高校VS川木西高校



 川木西が前川ゴールを目指し、素早い連携でパスを回してボールは動かされて行く。


 元々攻撃力の高さに定評ある川木西はこの試合で力を発揮しボールを支配。前川の方は我慢の展開が続いていた。



「左走ってるぞー!」


 このブロック決勝戦に来るまで前川は2試合連続無失点、その守りを支える前川の曲者GK岡田が積極的に声を出して指示を送っていく。


 これにDFの要である河野自らが前へと出て左へと走って来た相手選手、そこへパスが出て受け取った直後を狙って身体をぶつけてバランスを崩させていた。


 溢れたボールを前川DFがクリアし、この攻撃を凌いだ。



 前川が春からレベルアップしているように川木西も強くなっていた、立見の時にあった酷い疲労のようなものはない。あれから彼らは休む勇気をおそらく身に付けたのだろう。


 がむしゃらにトレーニングするだけではない、時折じっくり身体を休める事。それを覚えて川木西も安定した戦いで此処まで2連勝、この試合で前川に勝利して立見へのリベンジを狙っている。


 しかしそれは前川も同じだ。


 立見へのリベンジだけではない、彼らも全国出場を、優勝を狙って戦う。前川3年の島田、細野、河野はこれが最後の大会だ。此処で逃せば次はもう二度と無い。


 高校生として戦う選手権は今年で終わる、此処で最後にさせたくないのは岡田も同じであり此処で彼らの高校最後の試合にはしたくなかった。



 川木西が再びチャンスで攻め、右サイドから攻め上がった選手が低いクロスをFWへ合わせようと放り込む。


 そのボールに対して岡田は地を蹴り大胆に猛ダッシュで駆けて行き、ボールへと飛び込んで抑えた。


 まさか飛び出して来るとは思わなかったと呆然となる相手FWをよそに岡田はすかさずキャッチしたまま立ち上がり、一気に低いパントキックで細野へ送りカウンターのチャンス。



 細野が相手を一人躱して振り切ると前に居るのは島田と相手DF1人、此処でDFは早くも細野へと走る。此処で突っ込めば島田はオフサイドポジションとなり細野一人に集中出来ると考えたようだ。


 だが細野は冷静にDFと島田の位置をよく見ていた。


 島田がオフサイドポジションになる、その刹那右足で島田へとパスが出された。この時DFは右手を上げた、オフサイドだとアピール。


 しかし線審の旗は上がらない。オフサイドトラップを掻い潜った細野と島田、完全にキーパーと島田の1対1。



 これに島田は迷いなく右足でキーパーの右を狙いシュート。身体全体で止めにかかったキーパーの肩をすり抜けてゴールマウスへとシュートは入って行った。



 1-0、前川の先制ゴールが決まり前川の応援団は貴重な先制点にそれぞれが喜び合い、応援する声にも熱が益々入る。




 そしてこの1点を岡田を中心に守りきり、1-0で前川が川木西に勝利しブロックを制して3連勝達成。


 夏には成し遂げられなかった2次トーナメント進出を果たした。



「おーっし!待ってろ立見に八重葉!」


 春に敗れた立見へのリベンジ、更に元チームメイトにして同じGKのライバルが居る八重葉の龍尾を倒そうと岡田は張り切りつつも今日ブロック優勝を決めた喜びを仲間や先輩と分かち合っていった。



 春に立見と激闘を繰り広げた東京のライバル達が再び集結して新たな秋の戦いが始まろうとしている…。

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