第119話 交流深まる合同合宿
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
こっそり抜け出して戻って来た2人、ちゃっかりと全体練習に混じり参加して最初から参加してたように装うも回りからは抜け出した事などバレている。
「(何処行っとったんや、千葉の姉ちゃんナンパしに行ったとちゃうやろな?)」
「(アホ、そんな訳あるかい。冒険に偵察や!未開の地を見回りたくなるのが男の子ってもんやろ)」
想真と同じ1年、三津谷光輝が声を潜めて想真と会話。半分からかいのつもりでナンパかと言えば想真の方は冒険と偵察だと言い張る。
今最神の全体練習ではランニングだが足元にボールもあり、ドリブルとランニングの二つを合わせた練習だ。いずれも順調にボールを運べている中で想真は足とボールが一体化しているかのように最神内で一番上手いドリブルを見せていた。
慣れ親しんだ練習法なのでドリブルしながらこうして会話は彼らにとって朝飯前だ。
「(偵察言うとさっき立見のちっさい奴や猫と一緒やったな、あいつら偵察出来たんか?)」
「(まあなぁ、とりあえず言えるんはせやな…)」
偵察の事を光輝から問われると想真は立見が練習してる風景へチラっと視線を向ける。
「(神明寺弥一の東京MVPは伊達ちゃう、て事や)」
想真の中で弥一という存在、それは強く意識し残り続ける。同年代の同じ1年、同じリベロ。
近いうちに試合で戦うかもしれないライバルという予感が想真にはしていた。
「おー、いいねいいね。皆良い走りなってきたよー♪」
立見がナンバ走りでランニングしている中に弥一も混じって参加、回りを見れば最初の頃よりスムーズに走れるようになっている者は多く自分の走法として習得は近いものと感じた。
元々その走りを物にしていた弥一は別として。
「それで一人サボりに行ってたの誤魔化されねーぞ」
「酷いなぁ間宮先輩、誘われはしたけど向こうの偵察兼ねての合同練習してただけですからー」
弥一の掛け声に惑わされる事なく間宮は弥一が想真と共に走りに行ったのを走る中で言うが、弥一はそれはサボりではなく合同練習だと主張する。つまりサボりではないと。
「で?向こうの印象はどうだったんだよ、仲良く練習して帰りました。で終わりじゃねぇだろ?」
「ああ…」
付き合いも長くなってきたので間宮は弥一という後輩がどんな奴なのか分かってきていた、マイペースで陽気だがサッカーにおいては真剣であり色々考え立見の勝利に強く貢献してくれる。
そんな彼が何も考えず向こうのエース的存在であろう想真と仲良く走るだけで終わるとは考え難い、間宮に対して弥一は口を開く。
「厄介そうな匂いは感じましたねー」
八重葉の照皇や龍尾、2人の天才のような匂いと雰囲気。それに近い感じが弥一からすれば想真から感じ取れた。
勝気ではあるが慎重でありボールを中々取らせてもらえなかった、自分より身長はあるが周囲の部員と比べれば彼も小柄で細身。
似たような立場の想真を思い浮かべ、弥一の口元は自然と笑みが出ていた。
合宿初日という事で軽めの練習で一日を終え、練習が終わる頃には千葉の空は青空から夕焼けへと姿を変えており立見と最神はそれぞれ夕食を迎える。
宿にある食堂でビュッフェ形式によるものであり栄養補給出来てかつ美味しく食べられるメニューが用意されていた。
運動後すぐに補給する事で筋肉中のグリコーゲンの回復が早まる、それを元に炭水化物やタンパク質を含む物が主にあり練習で腹を空かせた部員達はそれぞれ自由に取っていった。
交流も兼ねてそれぞれの席は決めておらずバラバラであり、他校同士で食事しながら会話を楽しむ姿が見られる。
栄養を考えバランス良く取る物が居れば多めに盛っていき量を多く食べる者も居る、その中で弥一はご飯に味噌汁に豚の生姜焼きと定食を作っていき一つのデザートを見つけると目を輝かせた。
「美味しそうなプリンだー♪」
デザートコーナーにあるプリン、そこにある一つを弥一はトレーへと乗せて運び席へと着いた。
「少食やないか、絶対足りんやろ」
弥一が席に着いた右隣には一足先に想真が座っている、弥一の方は結構白米が多めに盛られているが想真の方はそれ以上の白米が丼で盛られていた。そして偶然にも味噌汁、更に豚の生姜焼きといずれも弥一より量が多い。デザートも同じプリンと量以外丸被りだ。
「足りなかったら別に後でおかわりすれば良いだけだからー」
細い見た目の割に結構食べる想真、それに弥一はマイペースに豚の生姜焼きをお供に白米を食していく。デザートのプリンは味わいたいが最初からそこへ行きたいというのを我慢し、代わりに米と肉が奏でる文句無しの美味しさを味わって生姜焼きの匂いがまた食欲を強く刺激され箸が進む。
「うん、美味っ。大阪には及ばんけどな」
「ああー、美味しい物いっぱいあるよねー。たこ焼きにお好み焼きとか」
「お前それはイメージ古いわ、今時たこ焼きやお好み焼きだけとちゃうぞ大阪は。豚まんとか串カツとかキリ無いぐらいあるで」
想真もこの食事を美味いと感じたが美味さに関しては地元である大阪の方が上と辛口な評価だった、弥一は大阪に対して美味しいグルメがいっぱいの関西を代表する地域という認識でたこ焼きやお好み焼きが有名。
弥一の認識が古いと想真は指摘し、他にこういうグルメが大阪にはあるんだと伝える。
「そういえばそうだ、串カツのソース二度漬け禁止っていうの聞いた事あるねー。衛生上の問題で」
「衛生面だけやない、二度漬けする事でソースに具材や揚げた衣が混ざってソースの味が変わるのを防ぐ為でもあるんや、大阪の串カツ店なら何処にでもある常識やで」
「それは知らなかったー」
気がつけば弥一と想真の会話が多くなっており、彼らは昼間の冒険から自然と交流を深めていた。
「うーん、やっぱり同じ留学した者同士何か通ずるのあって意気投合したのかな?」
「うちの想真だけやなく小さいのも留学してたんか」
「あ、うん。イタリアに3年間居たってさ」
同じ頃に大門は最神の同じGKの1年と席が隣にあり同じポジションという事もあり会話をする、共にトレーに食事を乗せている時に弥一と想真が喋りこんでいるのを発見。
「そこは想真と一緒やなぁ、あいつもスペインのマドリードにおったし」
「……マドリード、ってあの…マドリード?」
「サッカープレーヤーなら誰もが知ってて当然のマドリードで間違い無いで」
さらっと想真の留学先を話す最神の1年GK、それに大門は声を上げそうなぐらい驚いてしまう。
スペインのマドリードは首都でありヨーロッパの美術の名作が充実している事で有名だが、サッカープレーヤーからすれば何よりも有名なのは世界一の栄冠に輝く経験を持つサッカーチームがある事で有名だ。
明らかに物凄い所で想真は3年間のサッカー留学を過ごしていた。
「えらい留学費用もかかるんやけどなぁ、そこは親の力や。あいつの親父さんはプロチームの監督でお袋さんはテレビの中で活躍する大女優、ほんで兄貴は卒業と同時にプロの1部リーグチームにスカウトされてプロ入り、華麗なる一族ってヤツやな」
「うわぁ、まさにドラマや漫画の世界だ…」
自分の環境では絶対に無理だと思った大門、プロサッカークラブの監督である父親と大女優の母による強い後押しが想真の留学を実現させてスペインのマドリードで3年間過ごせた。
その事はこのお喋りな最神の1年GKから教えてもらわなければ知り得なかっただろう。
「あ、プリンに関しては負けたかもしれん。これホンマ美味いやつやったわ」
「美味しいー♪」
当の本人は弥一と共に食後の千葉自慢の美味いプリンを味わっていた。
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