第72話 夏の東京予選準決勝、立見VS真島


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。











『6月、この梅雨の季節ですがサッカーの神が雨を遠ざけてくれたのか?雲ひとつ無い晴天に恵まれました高校サッカー、東京インターハイ東京予選の準決勝!立見高校と真島高校、勢いある新鋭の立見か東京を代表する強豪校の真島か?両選手がフィールドへと現れます!』



 予選の準決勝まで来るとTVカメラがあり、中継されて実況が付いたり更にライブ配信もされる。


 支部予選や1次トーナメントの時とは大違いで東京代表の1チームが決まる一戦は注目が桁違いだ。



 ダークブルーのユニフォームを着た立見、GKは紫。


 緑をベースに黒いストライプ入りのユニフォームを着た真島、GKは黄色。




 立見高等学校  フォーメーション 4-5-1


          豪山

           9

          成海

 鈴木       10       岡本

  8                7

      影山     川田

      14      16

 後藤   神明寺    間宮   田村

 15     24     3     2

         大門 

          22



 真島高等学校 フォーメーション 3-5-2


     佐藤     鳥羽

      9      10

 谷口     峰山     山本

  7      11      8

     戸田    黒川

      6     5

   早坂  田之上  矢野

    3    4    2

       田山

        1  



『大事な代表の座がかかる試合、両校ほぼベストメンバーで固めて来ましたね』


『そうですね、真島の司令塔キャプテンの峰山君とエースの鳥羽君を中心とした攻撃陣がどのタイミングで立見の守備を崩し得点するのか。立見はどのタイミングでスーパーサブの歳児君を投入してくるのか、今回の鍵を握りそうなのはその2つですね』




 両校のキャプテンが審判団と共にセンターサークルへ立つとコイントスを行い、先攻は真島。成海と峰山は互いに握手を交わしてから互いのフィールドへと分かれた。




「最初から仕掛けるぞ、立見の歳児が前半いない今スピードで怖いのは右サイドの田村だけだ。そこに気をつければカウンターを過剰に恐れる必要は無い」


「んじゃ、速攻で点取って立見さんに泡吹いてもらうってプランかな?」


「お前の言い方は問題あるけどそうだな」


 真島は立見に対して研究し、向こうの攻めはカウンターを主体にしていると峰山達真島イレブンは分かっている。


 最もスピードある立見の優也がまだいない今カウンターで脅威となるのは右サイドバックの田村。その1点を警戒するよう峰山は改めて円陣で伝えた。


 横から鳥羽の言葉が入り、軽く流せば峰山は最後に「真島勝つぞ!」と気合の掛け声を入れて他の者もそれに応える。






「立見GO!!」


「「イエー!!」



 そして立見の方も円陣を組んで何時もの儀式を終えてそれぞれがフィールドへ散る。


 センターサークルには鳥羽と佐藤、真島2トップによるボールからキックオフだ。




 開始時間は午前10時、その時間に時計の針が指した瞬間に審判の開始の笛が鳴り響く。



 ピィーーーー




 鳥羽が軽く蹴り出し、佐藤が後ろへと戻す。ついにインターハイ東京予選の準決勝が開始された。



 真島はまずはゆっくりとボールを回していくのか、と思われたが峰山がボールを持った途端にその予想は裏切られる。



 峰山がボールを持ったと同時に真島の中盤両サイドハーフ二人が駆け上がりFW二人も走り、開始早々真島は仕掛けて行く。



『おっと真島、いきなりの奇襲か!?』



 守備的MFの二人と峰山が素早く短く回し立見のプレスを躱すと峰山が右サイドの山本へと横パス。これが通りそのままサイドをドリブルで駆け上がろうとしている。


 これに立見DFの後藤が止めに向かうと山本は此処で切り返し、サイドを縦に突破すると見せかけて中央へ大胆に切れ込んで行った。


 しかし此処で影山が詰めていき中央への侵入を許さない。



 これ以上は行けないと判断したか山本は上がって来ている峰山へと戻す。



 このボールに峰山はダイレクトで右足で蹴るとボールは高く浮いてエリア内の佐藤へと向かう。


 佐藤には間宮が向かい互いにジャンプして競り合うと間宮の頭が勝ち、ヘディングでクリアする。



 タッチラインへ逃れて峰山ボールのスローイン。エリアからは離れておりロングスローは余程の遠投力に自信が無ければ届かせるのは難しい位置だ。


『ゴール前チャンスでしたが此処は立見の間宮がナイスクリア!』


『その前の影山君の守備良いですよ、よく山本君のフェイントを読んでましたね』



 真島のスローイン、ボールを持った谷口が佐藤へと近くで投げ渡すと佐藤はすぐ谷口へ折り返し走り、谷口は峰山へと戻す。



「(此処はペース握っておきたいからな、まずは!)」


 パスかドリブル、その選択肢はこの時峰山には無く大胆に35m程ある距離から右足のロングシュートで狙いに行った。



 しかしこれは右へと外れ、大門も止めに向かいつつ落ち着いてこのシュートを見送る。




『大胆にもあの位置から峰山撃った!しかしこれは枠を捉えきれず立見のゴールキック、この試合ファーストシュートは真島の峰山から始まりました』


『あの距離から良いシュート撃ちますね峰山君、これは枠行ってたら面白い事になってたかもしれないです』




「あのまま俺にくれても良かったんじゃね?」


「まずは確実にシュートで終わりたかったんだ、下手に長いパスを出したら例のチビにカットされる恐れがある」


 鳥羽が峰山へと声をかけ、ああした方が良かったとやんわり意見するが峰山は弥一の存在を警戒している様子。


 鳥羽に渡すのも悪くなかったが弥一のインターセプトがちらつきパスをそちらへ出す事を峰山はあの場面では避けた。



 そして峰山が走って戻り他のイレブンも走る中、鳥羽は歩いている。



 その歩く鳥羽に後ろから声をかける者が居た。



「最初からガンガン来るんだねー」



 弥一が鳥羽に話しかけると鳥羽は振り返った。


「当たり前だろ、そちら自慢のスーパーサブが来る前にリード奪っておきたいからな」


 優也がいない時間帯がチャンスだと鳥羽は、真島の面々は思っているようで前半攻撃的に行ってるようだ。



 そして鳥羽は狙っている。自らゴールを奪いフィールドに華麗な華を咲かせようと。



 大門のゴールキックは軽く弥一へとボールを蹴り渡す。



 その時佐藤が弥一のボールを奪おうと向かうが鳥羽は向かう気配が無い。



 佐藤が来る前に弥一は川田へとパス。



 スマホで試合を見ていて鳥羽のプレーを見ていて分かった事がある。



 攻撃は一級品の鳥羽だが守備をしない、無駄に走らない。



 彼は攻撃に主に力を注いでいた。それまではスタミナ温存か動く事はほとんど無かったのが前回の北村戦だ。




 現代サッカーではFWにも守備意識が求められ前線からも積極的な守備が求められ、それが主流となっているが鳥羽は明らかにその主流とは違う。


「田村動いて来てるぞー、左気をつけろー」


 その鳥羽は足を止めて前線から自陣を見てコーチングしていた。



 警戒している田村には真島の谷口がしっかりマークしており独走を許さないように務める。



「っ!」


 ボールを持つ成海に峰山がかなり激しくチャージ、この激しい争いに成海はボールをキープしきれず流れるが川田がこれをフォローしボールを取る。



 そしてこのまま豪山へと長い縦パスを蹴った。




 ピィーーーー



「!」



『川田から長身エースFW豪山へのボールでしたが真島DFによるオフサイドトラップ!』


『今のは田之上君ですね、川田君のパスを読んでましたね。これは巧いなぁ』



「ナイスー」

「おう」


 真島DFの田之上とGKの田山が軽いやり取りをしてから田山がボールをセット。



 鳥羽と峰山を中心とした攻撃陣が目立つが真島のDF陣も高レベルの選手が揃っている、攻めだけでなく守りも硬い。



 ベンチでは京子が守りについて改めて調べていた。


「DFの田之江とGKの田山は去年峰山と鳥羽と共に東京代表を勝ち取って全国を経験してる、今大会PKで1失点はしてるけど彼らの守備も厄介…」


「最初鳥羽だけのワンマンチームかと思ってました…」


「それで勝てる程激戦の東京予選は甘くないから」


 真島は最初の印象では鳥羽が中心のワンマンチーム、摩央はそう思っていたが鳥羽だけのチームではない。そこまで真島は甘い構成で出来てはいないと前回の北村、そして今回の試合でそれを知らされている。





「(ふうん、そう来るなら…本気でやらせてもらおっと)」


 これから来るであろう真島の攻め、そして鳥羽。それに対して弥一は鳥羽を静かに見据える。



 東京No1ストライカーという獲物を見るかのように…。

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