第17話 やり直し
すぐにクライブは城に部屋を用意された。部屋には、王と王妃。それから二人の息子が硬い表情で立っている。
「立派な部屋ですね……本当に宜しいのですか?」
「もちろんだ。ここならリーリアの部屋と隠し通路で繋がっているからな。一目を気にせず会えるだろう。身分を用意するまでは、申し訳ないがここにいてくれ」
「兄上、何度聞いても納得できません。時を戻る魔法なんて、あるわけがない」
「あるんだよ。いい加減信じてくれ」
「しかし……」
カシムとクリストファーの喧嘩を止めたのは、父である国王だった。
「クリストファー、カシムやリーリアの言葉が信じられないか?」
「い、いえ……そんなことはありません。兄上も、リーリアも信じられます。だけど……」
「クリストファーは、第二王子だ。それは理解しているな?」
「はい。もちろんです父上」
「クリストファーが最優先しなければいけないのは、なんだ?」
「国民です」
「では、私が暗愚となり国民の安全が脅かされそうになっていると仮定する。クリストファーはどうする」
「父上を糾弾します」
「では、リーリアが国民を傷つけようとしているとしたら?」
「リーリアはそんな事しません! ありえません! 民がリーリアを貶めようとしているに違いありません! 誰ですかそんな大嘘を父上に進言したのは!」
「カシムの勘は当たっていたな。クリストファー、わしの目を見ろ」
国王がクリストファーに自白魔法をかけると、クリストファーの目が赤く染まる。
国王はすぐに自白魔法を解除した。
「本当に、使用が分かるんだな……!」
カシムの目の前には、魔法を使う王の姿が映像で映し出されていた。
「ふむ。このように映し出されるのか。大勢の人の前で映像が映ったら、大変なことになるな。いずれこの魔法を消し去りたいが、他国が持っているならば王族だけは秘密裏に習得すべきかもしれぬ」
「そうですね。そうしましょう」
「魔法の記録が王家から失われている件についても、調査するべきだな」
「……あ、あの。父上。ここはどこですか? それに、この男の子は一体……」
目の色が元に戻ったクリストファーが、戸惑いながら質問する。クライブに向けていた敵意はなくなっていた。
「クリストファー、その質問に答える前にワシの質問に答えよ。もしもリーリアが国民を危険に晒していたとしたら、クリストファーはどうする」
「リーリアがそのような事をするとは信じられませんが、まずは調査をします。もし、リーリアに非があれば可愛い妹でも容赦しません。我々が最優先するのは、民なのですから」
「やはりクリストファーは魅了にかかっていたようだな」
「……魅了ですか?」
「数分前に同じ質問をした。クリストファーは目を吊り上げて、リーリアは悪くない。悪いのは民だと騒いでおったぞ」
「……そんな……いくらリーリアが可愛い妹でも……調べもせず民を悪者にするなんて……」
「それが魅了魔法の恐ろしさだ。彼はクライヴ・ L ・コーエン。コーエン侯爵の次男だ」
「コーエン侯爵のご子息は、トマスだけではなかったのですか?」
「よく勉強しておるな。彼の生まれは届けられていない。彼は魔力がないのだ。故に、隠されておった」
「魔力が……ない……」
「彼はリーリアの為に自分の魔力を全て使用した。今後魔法が使えなくなると分かっていながら、時を戻したんだ」
「時を戻す? 以前兄上が教えて下さった、失われた魔法ですか?」
「ああ、そうだ。さっき判明したのだが、リーリアは人を盲目的に従わせる魅了魔法を生まれつき持っていたらしい。さっきまで、クリストファーもかかっていた。魅了魔法は、魔法の訓練を続ければ自然と失われるらしい。他にも、自白魔法が使えれば効かないそうだ。過去のリーリアはほとんど修行をしなかったし、私は自白魔法が使えなかったのだろう。今より強い魅了がかかっていたと推察される。リーリアのわがままを全て鵜呑みにして、我々は民を苦しめていたそうだ」
「そんな……」
「国は荒れ、侵略された。我々は殺され、リーリアは……敵と結婚させられて幽閉された。リーリアを救ってくれたのがクライブだ」
「だから、今ここにリーリアがいないのですね」
「ああ。リーリアをこれ以上悩ませたくない。クリストファーが魅了にかかっていたと知れば、あの子はますます悩むだろう。今まで必死で魔力を鍛えていたのに、更に過酷な訓練をしかねない。あの子は私より魔力がある。産まれてからずっと、魔力を高める訓練をし続けていたそうだ」
「兄上より? まさか、リーリアは魔力酔いの訓練を?」
「ああ。ワシがリーリアに自白魔法をかければ、確実に魅力がなくなる。周りの様子も観察し、魅了がないと判断できるまで茶会はできぬ」
魅了魔法の説明や、リーリア達の過去を聞いたクリストファーは疑問を口にした。
「リーリアはかなりの魔力を有しているのでしょう? 何故、魅了魔法が消えなかったのでしょうか?」
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