第33話
僕には予言の才能があるのかもしれない。その後は、言ったとおりのことが起こったのだ。
覚悟を決めて腕に力を込め、僕の手を離れたモリはヒュウと飛んで行き、だが狙いが悪いせいで鯨の尾を外れ、とんでもない方向へ。
その先にいるのはコバルトだ。
「あっ」
コバルトも横目で僕を観察していたらしい。
突然、ブンと尾を横に動かしたかと思うと、モリを弾き飛ばすことができた。
コバルトの肌には傷一つついてはいない。くるくると回りながら、モリは水に落ちた。
「ロープを手繰り寄せなさい。もう一度投げるのです」
リリーの声は落ち着いているが、僕はもう自信がなかった。
「でも…」
「投げられないのなら、並走して、体を直接ぶつけるしかありませんよ。どちらがお好み?」
「どっちもヤダ」
「軍隊にヤダはありません」
「コバルトを見てよ。ものすごく怒って、目から毒液でも噴き出しそうな顔してる」
「まさにバシリスクですね。さあ、もう一回投げなさい。私の体力も無限に続くわけではないのですから」
結論から言えば、2回目の攻撃で、僕は鯨の尾の根元にモリを突き刺すことに成功した。
投げるタイミングに合わせて、リリーが水面から高くジャンプしてくれたおかげも、もちろん大きい。
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