第26話
「それで、悪いニュースが2つだって?」
本人は気づいていないが、コバルトは深みのある実にいい声をしている。僕は耳にするだけで気持ちがよかった。
「どっちのニュースから聞きたい?」
「どちらでも」
「じゃあ日本の話をしよう。日本軍が飛ばしている戦闘機のことは知ってるよね?」
「ジークのことか?」
「そうそれ。正式名称が分からなくて、アメリカ軍が適当につけた名前だけどね。こいつの性能が抜きんでていて、海軍も空軍も苦労してる」
「格闘戦が特にうまいと聞いたが」
「そうらしい。弱点を探るための研究をしたいのだけど、とにかく1機でも実物が手に入らないことには手の付けようがない。だから『遺棄された機体を海上で発見した場合には傷をつけず、万難を排して持ち帰れ』という命令が海軍全体に出た」
「そうかい?」
どうもまだコバルトは、話の行き先が読めていないようだ。僕が表情をのぞき込むと、リンゴほどもある青い目玉で、じろりと見つめ返してきた。
「それでね、今から数時間前、海面に浮いている1機が発見された。パイロットの姿はなく、不時着したらしい」
「ならば、それを拾い上げればよいではないか」
「だけど沈んでしまった。場所はここから200キロ南方。水深は1000メートル内外と推定される」
ゆっくりとだが前進を続けていたコバルトの尾が、ピタリと停止してしまった。
「まさかお前、私にそれを取りに行けというのではあるまいな。私は落し物係ではないぞ」
「そういう命令が出ちゃったんだよ。さっき中隊長から言われた。今日のパトロールは中止だよ」
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