第6話
敵潜水艦がついに速度を落としたのが、ほぼ半日後のこと。
僕はつい居眠りをしていたが、
「おいこら、仕事中に寝る軍人があるか!」
とコバルトが優しく揺り起こしてくれたのだ。
おかげでヘルメットの中であちこちぶつけ、僕の額はズキズキしている。
でも耳を澄ませると、確かにモーター音が小さくなり、潜水艦は浮上する気配を見せているじゃないか。
距離をとって待ち構えると、潜水艦がゆっくりと浮上を始めたので、僕がどれだけドキドキしたことか。
「ここはどこ? 港じゃないよね?」
いかにも呆れた顔で、コバルトは口から息をゴボッと大きく吹き出した。
「寝ぼけ頭を振って、よく見ろ。港ではないが、まわり中が船だらけではないか」
「ちょっとごめんよ」
「やれやれ、お前はまた私の柔肌にクツの跡をつけるのか」
僕はコバルトの肩の上に立ち上がって、波の上にそっと頭を出してみたんだ。
波の穏やかな日で、日はとっくに暮れ、星の多い晴れた夜空が頭上に広がっている。
だが静かな夜ではない。
この潜水艦だけでなく、周囲はいくつものエンジン音で満ち、海上は時ならぬ混雑を見せていたんだ。
もう一度見回し、意外さに僕は口をあんぐりと開けた。
大洋の中央にサンゴ礁があり、これを目印に集合しているのは間違いない。
でも月光に照らされた鉄のシルエットが遠く近く、いくつも波の上に影を落としている。
なんのことはない。
僕は巨大な敵艦隊の真ん中にいた。
日本の連合艦隊だ。
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