双子、大変よくできま死た!!
ずんずんと手を握り締めて行き先も決めず歩く片割れに向かい、カナエは一言だけ言った。
「サトル、ねぇ手が痛いよ。握っているのはいいけど、力は緩めてくれない?」
サトルは振り向かなかったものの、手の力を緩めてくれた。
「ぼくはできるぼくはできるぼくはできるぼくは」
「うん、サトルならできるよ」
意味不明、意図不明なサトルの態度も七億不思議の影響であることはカナエにもよくわかっていた。同じ七億不思議に襲われたのであろう両親の言動を鑑みるに、たぶん「自分が一番やりたいこと」を実行させるような行動をとらせるのだろう。周りのよその大人と比較して子供っぽいところがあるカナエの両親ではあるが、家の中でもないのにあそこまで本性を晒しまくるなんて、正気のままではできない。……できなく、あってほしい。
──では、サトルの「一番やりたいこと」とはなんだろう。
サトルのとった行動は、『カナエの手を取り学園内を歩き回る』だ。どうやら学園内で七億不思議が発生しているようで、行き先も決めず保護者もいない、真夜中からずっと歩き回っている双子をとがめる余裕のある大人なんていない様子だ。
夜通し歩き回って、学園内を十周くらいしても、誰も双子に声をかけない。いや、カナエを引っ張っているサトルが子供に声をかけるような大人から隠れながら歩いているのかもしれない。
「サトル、疲れない?」
声をかけて、返事しようとしたのだろうサトルは口を小さく開いた。
「ぼくはで……!」
先ほどのような、自己暗示のような七億不思議に呪われた呪詛のような言葉が漏れ出た様子にびっくりして口を手で覆ってからサトルは首を横に振った。まだ言葉はしゃべれない様子だった。
「……叔父さん、大丈夫かな」
自由にしゃべれない片割れを見て、カナエは学園にいるだろう親戚について思い出したが、叔父さんは大人であることだし、動けないということは無理なことをしてケガをしないということなので逆に安全だろう。
「サトル、アタシ疲れたからさ。ちょっと学園の空き教室で休もうよ」
自分が疲れたから、と言う形で自分はサトルを補える。
周りには何を言われても、自分はサトルの
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