大変!!よくできま死た自宅編プロローグ
とことことことこ、と暗い夜道を歩く子供がいる。
まるで日中の学校の廊下を歩いているような気軽さで、明かりも持たずに歩く子供がいる。
誰にも気にも留められないような子供なのだろう。ならば自分が取って食ったってかまうまい。そう判断したソレが動いて、子供に近づき──
「じぶん家の子に何してくれるんですかァああああああああ!!!」
「ぼくの相罠にどうするつもりなのさぁあああああああああああああ!!!」
よく似た親子がソレ──七億不思議に突進し、手に持ったヒール靴でどつき投げ縄で振り回す。
どつかれ振り回され動きが止まった七億不思議を丸い腕が抱き上げて、丁重に容器に入れて──
「はいはい、それじゃあ今回はここまで。次はもっと幸せに、生まれてくるのを祈るスよ──」
そして容器、樽のふたを閉めた父親が妻に投げる。
「ひゃっはぁあああああああああ! 七億不思議ドッ祓われるべし!!」
受け取った母親が、ヒール靴で樽を蹴り飛ばすと空中でふたが取れ、中に入っていた七億不思議が祓われる。残滓があふれて無音の花火のように消えていく。
無傷で地面に落ちた樽を父親が拾い上げた頃には、よく似た母子は気配を消して、夜闇の中に消えている。父親は遠くに立っている子供──娘の無事を確認してから、家族の後を追い夜闇に消える。
名和屋一家のドッ祓いは、一風変わった様子で知られていた。
家族の中で唯一霊能力を持たない娘を一人で立たせ、寄って来た七億不思議を隠れた家族がリンチにかける。公的には娘、名和屋カナエは双子の兄弟である名和屋サトルの相罠であると登録されているが、そのサトルが家族──両親である名和屋レイと一団になってその指示に従い動くので、カナエは名和屋一家全員の相罠である様相になっていた。
遭禍学園では、非常勤講師と一般生徒が相罠関係を結ぶことは禁忌とされている。
それでも名和屋一家はドッ祓いの形を変えない。
母親である名和屋レイは、「えー、子供を親がサポートするのも普通のことでしょう? 子供が親と一緒にいるのも当然のことでしょう??」と煙に巻く。
父親である名和屋レイは、「は? つまりあなたはジブンたちがカナエを危険に曝しているッて言うつもりスか!?」と激昂する。
カナエはなにもコメントしない。唯一、サトルだけは自分の家族の話をされることを嫌がった。「母さんや父さんがカナエを利用してるって……わかっているけど、ぼくにはどうすればいいのかわかんない」
親が方針を変えない以上、子供にはその決定を変える力がない。だから続いて、変わらなかった名和屋家のドッ祓い方法。
その夜の事件も、いつもと変わらないはずだった。
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