うきうきカレーライス

翌日はお祭りみたいだった。

みんなスキルを得て、ウキウキしていたのが爆発したみたいだ。

儀式のために来ていた神官ももう帰路に着いているし、遠慮なく騒げる。


今日の弁当は、カレーライス。


ミラノさんのぶんはしっかり渡してあり、必要な材料もテッサに聞いて、渡しておいた。


テッサのスキル【鑑定】がなければ、どれを選んだら良いのかもわからない。だけれど料理は料理長の試行錯誤がなければ、再現は難しいんだとテッサは言っていた。


今夜は昨日渡した天丼の成果を見せてくれるそうだ。


今から楽しみでならない。


外でカレーライスを食べていたからだろう、珍しげにガイが近寄ってきた。


広場で一緒に遊んでいたルギアも寄ってきて、くんくんとにおいを嗅ぐ。


「……美味しそうな、匂いがする」


「俺んちの食堂にもない味だ。味見させてくれよ」


「ガイは店を手伝わなくていいの? これはカレーライス。銅貨5枚と交換で渡せるよ」


ガイの藍色の髪の隙間から好奇心旺盛そうな黄色の目が輝いた。


「母ちゃんに貰ってくるっ」


「あたし、お小遣い貰ったから払えるよ。はい、銅貨5枚」


ルギアに手渡された銅貨5枚を使ってカレーライスを購入する。


手渡すと、嬉しそうに紫色の瞳を細めた。


ガイがきて、おじさんとおばさんのぶんも買って欲しいといわれたことは驚いた。

カレーライス自体はちょっと辛いけど美味しかったし、食堂で出すようになったらいいな、と思った。

驚きの顔でカレーライスを食べるおじさんとおばさんにカレーの美味しさをプッシュしておいた。


ルギアもちょっと辛い、とカッスィーと同意見だったけれど、中辛までなら美味しく食べられる。


そんなわけで、村長宅に直談判に来た食堂夫婦は、ガイも一緒に料理長によるスペシャル天丼を賞味し、感嘆の声を上げた。


「うまーい」


「いやー、カッスィー君のスキルは素晴らしいですね」


「聞いたことないから教えようがないけど、なんとかなってるみたいでよかったわ」


「しかしこの天丼も素晴らしい!この米という穀物を、毎月一定量買い付けさせて貰えませんか?」


「いいわね、あとカレーの材料も是非売って欲しいのですが、良いですか?」


大人たちはヒートアップしてすごい熱気だ。


「ミラノさん、カレーライスも作れるようになったの?」


「ぼっちゃんがカレーのルウを出してくだされば簡単ですよ」


「へえー!じゃあ明日の夜はカレーライスだね!でも、もうちょっと甘いほうが好きだな」


「お任せください、甘口をお出ししますよ」


「やったぁ!」


無邪気に僕が喜んでいると、母様が話に入ってきた。


「ミラノ、私は辛いものを食べてみたいわ」


「かしこまりました。辛口をお出しします」


「私も辛口をくれ。それでニネさんたちも明日食べにきますかな?」


「ぜひ、お願いします」


ミラノさんは自信たっぷりだ。


今日の天丼のえびも美味しかったけどいかが好きだなって言ったら、海鮮カレーにしましょうか、といってもらえた。


シーフードミックスと、カレールゥは5種類くらいと、お米。福神漬けも30袋くらい。


野菜はあるそうだ。


今日はさっそく食堂のニネさん夫婦がお米の炊き方を覚えて、お米を買っていった。金貨で取引をしたのは初めてだったから緊張しちゃった。



翌日の朝食はベーコンエッグとパン、ミネストローネ、サラダだった。


朝食後、ミラノさんに親子丼を出した。


「ほぉ、鶏肉と玉ねぎを甘辛く煮込んで、卵で仕上げるんですね。これもうまい弁当ですね。良ければ昼食にお出ししますよ?」


「お願いします」


と、お願いしますがハモった。テッサだった。


「今日から鑑定師見習いとして雇って貰った。朝食後からこっちに来るから、わかんない事あったら聞いてくれよ」


「とりあえずお弁当は一日に一個ずつ出して、再現して貰おうと思ってるんだけど、その時に材料や作り方を助言してくれる?」


「勿論いいぜ。親子丼の調味料は、醤油、みりん、酒、砂糖、だしの素だな」


「わかった。あと鶏肉と玉ねぎだね。よし、買えた。ミラノさん、ここに並べておきますね」


僕はテッサの言う調味料と、鶏肉と玉ねぎを購入し、控室の机の上に並べた。


「ありがとうございやす、坊ちゃん。昼食にお出しできますが、テッサは食べていくか?」


「食べていく!」


「わかった。じゃあ二人分用意するからな」


テッサは両腕を振り上げて喜んでいる。新しいもの好きなのかな?


でも、昨日のオムライスはすっごく美味しかった。一緒に出された唐揚げっていう揚げ物も美味しかったね。

外側がカリッとしてて、中は熱々ジューシーな肉汁がいっぱい。そこにトロトロの卵のかかったチキンライスを口に入れれば、幸せの味がした。

スキル【ネットスーパー】を見る限り、米料理が多そうだった。これからお昼はお米料理の再現だね。それでいい? ってテッサに聞いたら、勿論だよ。最高! ってすごい喜びようなの。

ちなみにお試しのご飯だから、ご飯代はタダ。もしかしたらマズイ料理かもしれないからね。

タダ飯が嬉しいのかと思ったら、そうではなくお金を払ってでも食べたいらしい。オムライスでお米料理に目覚めてしまったんだね。

テッサは冷静な子だと思っていたけれど、好きなことだと熱くなるんだね。


お昼の時間になって、厨房の控え室の席に着く。


「やったー、親子丼だ!」


「どうしたのテッサ、やっと会えたみたいになってるよ?」


「ゴホン。えっと、美味しそうな米料理だと思ってな」


「ほんとだね。出汁? っていうのかな。いい匂いがするね」


僕とテッサの前に置かれた親子丼を見ながら、口々に感想を言う。


「いい匂いすぎて腹減った。食おうぜ!」


「そうだね。食べよう!」


二人でスプーンを手に取り、まず一口。


甘めの出汁の味が舌の上を通り抜け、かつお節の香りが鼻に抜けていく。


甘じょっぱくて、美味しい。ご飯の上になんで乗ってるんだろうと思っていたけど、次々に口に運びやすい料理なんだなと理解した。


テッサがしているようにかっこんで食べてしまい、あっという間に完食した。


「あー、うまかった」


「美味しかったねぇ」


僕とテッサは大満足なご飯を食べて、これからの毎日に期待を胸に躍らせるのであった。



勉強熱心なミラノさんから、


「坊ちゃん、もしかして米料理だけじゃなく、未知のデザートがあるんじゃありやせんか」


と聞かれて、デザートの再現も頼むことになった。


今日はミラノさん特製のチーズケーキを頂いたよ。


*********************************************


ここまで読んで頂きありがとうございました。


もし面白い! 応援してるよ! と思ったら、

★評価とフォローをお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る