第3話 移動

男に動きがあったのは、18時50分ごろだった。

男が、荷物をもって席を立ち、精算を済ませて出て行こうとしている。

僕も慌てて席を立った。

精算を済ませて、カフェを出ると、男の姿がみえなくなった。

(しまった、見失った。)

僕は慌てた。このまま見失ってしまうと、どこかで爆弾テロが起こってしまう。

焦って、男を探した。


「すいません。ハンチング帽をかぶってツイードのニッカポッカを着た男性を見ませんでしたか?」

近くにいた店員に聞いてみた。

「あ、その方なら今しがたエレベーターに乗られてましたよ。」

「ありがとうございます。」

僕はお礼を言ってエレベータに向かった。

でも、男の姿はもうなく、何階に向かったのか全く分からなかった。

どうしようか?男は何処に行ったんだ?

働け、俺の頭!

そうだ、20時に現場に行くということは、きっとここから移動するはずだ。ということは、駅から電車で移動するんじゃないだろうか?

きっと、1階まで下りたはずだ。

僕は一か八か、1階まで下りてショッピングモールの出口に向かった。


男は、やっぱりショッピングモールから出て駅に向かっていた。

僕は男を見つけてホッとしたが、そこからも大変だった。

ラッシュの時間を迎えた神田駅は、混雑をしていて、男を見失わないように追いかけるので必死だった。男は山手線の上野池袋方面の電車に乗った。男を見失わないように一定の距離を保ちつつ、僕は男の動向を伺っていた。

今朝、図書館に行く前に紫音に言われて交通系の電子マネーをチャージしておいた自分を褒めてやりたくなった。

少し前までなら、電子マネーなんてものはなかったんだから、尾行する側はさぞかし苦労していたんだろうなぁと、どうでもいいことを考えたりしていたら、男は秋葉原で降車した。


秋葉原で降車した男は、今度は駅から出て歩き出した。

僕もその後をつけていく。途中、コンビニに寄って何か雑誌を買っていた。

そういえば、明日はハロウィンだ。だから、あちこちで仮装している人たちがいるんだな。もし、今この場所で爆弾が破裂してしまったら、そう思うととっても怖かったが、きっと僕がこの事件を防いでみせると改めて決意をした。そうだ、僕がこの幸せそうな人たちを守るんだ。


コンビニから出た男は、また歩いて行った。そして、今度は岩本駅に入っていった。

そうか、乗換のために秋葉原で降りたんだ。

僕も男について地下鉄、岩本駅に入った。

男は、都営新宿線に乗った。いったいどこに向かっているというのだ。


男が降りた駅は神保町駅だった。



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