第5話 私の役割

私がここ、シー・マリスタルに入ってから早くも数週間が経ち身体にあった傷も少しずつだが薄く、目立たなくなってきた。今の私に与えられた仕事は彼……いや首領の傍に居ることだった。



「……あの。私は他の人みたいなお仕事しなくていいんですか?」


「ん?あぁ……まだしなくていいよ。」


「まだ?」


「あぁ。彗羽、君が元気になってから他の仕事も頼むよ。それまでは私の傍に居るのが仕事だ」


「分かりました…」


首領のその言葉に私は少し考えたあとこくりと頷き大人しく傍に居ることにした。するとコンコンと軽いノック音が響き「失礼します首領。」と声が続いて聞こえてきた。首領は「入りなさい」とだけ答えれば私は少しだけ離れた位置で待機する事にした。



「失礼します首領。報告書の提出に参りました」


「あぁありがとう。目を通しておくよ」


「では俺はこれで。」


彼が部屋から出ていけば私は小さく息を吐き首領の傍へと近寄った。首領は軽く書類に目を通したあと「彗羽、君も見てみるかい?」と問いかけ私の方に書類を見せてきた。


「……どうも。そういえばあの人とは初めて会いました……誰ですか?」


「ん?あぁさっきの彼は幹部の1人で雫 陸月しずくりつきくんだよ。私と同じである能力を持っている。」


「そうなんですね…覚えました」


私はそう告げて書類へと目を落とした。そこにはこちら側の被害、そして敵対組織であろう相手が壊滅したことが全て記されていた。


「彗羽にも現場に出るようになったらやってもらうよ。それ迄は渡される報告書を見たりしておくこと。」


「分かりました…首領。」


私はそう告げて頷いた。これと同じようなことを私にも出来るのか。その不安を隠しながら私はそっと目を伏せた。

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