第3話 私の名前そして彼の名前

スラム街から連れ出され気づけば私は大きいビルの前に立っていた。


「そんなに身構えなくていい。今日からここが君が暮らす家だ」


にこりと彼は笑みを浮かべながらそう告げてきた。私は軽く頷き彼について行くようにビルの中に入った。



「さて……まずはお風呂と食事だね。あとは怪我の手当か……」


彼はそう呟きながら私の方を見つめた。


「そういえば……君、名前は?」


「……覚えてない。あったと思うけど覚えてない。」


「そうか……なら私が付けよう。」


「……貴方が?」


「そうだな…彗羽すいははどうだろうか」


「彗羽……?それが私の名前……?」


「そう。これからは彗羽と名乗るといい。」


彗羽……彼から貰った名前は私に足りなかった何かをあっさりと埋めてしまった。そうか……私は名前が欲しかったんだ。


「……貴方は?貴方の名前は……何?」


「あぁそうか……名乗っていなかったね。私は蒼斗。四季蒼斗しきあおとだ。」

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