第2話 スラムで出会ったのは


「……寒い……」 ぽつりと私は呟きぎゅっと膝を抱えた。少しでも体の熱を逃がさない為に。


翡翠門市ひすいかどし。そこは表向きはとても栄えている場所だ。でも少し裏道に入ればそこはスラム街に続く道になる。そしてそのスラム街が私が住む、私が生きる場所。両親の顔すら覚えていない。自分の名前だって。



「お腹すいたな……でも探すのも面倒だ……」


クゥっと小さくお腹が鳴くも私はため息を吐いてそっと目を閉じた。


「……ぇ……み……」


……誰かの声が聞こえる。男の人……?


「……君……!起きなさい……!」


「っ……誰……?」


さっきまで聞こえてた声はこの人か……めずらしい。スラム街には似合わない身綺麗な格好だ。


「私かい?そうだな……ある組織の長だ。君をここから出してあげよう。」


「……私を?……貴方について行けば退屈も空腹も寒さも無い?」


「あぁ約束しよう。」 さぁおいでと彼は私の方へと手を差し伸べてきた。私はその手をゆっくり掴み「退屈させたら許さない」とだけ告げて少しふらつきながらも立ち上がった。



これが私と彼の出会いだった。

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