第28話 衝撃、再び

「あのね……」


 言いにくそうに視線を彷徨わせた瑠璃さんは、


「樹那様は」


 心の準備ができたんやろな。


 私の目をじっと見つめた。


 グループを辞めるんか。


 芸能界を引退するんか。


 そったら私のメンタル終わってまう。


「韓国に行くらしいわ」


「……へ?」


 青天の霹靂、ってこういうことを言うんやろか。


 予想外の言葉にフリーズしてまう。


 韓国。


 韓国?


「どういうこと」


「ちーちゃんがデマを流す前からね、この話は水面下で進んでいたらしいの」


「えっ、てことはさぁ韓国でグル組むってこと?」


「正解。このことは社長と一部の上層部しか知らない。メンバーはまだ知らないんじゃないかな」


 頭の中がぐっちゃぐちゃな私を置いて、二人の会話は進んでいく。


「事務所を移籍するってことやんな」


「そうそう。ちょっと迷ってたみたいだけど、今回のことで日本の芸能界に完全に見切りをつけたみたい」


「ほへー。じゃあ、脱退? 卒業? どっちになるん」


「うーん。そこは卒業になるんじゃないかな。多分」


「なんで?」


「今の事務所、実質主導権を握ってるのはちーちゃんの彼氏なわけ。でも、世間に二人の関係がバレたら失脚するでしょ。そしたら権力は社長に戻る。あの人は割とまともだからね。大切に育ててきた樹那様だもの。脱退、なんて形にしないと思う」


「なるへそ」


 卒業。


 まだまだ先の話だと思ってた。


 しかも、水面下で話が進んどったなんて。


 衝撃的すぎる。


 もう二度と会われへんのかな。


「真優っちはどうすんの」


「へ?」


 急に話を振られた。


 ショックで頭大混乱中やっちゅうねん。


「韓国行くん?」


「……あぁ、その手があったか」


「まったくもう」


 苦笑されてもた。


 しゃーないやろ。


 いきなりの話過ぎて思考が追いつかんかってん。


 しかし、や。


 ナイス七奈。


「韓国に移住したら、これまで通り樹那様に会えるな」


「うん。日本から応援するよりも、そっちの方がええと思うで」


「私もそう思うよ。探偵業があるからこっちに残るしかない私と違って、移住してもできる仕事をしてるんだから」


 二人に背中を押されてしもうた。


 こりゃあ移住するっきゃないな。


 え、韓国語は話せるのかって?


 微妙やな。


 大学で一応勉強はしたけどそれっきりやし。


 まぁなんとかなるやろ。


 樹那様も韓国語の勉強を頑張っとるはずやし、私も頑張らなアカン。


 ガチ恋信者なめんなよ。


 彼女がどこに行こうと、万難を排してついて行く。


 それが、それこそが樹那様信者や!

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