第29話 衝撃、三度

「よしっ、話すべきことは話したよ! なんか質問ある?」


 パンっ、と手を叩いた瑠璃さんは表情を和らげ尋ねてきた。


「ないで」


「ないっす。ホンマにここまで調べてくれてありがとう」


「いえいえ。私が知りたかっただけだから」


 そんな謙遜せんでも。


 と思うけど、言わんとく。


 行動の原動力は、樹那様を陥れた犯人を知りたいっていう気持ちやろうし。


 彼女の言う通り「知りたかった」から。


 嘘言うてないんやもん。


 ツッコミ入れるとこちゃうやろ?


「んじゃぁ、早速動くね」


「頼んます」


 マスゴミへの情報提供。


 きっと瑠璃さんならそっちの伝手もあるんやろなあ。


 何回でも言うで。


 ホンマ、この探偵さんは凄い。


「これからまた波乱が巻き起こるんやろうけど、樹那ちゃんに笑顔が戻ったらええね」


「うん……ありがとうな、七奈。アンタがおらんかったら、私はなんもできんままやった」


「おうよ」


「私からもありがとう。ちょくちょく手伝ってくれて」


「えへへ」


 マジか。


 アンタ社畜やし関西在住やのに、情報収集手伝っとったんかいな。


「絵梨たんの悲しそうな姿は見てられへんかったからさ。それだけよ」


 照れ隠しなんバレバレやで。


 耳赤いし。


 ありがたや、ありがたや。


 こんな友人がおって神様に感謝やわ。


「なあ、二人とも」


「ん?」


「なに」


 七奈は微笑みながら、


「樹那ちゃんと笑顔でお別れしような。今までRAINbowの年長組として、絵梨たんとみんなを引っ張ってくれてありがとう、って気持ちを込めてこれから彼女を見守るわ。あ、真優っちは韓国行くからお別れちゃうね」


「おん」


 アンタの優しさに胸が温かくなったわ。


「ではでは、今日はわざわざ来てくれてありがとうね」


「あっ、はい」


 話は終わった。


 これから瑠璃さんはもう一仕事ある。


 長居したらアカンね。


 立ち上がって私らは玄関へと向かった。


「あっ」


 靴を履きながら、一つ聞き忘れたことを思い出した。


「どうしたの?」


 不思議そうに首を傾けた瑠璃さんに問う。


「因みになんすけど、事務所のお偉いさんって誰なんすか」


「あぁ。役員をしてる社長の弟だよ」


「「……」」


 七奈も私も黙ってしもうた。


 多分一緒の気持ちやと思う。


 最後に衝撃的なこと聞いてしもたわ!


 もうキャパオーバーやでっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しの言葉だけを信じろ! 佐久間清美 @kiyomi_sakuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画