第24話 鍵垢ちゃうんかい

「なんじゃこれ!」


「うーわ、最悪や」


 瑠璃さんのスマホを覗き込むと、表示されていたのは『CHI-A』という名前のアカウント。


 書かれていたのは、樹那様へのアンチコメ。


 どんだけスクロールしても似たような内容ばっかり。


「『辞めろ』『キモい』『消えろ』……低レベルやけど、ご丁寧にハッシュタグつけて樹那様の目にとまるようにしてんな」


 七奈がため息をつきながら言った。


「せやな。それに、毎日毎日投稿しとる。ある種熱狂的やな」


 その熱心さだけは褒めてやりたいわ。


 てか、書いてる暇あったらレッスンに励めよ。


「二人ともよく見て」


「「ん?」」


 瑠璃さんが指さした箇所を見ると、


「あ、鍵垢ちゃうやん」


「そう。ホント、悪質よね」


 タグづけしとる時点で気づけって話よな。


 しゃーないやろ。


 内容に意識が向いとったんやから。


 にしても。


 画面を見続ける二人に視線を移しながら考える。


 こんな凄腕の探偵さんを紹介してくれた七奈も凄いけど、瑠璃さんヤバイな。


 デマを流した犯人だけやのうて、ちーちゃんに彼氏がおること。


 事務所のお偉いさんと付き合っとること。


 相手は本気、本人はパパ活やと思っとること。


 いくら芸能界に伝手がある言うたってさぁ。


 凄い、の二文字じゃ言い表せへん。


 自分に語彙力ないのが情けないわ。


 てかさ、でっかい疑問が浮かんできた。


「瑠璃さん」


「なぁに?」


 首を傾げる姿は、ホンマに幼……ちゃうちゃう。


 今は置いといて。


「こんなに沢山の情報、どないして集めたん」


「うーん」


 ちょっと眉間に皺を寄せた。


「あ、もしかして企業秘密?」


「もしかせんでもそうやろ」


 おっと、七奈から冷静なツッコミ。


 そりゃそうよなあ。


 教えてもろうたところで私らは活かせへんし。


 好奇心を満たしたいだけやし。


「あの、やっぱ――」


「普通だったら秘密なんだけどね」


 苦笑しながら、


「二人は同志だから特別に教えてあげる」


 瑠璃さんは優しい声音で言ってくれた。

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