第7幕 こんなクズ知らん

第23話 自己保身の塊

 ちょっと頭ん中整理しよ。


 探偵さんはぜーんぶ調べ上げた。


 デマを流したのはちーちゃん。


 彼氏がおるんは樹那様やのーて、ちーちゃん。


 で、彼女のお相手は事務所のお偉いさん。


 あれ。


 もしかして、


「あのぉ瑠璃さん」


「うん?」


 少しく首を傾けた彼女に尋ねる。


「もしかしてやけど、ちーちゃん。自分のスキャンダル発覚を恐れて」


 考えたくないけれども。


 思い至ってしまったからしゃーない。


「樹那様のデマを流したんやないん」


「そう、正解」


 頭を抱える私と、ニッコリ笑って言った瑠璃さん。


 対照的すぎるやろ。


「うーわ。ちーちゃんヤバすぎやろ」


 語彙力どこいったねん、七奈。


 まぁ気持ちはわかる。


 ヤバイとしか言いようがないよな。


「自分を守るために樹那様を差し出した。最低最悪の女だね」


 瑠璃さんの言う通りやわ。


 こんな女が、こんな女のせいで樹那様が苦しんだやなんて。


「許されへん」


 ボソッと呟いたつもりの言葉は、思いのほか力強かった。


 アカンね。


 怒りを抑えられへんわ。


「激しく同意」


 首がもげるんちゃうかっちゅう勢いで縦にブンブン振っとる。


 七奈は樹那様信者やないのに、こんなにも私の愛する人のことを気にかけてくれて、探偵さんを紹介してくれた。


 ホンマ、感謝しかないわ。


「ねぇ二人とも」


「はい」


「なに?」


 笑顔を引っ込め、真剣な表情で瑠璃さんが口を開いた。


「もう一つ報告、というか見せたいものがあるんだけど」


「え?」


「なになに」


 まだなんかあんのか。


 もうお腹いっぱいやで。


「ちーちゃんの裏垢見てみる?」


「「見る!」」


 優秀すぎる探偵さんの提案に、私も七奈も即答やった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る