第6幕 頼りになる童顔探偵

第20話 同士yo

「わぁお」


「えへへ」


 松井さんの部屋に入ると、あらビックリ。


 部屋の中は意外と綺麗やった。


 アパートがオンボロやから、部屋の中もボロボロなんかと思とったわ。


 てか、綺麗というより、


「真優っちの部屋とそっくりやろ」


「それなぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 思わず叫んでしまうほどそっくり。


 壁一面に樹那様のポスター。


「マジで一緒や」


 あっ、一枚だけメンバー全員のんがあった。


 これはもしかして、


「……樹那様単推しですか」


「うん。樹那様以外興味ないし、七奈から貴女のことを聞いていたんだけど、一緒だよ。樹那様信者です」


「マジっすか!」


 初対面の人が苦手ってのは、普通の人な。


 オタクは別や。


 おんなじ樹那様推しなら尚更。


 急に心の距離が縮まった気がするわ!


「マジマジ」


 気がするどころか、どちらからともなく手を取って「同士、同士」と盛り上がる。


 最高かよ。


「もしかして……初対面で失礼なこと言うんですけど、こんなボロボロのアパートに住んどるんって」


「ふふっ、樹那様に貢ぎたいから」


 予想的中。


「インターホンを直さないのも」


「修理にお金をかける余裕があるなら、樹那様に貢ぐわ」


「その気持ちわかります」


 私と一緒やん。


 親近感わきまくりやわ!


「なぁなぁ、盛り上がるんは後にしようや」


「「あっ」」


 二人の世界に入っとった。


 低い声で言われたもんやから、恐る恐る七奈の方を見る。


 はい、笑顔やけど完全に怒ってます。


 目が笑ってないもん。


「すまん」


「ごめん、じゃあ適当に座って」


 私らの部屋よりも激狭なワンルーム。


 とはいえ、ギリギリ三人が座るスペースはある。


 地べたやけど。


 探偵さんの稼ぎがどれぐらいか知らんで。


 少なくはないと思う。


 多分、その稼ぎの大半を樹那様に貢いでるんやろうなぁ。


 なんでわかるかって?


 そりゃ部屋見渡したらわかるわい。


 棚にはギッシリ隙間なく同じCDが並べられとる。


 入りきらなんかったんやろうな。


 部屋の隅に段ボールの山。


 チラッと見たらCDが未開封のまま入っとったわ。


「お待たせ」


 同士ということで遠慮なく部屋を観察しとったら、松井さんはココアを三つ運んできた。


「七奈ごめん、コーヒー置いてないのよ」


「知っとる。苦いの苦手やろ。あ、因みに真優っちもコーヒー苦手やから」


「マジっすか」


「マジっす」


「おー」


 ちょっと嬉しそうや。


 うん、私も嬉しい。


 共通点は多ければ多いほどええやろ。


 知らんけど。


「んじゃあ」


 彼女は私らの真ん前に座り、


「ごちゃごちゃ前置きするのは時間の無駄だし、早速本題に入ろうか」


 真剣な表情で言った。

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