第19話 オンボロアパート
ドンドンドン。
「やっほー、七奈やでぇ」
「ちょいちょいちょい」
「ん?」
事務所から家は近かった。
5分前後ちゃうかな。
二階建てのアパートの二階の角部屋。
割とおんぼろや。
職場に近いからここを選んだんやろか……ちゃう!
「なんでインターホン押さへんねん」
ドア壊れるんちゃうかって心配になる。
そんだけボロボロやねん。
「インターホン壊れてんねん」
「マジかよ」
探偵がこんな家住んでてええんかいな。
依頼者か調査対象者が家に凸してきたら、ドア蹴破られて終わりよ。
「はーいはいはいはい! ちょっと待っててねっ」
割と大きな声がドアの向こうから聞こえた。
「はーい」
「なぁ」
「ん?」
元気よく返事をした七奈に、
「ドア薄ない?」
小声で尋ねた。
「うーん、あの子の声が大きいだけやと思うで」
「絶対ちゃうわ」
即否定してもうた。
不思議そーに首を傾けてはりますが、声の聞こえ方からして絶対に声が大きいだけちゃうぞ。
ガチャ、ギー。
きしむ音と共に、にゅっと小柄な女性が姿を現した。
「お待たせぇ」
「ううん、全然ええし、今日は予定空けてくれてありがとうな」
満面の笑みを浮かべている女性。
滅茶苦茶顔が幼い。
え、ホンマに同年代?
中学生ぐらいに見えんねんけど。
「あ、もしかして『童顔』って思ってます?」
「えっ、あっ」
七奈に向けていた視線をこちらに向け、女性は苦笑しながら言った。
しもた、顔に出とったか。
「大丈夫ですよ。いつものことなんで」
「そうやねぇ」
呑気に相槌を打った七奈の反応からして、多分この人は怒ってないんかな。
「いやでも、すんません」
一応謝っとく。
ホンマに思たことやけど、初対面やし。
私らに協力してもらう人やし。
「で、入ってええ?」
お・ま・え。
マイペースやな!
「うん。いつまでも玄関先で立ち話してられないもんね。どうぞ、どうぞ」
「あっ、はい」
挙動不審になってまうのは許してくれ。
初対面の人マジで苦手やねん。
根本的に、七奈と樹那様以外の人間と接するの苦手やけど。
「そうそう」
七奈が先に部屋に入り、後に続こうとしたところで、探偵さんが私に声をかけてきた。
「私の名前、七奈から聞いてます?」
「……聞いてませんね」
ホンマや。
忘れとった。
「ごめーん」
靴を脱ぎながら謝んなや。
後で文句言うからな。
「何回目よ、もう」
探偵さん再び苦笑。
七奈、初犯ちゃうんかいなーおい。
「まぁいいや」
ええんかい。
苦笑したまま探偵さんは、
「初めまして、『松井
ご丁寧に頭を下げてくれた。
対して私は……言わんとくわ。
初対面の人に対しては挙動不審、で察してや。
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