第17話 来た理由

「私らで黒幕を暴く? どういうこっちゃ」


 意味がわからん。


「私な、愛すべき絵梨たんが苦しんでるのが耐えられへんねん。あと、あの事務所クソやろ。今後また同じようなことがあったら、絶対樹那ちゃんとおんなじようなことになる」


「あーせやろな。歴史は繰り返す、っちゅうもんな」


 笑っとるけど、目の奥笑ってへんねん。


 そんだけ事務所に対して怒ってるってことやろな。


 私も同じ気持ちやで。


「昨日のSNSライブ観て決心した。もう我慢の限界や、っちゅーことで」


「おん」


「私の人脈総動員して、今回の騒動の黒幕を暴くで!」


 元気よく言うてくれた。


 うん。


 さっきも聞いた。


「いや、あのさ。『人脈を総動員』って言うたけど、どないするん。相手は事務所やで」


 そんな頼りになる人がおるんか。


「大丈夫。私の大学時代からの友人にな、興信所で働いとる人がおるねん」


「興信所? あぁ、探偵か」


 おりました。


 成程。


 探偵を頼るってことな。


「そうそう。その子――女性なんやけどな、あっちこっちにコネがあるから。勿論、芸能界にも」


「マジか」


 やっば。


「めっちゃ凄い人やん」


「せやろ」


 胸を張って言われた。


 おう、その価値はある。


「で、その子は樹那ちゃん推しやねん」


「マジか」


 同じ言葉繰り返してしもうた。


 語彙力ないねん。


 すまんな。


「ずっと樹那ちゃんの処分に納得がいってなくて……実はもう既に調査を始めてんねん」


「マジか」


 三回目のマジか。


 それしか言えんやん。


 さっきから驚きっぱなしなんやもん。


 しゃーないやろ。


「そんでな、まだ詳しい話は聞けてないねんけど、どうやらちーちゃんがかなり怪しいらしい」


「やっぱりか」


 私らが怪しんどったちーちゃん。


 探偵さんが調べても黒ってことは、ほぼ黒幕確定やん。


「アイツ……絶対許さん」


「どうどう、落ち着いて」


「落ち着いとるわ」


 動物をなだめるように言うなや。


「今日、これから動ける?」


「あん?」


 ごめん、全然落ち着いてなかったわ。


 怒りが込み上げてました。


「興信所に行こ」


「え、あっ、え?」


「もうアポはとってあるから。行くで」


「おっ、おう」


 急展開すぎて頭がついていかん。


 いや、善は急げって言うもんな。


「急いで準備するわ。待っとって」


「うん」


 立ち上がったところで、彼女の方を振り返る。


「七奈」


「うん?」


「興信所を頼るなんて、私は思いつかんかった。ありがとうな」


「えへへ」


 感謝の言葉を伝えた。


 大事やろ。


 親しき中にも礼儀あり、や。

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