第5幕 事務所が信用ならんから

第16話 突然の来訪

 ピンポーン。


「はーい」


 SNSライブの翌日。


 真昼間にインターホンが鳴った。


「誰やろ……って」


 画面で確認してみたら、まさかの、


「七奈やん」


 え、今日休日やっけ?


 いやいやど平日や。


「どないしたん」


「とりま開けて」


 画面越しにニコニコしとる。


 せやな。


 取り敢えず入れるか。


「はいよ」


 玄関のカギを解除し、ドアを開ける。


「どないしたん、今日平日やで。ライブもないで」


 彼女を玄関に招き入れ尋ねた。


「えっとな、話があるねん」


「話?」


「おん」


 靴を脱いだ七奈は、そのまま洗面所へGO。


 たまにうちに来ることあるからな。


 いつものルーティーン。


「なんやろ」


 話って。


 電話やのうてわざわざ関西からうちに来た理由。


「うーん……思いつかん」


 お湯を沸かし、彼女用にインスタントコーヒーを準備する。


 私はストックしとるジュースな。


「お邪魔しまーす」


 リビングに入って来た彼女。


 そのままテレビの前のローテ―ブルに荷物を置き、ソファーに座った。


「はいよ」


「あんがと」


 コーヒーを手渡し、私は隣りに座った。


「で、アンタ仕事は」


「休んだ」


 さらっと言うたなぁ、おい。


「なんで? 話やったら電話でええやろ」


 別に家に来るな、ってわけちゃうで。


 純粋にわざわざ何時間もかけて東京に来た意味がわからん。


「いや、直接会って話した方が早いと思って」


「ほお」


 そんな重要な話なんか。


「あっ、仕事は大丈夫?」


「それはこっちのセリフやけど。まぁ、ちょうど片付いたところやから大丈夫やで」


「よかった」


 うん、来る前に確認してほしかったな。


 仕事に追われとったらどないするつもりやってん。


 多分七奈のことやから、終わるまで待っとるつもりなんやろなぁ。


 って、ちゃうちゃうちゃうちゃう。


 本題はなんやねん。


「なぁなぁ、真優っち。提案があるんやけど」


「おん、なんや」


 ナイスタイミング?


 七奈が真剣な表情で問いかけてきた。


「その前に確認な」


「ん? おん」


 なんやねん。


「樹那ちゃんガチ恋勢なのは今でも変わらん?」


「当然」


 なにを言うのかと思うたら。


「どんなデマが流れても、たとえその中に真実が混ざっとったとしても、私は樹那様の言葉だけを信じる」


「……うん、その言葉が聞きたかったねん」


 表情を一変させ、ニッコリ笑った七奈は、


「あんな、真優っち」


「おん」


「私らで今回の黒幕を暴かん?」


 斜め上の言葉を口にした。

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