第15話 私らにできること

 SNSライブが終了し、パソコンの電源を落とした。


「ホンマに」


 あ、七奈との電話は繋ぎっぱなしな。


「久々に樹那ちゃんの元気……ではなかったけど、姿が見られてよかったね」


「おん」


 完璧に鼻声。


 でも、


「にしても、あんな暗い表情の樹那ちゃん初めて見たわ」


「ホンマにな」


 彼女は触れずにいてくれた。


 感謝や。


 それは置いといて。


「多分やけどさぁ、エゴサする言ってたから誹謗中傷見てもうてるんやろな」


「せやろね」


 エゴサなんか見んでもええのに。


 樹那様はファンの言葉を大事にする人やから、見てまうねん。


 個人的には誹謗中傷やら叩くヤツはファンちゃうと思う。


 ただ誰かを傷つけたい頭がおかしいヤツやろ。


「今回のことで騒ぎは治まるかなあ」


「……いや、どうやろ。事務所に無断でやってるから、なにかしら処分があってもおかしない」


「たしかに」


 まぁ、その辺覚悟の上での配信やったんやろうけど。


 心配っちゃあ心配よ。


 いくら樹那様以外興味がなくたってさ。


「せやっ」


「うっさ!」


 突然の爆音ボイス。


 大丈夫。


 スマホは机に置いてスピーカーにしとるから。


「ごめんごめん」


 かっるい謝罪やなぁ、おい。


「で、なんなん」


 それよりもなんか思いついたっぽいから、話の続きを促す。


「事務所に手紙出そうや」


「あーね」


 なるへそ。


「今回のことで処分しないでくださいって?」


「うんうん」


 意味があるかわからんで。


 せやけど、なんもせんよりかはマシやろ。


 あっ。


「どうせやったら、SNSで呼びかけてみようや」


「そうやね! 私ら二人だけよりも、みんなで出した方が効き目ありそう」


 我ながらええこと思いついたわ。


 てか、もっと早うに気づいとったらよかった。


 樹那様の処分に対する抗議文。


 出しとったら……なんて考えるだけ無駄やな。


 過ぎてもたことはしゃーない。


 私らは今できることをやるべきや。


「ついで、って言い方はアレなんやけどさ」


「なに?」


「樹那様にファンレター出したら」


「あー」


 たしかに「ついで」で言うことではないが、


「出すわ」


 ええこと言うやん七奈。


 さっすが我がオタ友。


「ありがとうな」


「おうよ」


 さてさて、なに書こうか。


 なんて考えるまでもない。


 伝えたいことはようけある。


 泣いてもええ。


 強がらんでもええ。


 エゴサはせんでええ。


 そんで、一番大事なこと。


 盲目信者やと叩かれようが、私は樹那様のことを信じてます。


 ありったけの愛情と感謝を込めて書こう。

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