推しの言葉だけを信じろ！

第4幕 愛する人の言葉だけを

第12話 朗報？

「真優っち！」

「なんやっ」

　はい、恒例行事。

　七奈からの鬼電と爆音ボイス。

　今日はなんやねん。

「今何時かわかっとる？　2時やで２時」

　勿論深夜。

「わかっとるけど……絵梨たんのSNS見た？」

「見てないわい」

　こちとら寝とったねん。

　見とるわけないやろがい。

　で、見たんやけど、

「マジか」

「マジや」

　書かれていたのは、『明日、というか今日ですね。22時にSNSライブやります』っちゅう簡潔な文章。

　成程な。

　七奈が電話してきた意味がわかったわ。

「ありがとう、電話してきてくれて」

「いえいえ」

　起きて一人でビックリするより、こうして一緒に感情を共有できた方がええ。

　朝は彼女も出社の準備で忙しいやろうし。

　毎回夜中に電話してくるのはちょいイラッとするけどな。

　しょうもない理由やないから、許したるわ。

　言わんけど。

「これってさ」

「ん？」

　七奈が何故か小声で言った。

「他のメンバーもおるんかな」

「あー……どうやろ」

　RAINbowのグル垢じゃなく、個人垢での発信。

「わからんなぁ。てか、こんな夜中にSNS更新すんのって珍しいな」

「うん。なんかあったんやろか」

　現在進行形で樹那様が大ピンチなこと以外は、グループ活動はいつも通り。

「ライブのお知らせも、こんな形で発信すんのは初めてやし」

「そうやね。基本、グル垢やもんね」

　うーん。

　絵梨たんがなにを考えとるんかわからん。

　なにが起こるんかもわからん。

　ただ、

「観ぃひん理由がないな」

「当たり前」

　せやねん。

　当たり前やねん。

「もし一人やったとしても、絵梨たんのことやから樹那様関連のことなんやろうなあ」

「うん、私もそう思う」

　リーダーとして責任感が強い彼女。

　整形疑惑のクソ記事が出たこのタイミングでのSNSライブ告知。

　世の中に『絶対』なんてないと思っとる。

　せやけど、今回ばかりは絶対に樹那様を守る内容のライブなんやと思う。

「んでさ、真優っちはパソコンで観るん？　スマホ？」

「パソコンやな」

　そっちの方がスペックええねん。

「じゃあさ、電話繋いだまま観ぃひん？」

「あ、それええな」

　どうせライブが終わったら電話することになるんやろうし。

「よし、決まり！　ではでは」

「えっ、ちょ――」

　戸惑っとるうちにブチっと電話が切られた。

　おいおいおい。

　せめて「おやすみ」ぐらい言わせてくれや。

　まぁええけど……最後に一言、言わせてくれ。

「何時まで起きとんねん」