第11話 またか!

 ライブの翌日。


 仕事がひと段落し、SNSを開けば、


「またかい!」


 片手に持っていたココアの入ったマグカップを、勢いよく机に置いてしもうた。


 勿論若干中身が机に……それは置いといて。


「マスコミはアホなんか」


 記事は開いとらへんけど、タイトルには『整形疑惑』の文字。


 SNSには卒アルと今の樹那様を比べた画像が出回っとる。


「どう見ても、どこもいじってないやん」


 頭抱えてため息をつく。


 ホンマにどう見たってな、どっこもいじってないねん。


 せやのに、なんでこんな記事出んねん。


 記事書いたヤツも今回も樹那様を叩いとるヤツら全員、目は節穴なんか。


「眼科行ってこいやゴラァ」


 気づけば口に出とった。


 しゃーないやん。


 別にええやん。


 誰が聞いとるわけでもないし。


「あーもうっ、七奈に愚痴りたい」


 アンチたちに反論の書き込みはせんよ。


 炎上を加速させるだけやからね。


 やけど、この怒りを誰かと共有したい。


 誰かって言っても七奈しかおらんのやけど、


「まだ仕事中よなぁ」


 間違いなく。


 休憩時間になったら電話できるやろか。


 うーん。


 仕事がようけあったら、ご飯食べてすぐ戻るか。


 うーん。


 こりゃ夜まで電話すんの待った方がよさそうやな。


 仕方ない。


 ってなわけで、クソ記事を忘れるため仕事に集中しとったら、


「えっ、七奈やん」


 まさかの彼女から電話。


 最近七奈から電話してきてもらってばっかやな。


「もしもし」


「真優っち!」


 もうこれ恒例行事やわ。


 予めスマホを耳から離しとってよかった。


「おうおう、整形疑惑の件やろ」


「なんで知っとん」


「アホか。流石に昼前にぶん投げられたら把握しとるわ。てか、今電話してええの。お昼休憩中ちゃうん」


「お昼休憩やから即行で真優っちに電話したんよ。ホンマ、我慢すんの大変やったわ」


 ん? 我慢するのが大変やった?


「七奈、もしかして仕事中に――」


「うん」


 言葉を遮られて答えられました。


 仕事中に見たんかいな。


 私が一緒に働いとったときは、隠れてスマホをいじる暇なんかなかったと思う。


 そんで、七奈の休憩時間終了ギリギリまで愚痴を吐き続けた。


 言葉が怒りの炎に包まれとったと思う。


 話しとるうちに腹立ってきたんやもん。


 しゃーない、しゃーない。


「落ち着いた?」


「おん、ありがとうな」


 ブチ切れまくっとった私の話をひたすら聞き続け、「どうどう」って落ち着かせてくれた。


「んじゃあー仕事に戻るわ」


「おん。ホンマありがとうな」


 感謝しとるで。


 しとるけど、「どうどう」はアレやん。


 動物への声かけみたいやん。


 私、犬とか猫ちゃうで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る