第4話 事務所の対応

 エスパー七奈に感謝しつつ、スクショした記事をもう一度読む。


 なんでスクショかって?


 毎回記事にアクセスしてたら、アクセス数アップに貢献してまうやろ。


 んなもん絶対嫌や。


「これさあ」


「うん」


「謹慎処分になるんかな」


 シンプルな疑問、というか不安。


「あー……有り得るかもしれんね。あの事務所やし」


「おん」


 二人して気分が落ち込む。


 RAINbowが所属しとる事務所はかなりの大手なんやけど、いい噂がないねん。


 毎年数人が辞めていってるしな。


 大御所はかなり優遇され、新人は「自分で努力しろ」的なスタンスらしい。


 わからんでもないで。


 でもな、新人がスキャンダルに巻き込まれたり起こしたりしたら、真偽を確認せず即処罰。


 な? クソやろ。


「事務所は今てんやわんやなんやろなぁ」


 コーヒーを一口飲んだ七奈が言った。


 冷静な彼女のトーンに救われる。


 絶対私一人やったらヒートアップしてるもん。


 それこそ、外野のくせしてやいやい言ってくるヤツらとSNSで戦いを繰り広げとるかもしれん。


「早う『事実無根です』って発表した方がええと思うんやけど」


「ホンマそれな。夜中にアップされた記事やから手が回らんのはわからんでもない。せやけど、人手はようけおると思うんよ」


「そうやね」


 何回も言うけど大手やからな。


 スタッフはようけおるはずなんや。


「さっさと手を打てや」


 SNSでも事務所に対して早期対応を求める声が上がっとる。


「うん。その方が樹那様信者たちも落ち着くと思うわ」


「おんおん」


 七奈の言う通りや。


「にしても」


「うん?」


 彼女は言葉を続けた。


「これホンマに、なんで彼氏発覚! って断定してんねやろ」


「わからんっ」


 断定できる材料一つもないのに。


「もしかして、誰かが樹那様を陥れようとしとるんとちゃうかな」


「あっ……」


 その考えはなかった。


 なんで思いつかんかったんやろ。


 自分では冷静になっとるつもりやったけど、やっぱり怒りで思考が鈍っとったんやろなぁ……。


「あっ」


「どしたどした」


 いつの間にかスマホをチェックしていた七奈が声を上げた。


「メンバーのSNSが更新されとる」


「マジで!」


 慌てて私もスマホをチェック。


 メンバーはそれぞれ個人のSNSアカウントを持ってるねん。


 今回更新しとったんは、リーダーの絵梨たん。


「おぉ、流石リーダー」


「せやろせやろ」


 絵梨担の七奈が誇らしげに言った。


 それも当然。


 今回のことが事実無根であることが書かれとったねん。


「事務所より迅速な対応やね」


 あざっす!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る