第3話 ファン VS 外野

「火の勢い増しとるね」


「ホンマにな……」


 七奈から衝撃的なニュースを知らされた翌日、というか今日やけど。


 私は彼女の家にお邪魔しとる。


 今までもそう。


 カフェとかご飯屋さんやったら、時間と店員さん、周りのお客さんの視線を気にしてまう。


 盛り上がったらどうしても無駄に注目を集めてまうからな。


 いつからか私の家に来たり、七奈の家に行ったりするようになった。


 落ち着いて話ができるし、何時間でも語り合えるし。


 関西と東京でめっちゃ距離はあるけど。


 普段推しに貢ぐために質素倹約しとるからさ。


 それに、直接会って話した方が盛り上がるやん。


 で、どっちの家に行くかは交互。


 この間は私の家やったから、今回は七奈の家やねん。


「ファンの人は冷静なんやけどなあ」


 七奈はコーヒーを、私は苦いのが苦手やからオレンジジュース。


「せやねん。騒いどんのは外野の連中や」


 新幹線でこっちに来るまでずーっとSNSや記事のコメント欄をチェックしとった。


 ファンの人たちは、「これ、彼氏って断定できないんじゃね?」「みんなと一緒にいるだけじゃん」「どこが彼氏なんだよ」などなど。


 素晴らしく冷静なコメント。


 対して樹那様のことをよく知らないであろう外野どもは、「アイドルが彼氏いるとか最低」「裏切りじゃん」「アイドル失格」。


 はい、最低なコメントの嵐。


 ついでに言うと、外野のクソコメントにファンが反論して、


「火に油を注いどるなぁ」


「反論したい気持ちはわかるんやけどね」


 七奈の意見に激しく同意。


「ほっときゃええのに」


「まぁ……傍から見たら樹那様担って、なんか宗教っぽいんよね。崇めてるやん」


「否定できへんわ」


 私が樹那様を『天使』やと思っとるのと同様に、他の樹那様担も『女神』やら『神様』ってあがたてまつっとる。


 他担から樹那様担は『信者』と呼ばれとる、はい。


「なんて言うたらえんやろ。立ってるだけやのに神秘的なオーラを感じるんよなあ」


「わからんでもない」


 頷きながら七奈は言った。


「でも、信者たちが暴走してもたらアカンやろ」


「その通りでございます」


 反論できねえ。


 私は今回一切書き込んでないけどな。


 信者としては責任を感じております。


 連帯責任、的な。


「あ、真優っちが責任感じる必要ないで。アンチコメ読んでも、頑張ってこらえてるんやろ」


「おっふ」


 変な声が出てもうたわ。


 アンタ、私の心を見透かしてるやん。


 エスパーなんか。


 って心の中で茶化しつつ、七奈の気遣いが心に染みた。

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