第2話 火のない所に煙が立った
彼氏、彼氏、彼氏、彼氏。
世界で一番愛している推しに彼氏。
ガチ恋勢の私にとって、史上最悪のニュース。
「嘘やろ」
慌ててこれまたベッドの下に落っこちとったタブレットを拾い上げて調べる。
「マジや……」
頭を抱えるしかなかった。
記事のコメント欄には罵詈雑言の嵐。
「真優っち」
そうや、七奈と電話繋ぎっぱなしやった。
「写真見て」
言われた通りに写真を見る。
「これさ、『彼氏』って言えるほどの確証なくない?」
「……ホンマや」
複数掲載されている写真には、ツーショットの写真は一枚もない。
ご飯屋さんで顔にモザイクがかけられた方々と一緒に出てきて、輪の端っこで男性と話しているだけ。
「これってさ」
「うん、打ち上げの日やわ。俳優さんが写真アップしとったし、服装一致しとるし」
「やっぱそうやんね」
ドラマに出演していた樹那様。
役柄はヒロイン。
小さいころから子役として活躍してきたからさん、演技はめちゃ上手い。
他の俳優さんなんか眼中になく、樹那様しか見とらんかったけどな。
話がそれたわ。
顔にモザイクがかけられていても、ドラマの公式SNSや俳優さんたちが打ち上げの写真をアップしとったからな。
二人っきりで会っとったんとちゃうのはすぐわかる。
あ、写真に写っとった樹那様はお水飲んでたわ。
未成年やからね。
「つっつくなら未成年飲酒、とかの方がリアリティありそうやのに」
もう立ち直ってるで。
こんな信憑性に欠ける記事にメンタルやられてたまるかボケ。
「ホンマにな。なんでこんなしょうもない記事、世間に出したんや。アホなヤツらは内容とか写真とかちゃんと見ずに叩くやろ」
「現にそうなっとるしな」
みんな冷静になれや。
「お互いのマンションに行った、とかやったらヤバイけど」
「おん……もしかして第二弾として出すつもりなんやろか」
可能性はあるやろ。
「私は、樹那様は絶対そんなことしてないって信じとるけどな」
「私もやで」
ずっと芸能界に身を置いとるんや。
プロ意識はグルの中で飛びぬけて高い。
今までこんな記事出たことないし。
「なんで今なんやろ」
七奈の疑問に対する答えは一つ。
「そりゃぁ樹那様が今、乗りに乗っとるからちゃうの」
「ドラマに引っ張りだこやもんね」
羨ましそうに言われてもですね。
事実を述べただけなんで。
「なぁ真優っち、明日空いてる?」
「おん、当分仕事しとうないし」
ホンマはあるよ。
でもな。
立ち直ってるで、立ち直ってるけど、樹那様が滅茶苦茶叩かれとるのになんもできひんのが辛くって仕事する気になれへん。
「直接会って話そうや」
外出は気分転換になるし。
今回の騒動について、直接話し合いたかったとこや。
私は二つ返事で了承した。
「……そうやね。明日家行くわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます