第1幕 スキャンダル炸裂

第1話 衝撃

「……うっ……っるさい!」


 今何時だと思ってんねん。


「何時や。2時半やんけおい」


 誰やこんな時間に電話をかけてきとんは。


 しばくぞ。


「誰や誰や」


 ベッドの下に落下していたスマホを拾い上げ、画面を確認する。


「あん? 七奈ななやんけ」


 眉間に皺が寄っている自覚はある。


 何回でも言うで。


 今な、深夜の2時半やねん。


 いくらたった一人の友人とはいえ。


 親しき中にも礼儀ありやで。


 あ、七奈っていうのはやな、私を沼に陥れた……間違えた。


 『RAINbow』の樹那じゅな様、つまり天使に出逢わせてくれた張本人であり同期。


 会社を辞めてからは友人として、オタ友として仲良くしてくれている。


 彼女は同じグルの絵梨えりたん推しの同担拒否。


 それは置いといて。


 こんな私でも小中高大と友人はいた。


 今は全く誰とも連絡をとってへんけど。


 薄い繋がりやったってことや。


 で、言うた通り唯一の友人は七奈だけ。


 ライブは基本ぼっち参戦やけど、奇跡的に二人とも当選したら一緒に行く。


 そうそう。


 七奈は「絵梨たんに顔が似てる」ってファンの間では有名人やねん。


「もうっ、まだ鳴っとるがな!」


 口が悪いのは元々やから勘弁してな。


「しゃーない」


 絶対私が出るまでかけつづけてくるつもりやろ。


 しょうもない理由で電話してきたんやったらブチ切れるからな。


「もしもし」


真優まゆっち!」


「うっさ!」


 思わずスマホを耳から遠ざけた。


 馬鹿デカボイス。


 鼓膜破れるかと思ったわ。


「ごめんごめん、やっと出てくれたからつい」


「やっとって……今何時やと思とんねん」


 履歴みたら大量に七奈からかかってきとったけど。


 マジでなんの用事やねん。


「ごめんやって」


「もうええから」


 申し訳なさそうに謝るんはええ。


 話が進まん。


「鬼電してきた理由はなんなん」


「それが!」


 もーうるさいんはツッコまんとくわ。


「真優っちSNS見た?」


 一瞬にして声のトーンが低くなった。


「あん? 見とらんわ。寝とったし」


「……」


「なんや」


 七奈の方から電話かけてきといて無言はないやろ。


「電話せんかったらよかった」


 滅茶苦茶小声やけど、


「聞こえとるで」


「げっ」


 電話口で言うたらそりゃ聞こえるやろ。


「ホンマ、なんなん? なんかあったん」


「……あのな、ショックやと思うけど」


「おん」


「樹那ちゃんのスキャンダルが炸裂した」


「……」


 一瞬にして頭が真っ白になった。


 え、待ってや。


 内容を聞かなアカンことはわかっとる。


 でも、見たくない知りたくない。


「彼氏がおるって」


 申し訳なさそうに言われたけど、なんの慰めにもならんかった。

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