第41話 黒ずくめの女とさ

部屋に入るとそこにはベッドに座る黒ずくめの女が居た。


「ポーラか、今日は疲れているから明日にしないか?」

「そういうわけにもいかないのさ」


月明かりの入る窓の光で顔半分が照らされているポーラの顔を見る。

俺の部屋には、セバスチャンをはじめなぜか侵入者が多い。


「あまりうちの邪魔をされると困るのよね」

「そうか。おれもあれが旧王政派に流れると困るんだがね」


俺は装備を外しずつ淡々と答えた。


「敵の前で装備を外して呑気なものね」

「さっき下でウェイトレスしていただろ」

「なんだ知っていたのね」

「俺達を殺すつもりなら、その場で毒を盛ることもできたし、一戦交えることも可能だったのでは」


一通りの装備を外し終わった俺は、蛇口をひねり水をタライに汲んでタオルを浸し、上半身を脱いだ。


「あんた何をするつもり! 私たちは敵同士だし……それに、心の準備がまだ……」

「なにを言っているんだ。俺は体を拭きたいだけだ」

「勘違いさせないでよね。でもあんたいい体しているわね」

「こう見えても、戦士だからな、トゥ・ハンド・ソードを扱うにはこれぐらい鍛えてないとな」

「ふーん」


俺の体はそこそこ出来上がっていると思う。しなやかな体のポーラと比べると筋肉質でゴツゴツしているだろう。男女差の違いはあっても曲劇ができる並みの体の柔らかさは、相手の攻撃を自分のものに変えてしまう使い手だと感じる。


「さぁ、そろそろ出て行ってもらえないか、全身を拭きたいのだが」

「私は構わないわよ」

「じゃあお言葉に甘えて」


サクッとズボンを下ろした。


「きゃっ、乙女の前で何するのよ!」

「だから構わないって言ったじゃないか」

「だから心の準備ってものがあるでしょ!」

「早く寝たいのだが、心の準備とやらまで待ってられんからな」

「そんな急かさないでよ。早く寝たいだなんて、乙女によく言えたわね」

「ただ横になって寝るだけなんだが」

「あんたにとっては沢山いる女の一人でしょうが、うちは……初めて……なんだからね」


なにか勘違いをされているようだが、早く床に就きたいのでめんどくさい。


「俺は一人で寝るだけだからな、ポーラと寝るつもりはないぞ」

「乙女の前で一人で寝る? あぁそうか、あんた寝たいだけなのね」

「やっとわかってくれたか。なら出て行ってもらえるかな」

「やーよ。美少女と一緒に居れるだけで幸せ者なのよ。まさか襲わないつもり?」


ポーラは胸元をパタパタとさせて、挑発するように演じてきた。


「なんだせよ。散々嫌がっていたのに襲われたいのかよ!」

「だってよく見たら、こんなにいい男なんだもん……ねぇ」


めんどくささが増してきたわ。頭をかきむしるしかない。


「そんなことよりも、俺に何か用があったんじゃないのか?」

「それは後でゆっくり、うちって魅力的じゃない?」


たしかに魅力的ではある。小柄で笑顔がかわいくショートボブがよく似合う。そして小柄のわりに出ている部分はきっちり出ており、すらっと伸びた足は余計な肉付きもなくきれいだ。


「まんざらでもなさそうね。どうかな、うちと手を組まないかな」

「手を組むだと?」

「そう、うちらならいい子が生まれてきそうじゃない!」

「そっちかよ! 旧王政派に入れってことじゃないのかよ」

「うーん、うちにとってはどうでもいい話かな。魔王が勝とうが旧王政派が息を吹き返そうかなんて興味ないし」

「ポーラは何のためにやっているんだ」

「うちは依頼を受けたからしているだけ、お金を多く積んだ方に付くわ。だってフリーだし」


そうか、彼女は旧王政派から依頼を受けて仕事をしているに過ぎない。条件の良い方に付くだけ。フリーの忍びとしてはその方が都合がいいのだろうな。


「うち、もう我慢できなくなってきちゃったかも」


そう言うと、パンツ一枚の俺に抱き着いてきた。完全に身を預けているのに彼女は軽い。後ろのベッドに押し倒そうともがいているが、華奢な体では筋肉質な俺を押し倒すまではいかない。


「もう、どうして素直に倒れてくれないの!」

「いや、ポーラはなにをするつもりなのかな?」

「乙女の口から言わせるつもりなの。野蛮な人ね。言わないならその口を塞いであげる」


そういって目を瞑ると口づけをしてきた。俺は驚きのあまりキョトンとして彼女の柔らかい唇が触れると、全身に電気が流れたかのようになる。

舌と舌が絡み合うと、彼女の押さえていた力がだんだん弱くなっていく。彼女が落ちないように、俺は彼女を支えたがどんどん力を弱めて行った。

完全に力が抜けた彼女をベッドへと寝かせた。


「ねぇ、こんなうちだけど来てくれるかな……すーぴー……すーぴー」

「……ん!?」


俺の腕の中で寝始めやがった。恐らく俺に睡眠薬を飲ませるつもりでいたのだが、自分で飲んでしまったのだろう。なんか抜けている忍びだな……。


「やれやれ、困るんだよなぁ……」


その時、突然ドアが開いた。

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