第35話 ブラッドフォクドへ潜入

森を抜けると直前に俺らは、丘を覗いてみた。やはりまだ見張りが居る。

目立つ街道沿いを外れて、茂みの中をブラッドフォクドを目指して進んだ。

すると突然リーファからの質問タイムとなった。


「ねえ、二人とも聞いていいかしら?」

「いいよ」

「女性や子供が監禁されているわけなんでしょ」

「そうだけど」

「でさ、結局のところ敵って誰なのよ? 自衛団に居るの。それとも町人なの」

「そこまではわかんないわよ。とりあえず悪い奴はぶっ倒すだけ」


間違ってないのだが、フリソスのやつは無茶苦茶なこと言ってるな。


「とりあえず、捕まっている人たちを開放すれば、だれが犯人なのかは一目瞭然なわけですし」

「まぁいいわよ。それで何処につかまっているの?」

「いちいちうるさいわね。悪そうなやつを一人捕まえて、吐かせればいいじゃないの!」

「ストープ! フリソス、人相だけで相手を判断しないでください。人相が悪くてもいい人はいっぱいいるわけですし」


「セバスチャン! こそこそ隠れてないで出ておいで!!」


フリソスはとある木を指さして止まった。

すると期の後ろから、まいったなって顔でセバスチャンが現れた。


「おやおや、バレちゃいましたか。さすがは魔王様ですね」

「そんなお世辞はいいから、あんた知ってるんでしょ。監禁場所」

「僕はそんな場所知りませんよ」

「あんた消し炭になりたいの?」

「魔王様お慈悲を! 僕にだって秘密をすべて話すわけにはいかないんですから」

「あんたやっぱり何か知っているのね」


フリソスはセバスチャンに卍固めをして締め上げる。


「ギブギブ! 待ってください話しますから……」

「では話してちょうだい」

「せめてこの技だけでも解除してくれませんか?」

「あんたそう言って逃げるつもりでしょ。きちんと話したら放してあげるから」

「分かりました。お教えするのは一つだけですからね。監禁場所は、自警団の管理事務所です」

「だから私たちは倉庫に通されたのね」

「もう一つ吐いてもらいたいことがあるんだけどさ……」


そう話すと、完全に決まっていた卍固めをするりと抜け出したセバスチャンは、いつものニコニコ顔に戻る。


「私の技から抜け出すとは、やるわね」

「こう見えても魔王様には優しいんですよ」

「それで、あんたはについているの?」

「それはですね。秘密にしてもらえませんか」


そう言うとセバスチャンは木の陰に消えて行った。


「あいつにしては話してくれた方じゃないかな。でもまぁ監禁場所がわかったでしょリーファ」

「敵は分からず仕舞いだけど」


ブラッドフォクドの外れまで来たが、町には誰もいない。

元々商店もない町だからな、人っ子一人も歩いていないや。俺達は建物の陰に隠れながら自警団の管理事務所を目指した。

管理事務所らしき建物に到着すると、見張りなのか男が二人立っている。

あれは俺達が馬車に乗り込むときに、含み笑いをしたしたやつらだ。

紙タバコを吸いながら入口付近を監視している。

建物は平屋建てで、窓はあるものの中はカーテンが閉められており中を窺うことができない。

まずはあの男たちを排除するしかないか。


「私に任せてもらえないかしら」

「何かいい策があるの?」


フリソスは半信半疑でリーファを見つめる。

召喚魔法でこっそりと出したのは、細長い筒上の物だ。

俺は何なのかわからないでいたが、リーファが言うには「吹き矢」と呼ばれている物らしい。

敵の首筋を狙ってリーファは息を吹き放った。


「痛っ」


男は小さく声を出すし、首筋から矢を取り除くと不思議そうに見つめその場で倒れこんだ。

それに気づいたもう一人が駆け寄る


「おいどうした?」


すると第二破。これも敵の首筋めがけて飛んで行った。


「なんだ」


最初の男と同じく首筋を触ると、その場で倒れこんだ。

入口に居た二人の男たちは倒れこんだ。


「魔法は派手だからな。そっと攻撃するには吹き矢がちょうどいいわ」

「大当たり! すごい腕じゃないの」

「昔なじみのエルフに教わったのよ」

「まるで暗殺者みたいだな」

「よくわかったわね。さっきのは眠り薬だったけど、暗殺の際は猛毒を仕込んでおくのがポイントよ」


俺はリーファさんにゾッとした。いつかやられるのではないかと。

周りを警戒しつつ、忍び足で自衛団の管理事務所へ向かった。

中にも仲間が潜んでいる可能性だってあるからだ。

倒れている男を足で突っつくと、完全に眠りに落ちていた。

事務所の入口にたどり着いた。中の様子をドアに耳をあてて聞くが、シーンと静まり返っている。

内部の様子はうかがえないが、ここまで来て入らないわけにはいかない。

俺は剣を抜く。フリソスとリーファは呪文を唱えていた。

事務所の中に入るために、ドアノブをゆっくりと回す。

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