第34話 ブラッドフォクドの秘密

翌日、我々は町の東側にある検問所を視察した。

通行者の本人確認書類の提示を求め、大きな積み荷馬車の往来の際には、荷検めを行い厳しく……と思いきや和やかにやってた。まぁ元々北の街道は通行者も少なく、日帰りで狩りをする近所の住民ぐらいで、検閲といってもなじみ客ばかりなので普段から和やかだ。

本当にやばいものを運んでいるのは、人相や普段利用しないような連中なのですぐにわかるという。

今日は地元の農夫が、畑仕事に出かけるので通行する程度であった。実に和やかだ。

最前線なのだから、もう少し緊張感があってもいい気がする。

さてと見るところは見終えたわけで、この『ブラッドフォクド』の町を後にするか。

俺は馬車に乗り込む際に一人の町人を目が行ってしまった。たいしたことはないのだが、一瞬だけこちらを見てニヤリと含み笑いをした。


なにこの違和感。


なぜ笑われたのだ。


なぜこのタイミングなんだ。


なぜだかわからないが、違和感しか残らない笑いだった。


「……聞いてるのかね!?」

「すみません。何も聞いてませんでした」

「いいかい。この町を出たら高い丘を越すと森に入る。一旦そこまで行く。そのあとは我々だけでここまで戻る」

「質問は?」

「はい」


リーファは不思議そうに手をあげて質問をした。


「では、リーファさんどうぞ」

「何のために戻るつもりなのよ。この町にはもう用はないわよ」

「いいえ、あります」


俺はこの違和感を伝えたくて仕方がなかった。


「さすがはリコス、気づいていたの?」

「なんとなくですが、町の様子がおかしくないですか」

「そう、そこなのよ。昨日の夜のセバスチャンの登場といい。やたらと私たちを東に行かせようとしているの」


フリソスは驚きと興奮の渦の中に居た。


「そりゃ何もないからでしょ。何日も滞在したところで邪魔なだけ……」

「リーファその通り、私たちは町の人からすれば邪魔なのよ」

「…………?」


リーファは考え込んでしまう。

フリソスはどこから出したかわからないが、ミニハリセンでリーファに突っ込みを入れた。


「このドラゴン頭」

「なんですってドラゴン頭って何なのよ」

「シー、ですよ。大きな声を出さないでください。二人とも落ち着いて」


俺は誰かに気づかれていないかとカーテンをそっそ開けてた周りを確認した。

誰も気づていないようだ。


「大丈夫そうです」

「いい。この町に入った時から違和感でしかなかったわ」

「なぜ最初に通されたのが倉庫なのよ。それから女性、子供の姿が全くいないわ。おかしくない?」

「言われてみれば男しかいなかったけど、最前線の町だからじゃないの」

「これだがらドラゴン頭は!」

「シー、ですってばフリソス。気づかれまちまうから。リーファさん今までのを纏めるとこんな感じです」


────

俺達はこの町にとっては最初っから邪魔ものでしかなかった。

とはいえ、魔王とドラゴンなんかを相手に、派手なドンパチできるほど体力もない。

だから東の町に移ってもらうのがちょうどいい。そこになぜかセバスチャンも絡んでいるんだけど、そこの謎は今でもわからん。

ただ、わかっているのは町の人はだれかに操られている。しかも人質として、女性、子供がとられているってことです。

────


と、いうことで俺達は町を出ることにした。

「ではロマノフさん来ますね」

「えぇ、いつでも来てください。できる限り早いうちに来てくれると嬉しいです!」


恐らく伝えられる最低限度のメッセージなのだろうか、ロマノフは俺達の馬車に手を振り、笑顔で送り出してくれた。

馬車は町を出ると丘を越えて森へと進んでいく。窓の外から丘を見るとやはり見張りなのだろうか。こちらを監視している人が居た。はやり俺とフリソスがにらんだ通りのことが、町で起きているに違いない。


馬車は森に入ると、この森に住まうエルフ族が居るとのことで、そこまで行くことにした。

すぐに馬車降りると事情をフェリスに話した。

フェリスも最初は半信半疑ではあったが、この森のエルフ族の話によると、ブラッドフォクドが男だけの町なのはおかしいと話す。自衛団も家族が居て、女性や子供もちゃんと居たそうだ。

自衛団のロマノフさんから食料を分けてもらうのだが、ここ数週間姿を見せていないとのことだ。

町に入ろうとすると自衛団に街を追い出されてしまうとのことだ。ますます妖しいは、本当になっていった。

俺とフリソスとリーファさんの三人で町に戻ることにした。


「ちょっとリコス。いちいち『さん』付けとかいらないわよ」


そういわれてしまったので、俺とフリソスとリーファの三人は、ブラッドフォクドを目指して歩き出した。

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