第24話 平和な日常を楽しんだ。とさ

国家安泰とはこのことを言うのかもしれない。

小鳥が囀り、午後のティータイムをきれいに整備された中庭で楽しむ。

噛り付いたマフィンが少々甘いと思うが、その甘さもアップルフレーバーの紅茶がきれいに流してくれる。うん、いい香りだ。なんて平和なんだろうか。

上の階を見上げると、フリソスが必死な形相で書類の山を整理しているころだろう。あっ、こっちに気づいて降りてこようとしているところをリーファさんに見つかって怒られているみたいだ。


やっぱり平和だね。

俺は午後のティータイムを済ませると、ココルにお礼を言って外出することにした。


王宮の外はいちが開かれており賑わいをみせる。

場内では商人たちが、活気のある声で商売をし、雑踏の中で新鮮な品物が売り買いされていく。

ちらほらと地元の人っぽくない人が居て、観光客の姿も見かけるようになった。

活気のある市場も観光スポットになっているのだろう。


一番の目玉はやりは美術館で、今日も今日とて行列ができている。

日の目を見ることがなく地下に保管されていた至極の美術品が、こうして人々を楽しませているのだから、とても良いことだ。肉塊は嫌いだけど、美術品は一流なものをそろえている。


ただ、困った問題も起きている。肉塊より救い出された首都は平穏な生活が戻ったが、しかし地方はまだまだ生活水準が上がっていないところが目立つ。

フリソスと相談してはいるが、なかなか地方への復興支援とまでいかないのが現状だ。首都で稼ぎ潤った分を地方へと分配する方式にも、限界を感じていた。地方でも独自の政策を打ち出さなければ、国民の支持は受けられない。


それにまだ前国王派がいると聞く、前国王からの支援で潤っていた元領主たちだ。

貢物によって分配する方式から、領民の人数に応じて支援金を渡す方式に変えたことによって、分配金が少なくなった連中だ。

特に酷い人身売買や金銀などを不正に収めることによって、利益を得ていた領主はすぐに暇を出し、新しい領主に変えた。そうした連中が束ねた不満分子となり、集まりつあるとの噂もあり、そろそろ地方巡業にいくかなと考えている。


俺は街の外へ出てエルフが住まう森へと出かけた。

目的は地方巡業のための護衛確保のためだ。

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