第18話 エルフの商人があらわる。とさ

前回のキャラバン隊が来てから、すでに二〇日以上たっているが、新しいキャラバン隊はやってこなかった。

個人でやっている小さな商人は、来るのだが街全体の胃袋を満たすのには少なすぎるのだ。

悪名高いロワーフ族が来ているとの評判が悪目立ちして、大きなキャラバンを形成する商人たちが嫌煙しているようだ。

ロワーフ族はそんなに悪い子のようには見えんのだが、商売堅気というのだろうか、どうもそういったものが邪魔をしているようだ。

とはいえ、ほかの商人たちが寄りつつかなくなるからと、二人を追い出す気にはなれなかった。

それよりも二人の仲間の商人達を紹介してもらうことにしたのだが、二人ともあまり乗り気ではないみたい。


「いるには居るけどさ」

「商人仲間は居ますがねぇ」

「乗り気ではないのはわかるが、大きなキャラバン隊が来てくれないと、街の人が飢えてしまう。どうにか頼む」

二人に頭を下げて懇願する。


「どうしようかねぇ」と言っていた二人も、街の人のためならと折れてくれた。

ティミィは通話呪文を唱えると、地面に銀色の魔方陣が展開した。そして誰かと会話をしている様子だ。これはとても便利な呪文で、契約者どうしならどんなに離れた場所に居ても通話が可能というものだ。俺も魔法が使えたなら、二人とつながっていただろうが、魔法とは縁遠くてね。

話した相手とは、うまくいっていないのか、いつものようにティミィに覇気がない。というよりおびえているかの様だった。

ティミィかおびえるほどの大商人とは、いったい何者なのだろうか。

魔方陣の展開が消えると商談が終わり、ティミィはホッと胸を撫でおろしている。


「数日で来てくれるってさ」

「条件も概ね了承してくれたよ。概ね……ね」

「概ね?」


気になるところだが、街の人の生活には代えられない。


────数日後。


二人が嫌がっていた、商人のキャラバン隊が街にやってきた。

それは人間族ではなくエルフ族だった。エルフの商人か。俺も何度かエルフ族が商人をしている団体が居るとは聞くが、会うのは初めてだ。

「来てくれて、ありがとうございます。私はリコスと申します。長旅でお疲れでしょうが、市を開催してはくれませんか?」

ティミィに教えられたキャラバン隊の隊長と思わしき女性に話しかけた。

人間の年のころなら一〇代後半と思わしき頃合いなのだが、長寿命のエルフ族のことだから、すでに一〇〇歳を超えているのだろうな。

ワンレンのロングヘアで、右前横に髪を結っており、緑のワンピース姿だ。


「もちろんそのつもりなのだが、ところでティミィちゃんと、ティナちゃんはどちらかな?」


なぜか二人とも俺の後ろで隠れている。


「後ろに居るのはティミィちゃん、だね」

不敵な笑みを穿るエルフの女性は、俺の後ろに隠れているティミィに興味津々だ。

名前を呼ばれた瞬間ビクッとなるところを見ると、よっぽど悪いことをしたのかと思ってしまうが、二人の様子は膠着しているだけで逃げようとはしていない。


「さ・ら・にティミィちゃんも居るってことは、ティナちゃんも一緒だ、よね」


ティナもビクつくだけで、彫刻のように固まる二人。

エルフの女性はこちらに近づくと、俺の後ろに回り込む。


「みーつけた。まぁ、かわいいーーーー!!」


歓喜に沸くエルフの女性は、膝まづくと素早く二人を抱きか抱え、顔を近づけるとほっぺをあててスリスリしている。

二人は嫌がるそぶりをして逃げようとしている。


「リコス助けて」

「リコス私達、食べられてしまいます」


俺はさすがにまずいものを感じ止めに入る。


「あの、すみません。二人は嫌がっているように見えるのですが……」

「ごほん。ついうっかりやってしまいました」


二人を解放すると、二人はまたしても俺の後ろへと移動する。


「久しぶりに会ったものですから、つい興奮して取り乱してしまいました」

「フェリスはいつもこうなんだ」

「フェリスさん、もういい加減に直してくれませんか?」

「だってさ、二人のかわいさを見ていると、愛らしい小動物のようじゃないですか、ついやってしまうのですよね……」


今度は鼻血を垂らしながら、拗ねているエルフ族のフェリスさんは、人差し指どうしをツンツンして二人を見つめていた。

あぁこの人、直す気なさそう。なので俺は話を進めることにした。

「あのフェリスさんでよろしかったですか。条件はティミィから聞いていると思いますが、その条件でいいでしょうか?」

「ええ、そのつもりで来てますが……もう一つ条件があります!」

「その条件とは?」


「ティミィちゃんとティナちゃんと、一緒に一晩、いや滞在中ずっと……」

「こらぁ、商売人が私欲を出してるんじゃねぇ」


ティミィはどこから出してきたかわからないが、商売魂と書かれたハリセンで、ビシッとフェリスの頭を叩いた。


「ごめんね。ごめんね。冗談だから……さ、許してよ」


手のしわとしわを合わせて、必死に謝るフェリス。

一応、商売のことになると頭に血が上るらしくて、ティミィも反抗できているので良しとするか。

するとフェリスはいじけて、アリの巣を木の棒で突いていた。


「フェリスさん、商談の途中なのですが……もしもし、聞いてますか?」


ボソボソとつぶやきながら、アリの巣を突くのをやめない。

その時、自営団の団長ダニエルさんとフリソスが通りかかった。

フリソスはしゃがんでるフェリスを見つけると、良く通る声で話しかけた。


「よぉ、フェリスじゃねーか。久しぶりだな」


その声を聴いたとたんシャキッと立ち上がり、機械的なぎこちない動きでこちらに向かってくるフェリスさん。


「アイタカッタデス、アネゴ」

「おうよ。あたいも会いたかったぜ」

「アネゴハ、ドウシテコノヨウナバショニ」

「そりゃ、ここの国家元首をしているからよ」

「オウワサワカネガネ、ゴキゲンウルワシュウゴザイマス」


「フリソス、フェリスさんと知り合いだったの?」

「それがよ。ここだけの話、嫌がる幼女を手籠めにしようとしていたからな、シパいてやったんだよな」

「アネゴ、ショハンナノデソレハイワナイデ……」

フェリアは泣きながらフリソスにすがる。


この人、やったぱり反省する気ゼロなんだと思ってしまう。

俺は確信した。いわゆる幼児同性愛者。気に入った幼女を見つけると、百合に走ってしまうらしい。

だからティミィとティナが嫌がっていたのが、良くわかる。

二人の容姿は完全にツボにはまっているんだろうな。

このあとフリソスの介入をもって無事に商談成立となり、市が開催された。

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