第15話 王宮の下のダンジョンを制圧するんだ。とさ2

恐らくこれが宝物庫だろう。

俺は逸る気持ちを抑えつつ、扉を開こうとノブに手をかけた。当然ながら鍵がかかかっている。

そこでティナは開錠呪文を唱えた。ティナの地面に灰色の魔法陣が展開され、扉の鍵穴に向けて光が放たれた。

「そんな呪文ぐらいじゃ、開けないからな」

「……扉が喋ったぞ」

扉は鍵穴を口としてしゃべりだす。

俺達は作戦が必要かと、円陣になって話し始めた。

「この扉には強力な呪文が駆られていますね。どうしますぅ」

「蹴り飛ばしても、頑丈そうだから駄目だろうね」

「鍵穴があるんだから、どこかに鍵とかあるんじゃねーか」

「おーい、鍵とかないから、こっち来ないか。一人で寂しいんですけどね」

扉はペラペラとしゃべる。久々の人だからうれしかったのだろうか。

とりあえず、扉の話を聞いてやろうじゃないかと、扉の前に行ってみた。

「開ける方法は二つある。特別な開錠の呪文で開くか……そっそこの美少女たちがキスしてくれるなら、開けてやってもいいんだぞ」

扉は持ち主に似て下品であった。

「ファーストキスが扉なんてやだよ」

「私もです。扉に初めてを奪われるぐらいなら、いっそ焼き払いましょうか」

俺は二人にそんな酷いことをさせるわけにはいかない。いっそのこと俺のキスならどうだろうか。

「俺が行く」

「リコス、気を付けてね」

こうなったら一か八か、俺は扉の鍵穴に向かってキスをしようとした。

「ペっ」

扉に唾をかけられた。

「おい、にーちゃん。汚い手で俺様に触れてんじゃねーよ。幼女のキスだって言ってんだろうが、話聞いてんのか!?」

扉はどこが目だかわからないが、とりあえず代理ではだめらしい。

ならば強行突破しかないと、俺は剣を抜いた。そして鍵穴目指して突撃をかけて、け破ることにした。しかし剣が扉に触れたとたん扉は光だし剣が粉砕する。

なんて強力な魔力で封印されているのだろうか。

物理攻撃では全く役に立たない。そうなると残るはキスのみか。


ふとティミィとティナの二人を見ると、肩を寄せ合いお互いの両手を握りうるうるとなぎ出しそうにして床にペッタンこしている。

「ティミィ、あたし達で何とかしましょう」

「ティナ、こわいよぅ」

「大丈夫です。いつも私がついているじゃありませんか、ね」

あまりに神々しい百合のシーンに、二人が輝いて見える。

「やめろ、扉の前で百合百合するなー」

鍵穴や扉のねじ穴などの穴という穴から、血のような赤い液体が飛びだしてきた。

「百合幼女万歳……」

扉の断末魔とともに「カチッ」と音と共に、扉が半開きになった。

どうやら二人のかわいらしい姿に、呪文は崩壊し昇天したらしい。

「やったね」

「やりました。私達二人なら何とかなるのです」

と、小さな胸を張るティミィとティナだった。

「えっ、どうやって開けたの? これで終わり?」

俺の脳はハテナでしかない。二人は我先にと扉を開けるのであった。

中には金銀財宝だけではない。王宮内の壺や絵画の本物がここにはあったのだ。

盗まれたり、壊されてもいいように精巧な贋作を置いておき、本物はすべて宝物庫に入れていたらしい。肉塊はセコイ奴である。

「すごいよ。ルーゼンの神秘の女神の本物があるよ。これ売ったらうん億いや数十億はくだらないよ」

「それだけではありませんわ。翡翠の花瓶ですよ。これも今では作ることすらできませんからね。数十億でも出す人は出しますね」

とにかく宝物庫には本物のお宝があったってことだ。

やるじゃん肉塊。というよりもこんなに隠し持っていたのに、国民を飢えさせるなんてなんて非道な奴だ。やっぱ許せねえ。

奥からティナが両手に抱えて、重そうな剣を持って現れた。漆黒の長剣 = トゥ・ハンド・ソードだ。

「さっき剣が折れちしまったでしょ。こちらなんてどうでしょうか」

「トゥ・ハンド・ソードか。しかも黒い剣なんて見たことがない」

俺は手に取るとソードを一振りして、を見る。なんて美し漆黒の刃だ。

「これには魔法がかけられており、使える人物を選ぶ特性があります。もしかしらあなたなら扱えるかもしれません」

魔剣か。ティナの話では呪いではなく、重さを軽減し、加速や打撃力を強化しているとのことだ。

よし、土地ビラに粉砕された剣の代わりに、使わせてもらうとするか。トゥ・ハンド・ソードは長剣のため、腰につけるわけにいかず、背中に背負う形になる。しばらく離れないけど仕方がない。

「リコス。全部買取に出すのかい?」

目をキラキラさせながら二人の幼女に迫られていたが、俺はある秘策を想い立たせている。

「一部だけな。全部あれば国の再建には役立つだろうけど、継続した運営が必要だからね」

「継続したウンエイ?」

「なにか秘策があるんですね」

そうさ、上の絵画は立派だった。まるで美術館にいるようだと思っていたからな。

だから本物なら、美術館として開放してもいいのではとか、思っていたことがある。

そのあとで贋作だと思って諦めたが、本物がこうしてあるなら観光名所の少ない国の目玉の施設になるだろう。

俺は価値が低いものから売ることにした。

二人に鑑定の結果、二〇億リッキーとの試算された。

それぐらいあれば、自営団のお給金や孤児院の運営にしばらくは持つだろう。

さてとあとは上で遊んでいる連中を説得するか。

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