第13話 王宮の下でダンジョンだ。とさ2
階段は結構深くまで続いていた。
ざっくりと、地上から十五メートルほどといったところだろうか。
下にだどりつくと真っ暗である。ティナの照明魔法によって通路に明かりが灯る。
狭い通路が永延と続いていた。マップを見ると最初のモンスターがそろそろ登場予定だ。
明かりの視界に入ってきたのは、ボーンゾルダートの登場だ。
こいつは、元戦士がアンデット化したものだ。骨だけの骨格標本に剣やら鎧に盾を装備した骨の兵士だ。
勝手に繁殖するわけがないので、おそらく肉塊どもが死んだ兵士をアンデット化する呪術をかけたのだろう。
本来アンデット化は、あるモンスターの体液を体内に取り込むことで、アンデット化するのだが、王宮の下にはそんな奴は居ない。むごいことするものだ。
今浄化してやるからな。
俺は剣を抜くと、ボーンゾルダートの足を狙って突撃をした。
見事に足の骨は砕け散り床に崩れ落ちた。
鎧や盾を装備しているから、通常のように上半身を攻撃するよりも、下半身を狙ったほうが効率的だ。
後は上半身から頭蓋骨を切り離して終了。
アンデット戦は、昔に経験しておいてよかった。あの時は知り合いがアンデット化して、それを倒さなければならないつらい思いをした。
永延にさまようアンデットは、頭を切り離すか、聖水をかけて浄化することで倒すことができる。
今回のボーンゾルダートの場合、実態のある体から頭を切り離すだけで浄化することができるので、戦士の俺でも対応可能だ。
しかし、実態のない幽霊系の場合、剣による物理攻撃はノーダメージに等しい。その場合、浄化の魔法や聖水といった道具を活用することで、ダメージを与えることが可能だ。
マップを見ると次々に赤い点がこちらに集まりつつある。
どうやら、一体が戦闘態勢に入ると、ほかのアンデットにも情報がリンクして、戦闘場所に集まる呪術がかけられているようだ。
俺は次のボーンゾルダートを撃破に成功した。
「リコスは強えーなー」
「さすがはりリコスさん頼りになります」
パチパチと拍手して喜ぶティミィとティナ。
「浮かれてる場合じゃないぞ、次はお前らの番だ」
二人の後ろから現れたのは、実体のない幽霊系のアンデットだ。
ティミィは、ポシェットから聖水を取り出すと、試験管のような瓶のコルクを抜き、ゲシュペンストめがけて液体を振りまいた。
聖水を掛けられたゲシュペンストは、煙のように薄くなると消えていった。
聖水って楽でいいなぁ。そう思っていたら俺のほうにもゲシュペンストが現れた。
「ティナ! 聖水を頼む」
ティナは待ってましたと言わんばかりに、すでに手に持っていた聖水瓶のコルクを抜くと液体を俺めがけて振りかけてきた。
「おい待った!」
その言葉もむなしく俺は聖水まみれになってしまった。
「ごめんなさい。ごめんなさい! 私ったらダメダメでごめんなさい」
「いや、いいんだ失敗は誰にでもあるさ」
そんなことを言っているうちに、ゲシュペンストは俺に接近してきた。
俺はそんな不意打ち効かないぜって、つい拳で攻撃をしてしまった。
効くわけないのにと思っていたが、聖水を掛けられたおかげで、ゲシュペンストは浄化されていった。
「ナイス、ティナ 聖水がついている間は俺も戦えそうだ」
「失敗は成功の元だね。ティナ」
「ごめんなさい。でも、大役に立てたようでよかったです」
「よし、俺はアンデット無双だ!!」
マップを見ると無数の敵が接近中だ。
「来いゃ! 一気にかたずけてやるぜ」
それは圧倒的な戦力であった。
ゲシュペンストもボーンゾルダートも、俺の拳に触れた瞬間浄化されていく。
圧倒的戦力を身に着けたと言っていい。マップ上のアンデットを一気に撃破した。
「さすがに疲れたぜ。でも、ティナのおかげで全部やっつけることに成功だ」
「いやーん。あまり、言わないでください」
「すまんすまん。でも本当のことだからさ。ありがとうな」
顔を紅潮したティナは「もう!」とつぶやいたが、実際に倒すきっかけになったのは間違いない。
先に進むことにした一行は、道を間違えることなく、マップで目星をつけた宝物庫がありそうな場所へ歩みを進めるのであった。
「おそらくこの先に宝物庫はありそうだ」
「ねーねー、この部屋って浄化されているよ。少し休憩してから行かない?」
「そろそろお昼だしな、いいだろう。ここで弁当を食べようか」
「やったー休憩だ。ご飯ご飯っと」
「ティミィったら、そんなにがっついて」
「だって、ココルちゃんの作るご飯、おいしいんだもん」
「そうだな、一流シェフ顔負けの腕前だからな」
全員そろってお弁当の蓋を開けると、中にはサンドイッチが入っていた。
卵にツナにハム。これは何だろう。ルミエジュの実のジャムサンドだ。
ルミエジュの実には、回復効果が期待できるので、戦士にはお馴染みなのだが、味に癖があり、俺は実が手なんだよな。
とは言え、ココルが作ったジャムとなると話は変わるかもしれん。
では一口。
「……おっおいしい。ルミエジュの実がここまで、甘くておいしいジャムになるなんて、ココルすげーなー」
「ルミエジュの実って私も苦手なんだけど、すごくおいしい、まるでリンゴジャムに似てるね」
「はむはむ……うーん、そうですね。リンゴジャムに似てますね」
ココルはどんな技を使って、ルミエジュの実をリンゴジャムみたいにおいしく仕上げたのだろうか。
帰ったらぜひ作り方を聞いてみようかな。俺、料理とかダメなんだけど、新しい道に目覚めちゃうかもな。
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