第10話 望んでいた極悪商人現る。とさ
今日も清々していい天気だ。中庭の処刑器具を処分し終え、血なまぐさい環境も改善されたきれいな中庭で、午後のコーヒーを飲んでいた時のことだった。
突然空が暗くなると、まさか雨でも降るのかと思い上空を見上げると、それはドラゴンの影だった。突如王宮にドラゴンが飛来したのだ。
俺は思わずコーヒーカップを床に落として割ってしまう。
「ドラゴンが何用でこんな辺境の小国に!」
「さぁなぁ、ドラゴンなんざ、いつも山籠もりしているイメージだから、人里なんぞには来ないのだがね」
いつの間にか隣に居たフリソスは、ドラゴンの襲来にも動じていない。むしろ楽しんでいるかのようだ。
ドラゴンは王宮の中庭に降り立つつもりらしい。ドラゴンの羽の一振りのはすさまじく台風のような強風が吹き荒れる。きれいに整備した中庭が台無しだ。
それだけではない、ドラゴンなんぞと戦闘をしたらたまったものではない。すさまじい破壊力を持っているので、街が壊滅状態になる。
だが、降り立ったドラゴンは、どうやら戦闘をする気はなさそうだ。
ドラゴンの背中から現れたのは、ロワーフ族の小さな女の子が降りてきた。それは俺が良く知っているミィティとティナだった。
二人とも見た目は、五~七歳ほどの小さな女の子で、青いスモックにプリーツスカート姿でより幼く見えるが、すでに成人を迎えているそうだ。実年齢は乙女のひ・み・つ。髪の毛がショートなのがミィティで、赤いリボンでツインテールにしてるのがティナだ。
「遅かったな二人とも」
「手紙を受け取ったのが、大陸の反対側に居た時だったから、受け取るまでに時間がかかったちゃった」
「でも、ここに来る途中でドラゴンのお友達が通りかかったから、ここまでチャーターしてもらいましたの」
「お前ら、ドラゴンに友達がいるなんて、知らなかったぞ」
「あら、言ってなかったっけ?」
「言ってませんでしたかね?」
二人はお互いを見て笑っている。
なんだよそのドラゴンのチャーターって、簡単にドラゴンをチャーターできるってことかよ。馬車レベルでの感覚でドラゴンを使うなんて、ロワーフ族の商人魂は伊達じゃないな。
そう感心していると、騒ぎを聞きつけて、リリィやココルまでも現れた。
「風の音で騒々しいと思ったら、ドラゴンではないですか」
「すみません。お騒がせしてしまって、俺の知り合いのロワーフ族がドラゴンをチャーターして来てくれまして、名前をミィティとティナと言います」
「益々気に入ったね。ロワーフ族とやらは」
「よろしくな、ねーちゃん」
「ご機嫌麗しゅうございます。お姉さま」
「ロワーフ族は初めてだからよろしくなって……それよりも後ろのドラゴンどこかで見たことあるな」
「…………」
ドラゴンは特に言葉を発することはなかった。
「おお、お前リーファじゃないか。ええっと確か七〇年ぶりじゃんか」
「道理で見覚えがあるのね」
ドラゴンが初めて口を開いた。魔王のフリソスはこのドラゴンと友達なのか。
七〇年ぶりと言ってたな。俺は生まれてもいないし、この人たちと一緒にいると時間間隔狂うな。
ドラゴンのリーファは、二人分の荷物を背中からか下ろすと、光に包まれて人型へと変身した。高級そうなな赤と黒のドレス姿に身を包んだ、年のころなら二〇歳そこそこに見えるが、実年齢はフリソスと二〇〇歳しか違わないらしい。だけど二〇〇年も違えば近いとは言えないと思う俺。
高貴なドラゴンは、様々な生物への変身ができるそうだ。
そうなるとリーファさんは、相当高貴な人物なのだろう。
「懐かしいなフリソン。元気にしていたかしら?」
「おうよ。今はこの相棒と一緒に国の運営を始めたところだ」
「あら、あなた魔王を復活したの?」
「違うってば、人間の国のだから、魔王業はやめたままだ」
「ふーん、あなたの腹心の四姉妹の姿が見えないね」
「あの四人は騒がしくなっちまうから、本件ではお暇を出したの」
「ふーん、それで今はメイドの二人のみってわけなのね」
「いやいやだから、最近相棒を見つけてね。リコスって言うんだ」
「リコスです。よろしくお願いします」
フリソンはリコスの肩を抱いてリーファへ紹介する。
リーファは、リコスの顔をじっと見て
「うーん、ぱっとしない顔よね。あなたにはもったいないから、あたしにそれ頂戴」
「それは無理だな、うちらは相棒だから、貸し出しとかは国民以外行ってないんだよ」
「そーなの、ならしばらく国民になってあげるから、貸して頂戴」
「だから、貸してもあげないっつーの」
「七〇年経ってもあなたはしつこいわね」
「それはこっちのセリフだよ。でもまぁ久々だから一杯やらないか」
フリソンは手をクビクビ動かして、飲むふりをしてリーファを誘っている。
「ふーん、そもいいわね。しばらく滞在するんだからね。それとリコスを頂戴ね」
「はいはい、その辺も一緒に飲みながら話そうや。ココル、宴会の準備を頼むわ」
「かしこまりましたご主人様」
気配もなくフリソンの隣に現れたココルは主人の無茶ぶりをそのまま実行に移すべく、足音もな立てることなくスゥーとキッチンへと向かった。
「リコス達も来るかい」
「いや遠慮しておくよ。さっそくだけど二人には鑑定してもらいたいものもあるしね」
「そうか、落ち着いたら二人の歓迎も兼ねてるから来てな」
「あいよ。そういうことなら参加させてもらうよ」
そうは言ったが、鑑定には時間もかかるだろうし、参加できるかわからなかったが、一応歓迎会ともなれば、参加しないわけにはいかないかな。
ロワーフ族の二人を連れて、王宮内の一室へと通した。
こには俺が売れるとにらんだものを一か所に集めてみた。
実は壺やら絵画などはここには置いていない。
最初は売れると思っていたのだが、前回の買取商人から、精巧に作られた
となると売れるのは、カトラリーセットや金銀の食器類を中心に鑑定してもらうことにした。
「へーなかなかいい食器使っているじゃないのここの国王は」
「ですね。金はすべて混じりっけのない純金製ですね」
二人は秤を使ったり、拡大鏡を使ったりしながら、鑑定を進めていく。
やはり強国である隣国から頂いたであろう、カトラリーセットは高額になった。
ただし、肉塊が使っていたものは、買い取り金額にプラスされることはなく、純金銀量に応じた価格になってしまった。
小国の国王が使っていただけでは、箔がつかないそうだ。
俺も肉塊が使っていたとしてら、ただでもいらないと思ってしまう。
合計五千万リッキーにて買取成立となった。
高原のおいしい水が五〇リッキー、麦酒が三〇〇リッキーと考えれば、かなりの高額。買取商人と比べると、五〇〇万リッキーも多めの買取査定となった。
「ねえ、ほかにもお宝あるんでしょ。それも出しなよ」
「私達ならまだ余裕がありますので、買い取りいたしますよ」
「それがそうしたいんだが、壁の絵画や壺は贋作だから買い取りに出しても仕方ないしなぁ」
「ふーん、意外とこの城ってなにもないのね」
「隠し財産とかありそうなものですけどね」
さすがは鋭いロワーフ族。宝物庫の件を話してもいいのだが、あるかわからないしな。とりあえず話すだけしてみるか。
「実はさ、宝物庫があるらしいのだけど、見つかってなくてさ」
「「えっ、ほ・う・も・つ・こ!」」
二人は目をキラキラと輝かて聞いてきた。
「どこにあるのよ」
「さっそく鑑定に入りましょう」
「いやいや、ある可能性があるだけで、見つかっていないんだ。すまん」
「謝ることなんてないよ、ねー」
「そうです。私達も探すのを手伝いますよ」
「二人にそこまで手伝ってもらおうなんて考えてないさ、自分で探すよ」
「せっかくのお宝だもの、手伝わせてもらうわ」
「私からもお願いします」
俺の両腕にロリロリした二人の幼女風の女の子が、目をキラキラさせながら責められて、ちょっと困惑していたところ、フリソスとリーファがやってきた。二人は明らかに顔が赤らめ、ベロベロに酔っぱらっていた。
「遅しょいから、何しているのかと思えば、幼女相手にニタニタして、いやらしい顔をしているじゃないの?」
「あなたってロリコンだったったの? 違うならおねーさんたちが、大人の魅力で今度は相手をしてあげるわ」
「あーーなんか、めんどくさいことになってきた」
酔っぱらった二人が加わり、素面だけどお宝のことで頭がいっぱいの幼女と、酔っぱらいのお姉さんたちに囲まれてる俺はどうすればいいんだよ。
さらにココルが宴会場の場所が変更になったと勘違いして、料理やら酒類を運んでくる始末。
「おっ、気が利くね。ココルちゅぁん。さっそく飲み直しだ!!」
「こんどはリコス達も飲むぞ」
「えぇっい、どうにでもなれ!」
俺はジョッキに継がれた麦酒をぐびっと飲み干した。
「リコスちゃん! いいねー、いい飲みっぷりだね」
「今度はあたしが注いであーげる」
次はグラスに葡萄酒を注がれ、こちらもぐびっと飲み干す。
「わーい、リコスいい感じじゃん」
一気に飲んだものだからクラクラしてきたわ。
「リコスの飲みっぷりがいいので一番、脱ぎます」
「あっ、ずるい。二番、私も脱ぎまーす」
「なんで服を脱ぎだす必要があるんだよ」
「だってー、飲みすぎて暑いんだもん。それに幼女相手にハァハァしているリコスを見ていたら、欲情しちゃって……」
「するなー」
「リコスって、こんな小さなあたし達のこと好きだったの?」
「しかありませんわ。リコスのためなら脱ぎます!」
「だから二人とも素面……いや、いつの間にか何か飲んでるし」
ミィティとティナは、ココルに祖注がれた蒸留酒を使った
こうして楽しい宴会は、夜遅くまで続いたとさ。
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