第9話 商人がやって来た。とさ

王宮の門が常に半開き状態では格好が悪いので、外扉を腕のいい大工に修理してもらっていたある日のことだった。

大量の荷物を場所に乗せた、商人のキャラバン隊がやってきた。

「街道が整備されたと聞きやってきた」

とのことだ。やったよ。やったよ。街道整備しておいてよかった。

商人達は各都市を巡っていちを開いている一団。

品物を検品させてもらうと、新鮮な果物や野菜のほかに燻製の魚介類に、干し肉などを持ち合わせていた。

フリソスとの相談結果、一週間だけ市を開催する許可を与えた。

ただし、市での売り上げのほんの一部を王宮に収めることが条件だった。

さっそく市が開催され、市民達は他国のものが手に入る機会が乏しかったので、大いに賑わった。

「市を開催してよかったですね。価格も申し分のない安さですし」

「うんうん、民の喜びこそ我々のエネルギーだな。よくやったリコス」

「痛った」

フリソスはリコスの背中をビシッとたたいて喜びを露わにしていた。

価格が安いのには理由がある。売上金の一部といっても、本当に一部だけにしたからだ。

その分、安く品物を提供してほしい。これも条件だったりする。

商人達は十分すぎるほどに安値で答えてくれた。

その商人達の中には買い取りも行っている者もいており、王宮内に買い取りできるものがないか尋ねてきた。

無いわけではないが、これらはロワーフ族に頼んでいたものだからな……。

とはいえ幾らになるかも気になるところだし。

ちょっとした下心も出てしまい、品物を鑑定に出してみた。

するとびっくりするほどの高額提示をされたのだ。看板には『高額買い取りしています』と書かれてはいたが本当のようだ。

「ぜひ私達に買い取りさせてください。王家の物はなかなか市場に出回らないので、私達ならうまくさばくことができます」

嘘ではないと感じる。隣にリリィに居てもらっていたからだ。

もし負のエネルギーを発したら、すぐに教えてくれるように頼んでおいたからね。

とはいえ、普通の商人ですらこれほど高額に買い取るなら、ロワーフ族ならもっと高値で買ってくれるだろう。

俺は商人からの買い取りの申し出を断った。断腸の思いではあったが、今ここで買い取りに出したら、これから遥々訪ねてくるロワーフ族に申し訳が立たない。

だが商人もあきらめなかった。

さらに買い取り金額を上乗せしてきたのだ。本気でほしいらしい。

「どうにか売ってくださらないか」

「売りたいのはやまやまだけど、実は先客が居てね」

「先客? その先客よりも高額で買い取りますぞ」

「それはどうかな」

「どういうことですか。これだけ高額な金額提示をできるのは、諸国を回っている我々だからできること。我々以外にできる者といえば……まさか」

感づいてしまった様子だ。それも初老の買取店主には。

「まさかロワーフ族と交流をお持ちですな」

「まぁ、そんなところです。彼女たちならもっと高い値段をはじき出すでしょう」

「店長! あの伝説の極悪商人といわれるロワーフ族ですって、その品物を横取りしたなんて知れたらうちら商売できなくなってしまいますよ」

「極悪かどうかは別ですが、彼女たちの品物を見る目は一級品ですからね」

買取店主はロワーフ族相手と聞いて、しぶしぶ諦めてくれた。

ってか、商人の間では、ロワーフ族はいったいどんな扱いになっているだ。極悪商人とか言われているし……大丈夫なのだろうか。俺は嫌な考えがふとよぎってしまう。

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