第7話 色々な人と会ったみた。とさ
さてと何をから始めるかだな。
俺は執務室内をグルグルと当てもなく歩きながら考え事をしていた。
会社はおろか、国家運営なんてしたことがないから、ゼロからのスタートである。
何事も学びながら手探りで実践だな。国家として必要なものはまず……お金あたりであろうか。何をするのにもまずはお金は必要である。
フリソスに尋ねたところ
「それなら、肉塊がほとんど持って行ってしまった」
とのことだった。やはり逃げるなら金目のものを持っていくだろうな。
俺は王宮内を見回った。そこそこの装飾品はそのままではあったが、フリソスは金目のものは売り払い、街人への食糧購入に充てたという。
食糧庫も当然ほぼ空っぽで、あるのは葡萄酒や蒸留酒などの酒類ぐらいしかない。
酒は人々を酔わせて弱らせてしまうので、食糧庫の奥に閉まっているそうだ。
祝い事でもあった際には、盛大に開けようと思っているらしい。
なので酒の売却はなしだな。
こういう古い城だから、隠し財産はあるはずだ。
「昔、私の城にもあったわ、そう言う隠し扉。宝物庫ってやつだろ」
さすがは元城主。ということで、宝物庫探しはやる方向性でいよう。ただし、時間がかかるので後回しだけど。
調度品もまだまだ売れるものがないか探せば、出るわ出るわ金銀細工の調度品の数々。
なので、適当な商人に買ってもらうのではなく、昔なじみのロワーフ族達に頼むことにするか。
ロワーフ族とは、ドワーフ族の中でも、非力だけど頭の切れる種族のことだ。見た目は少女そのものだけど、舐めてかかると超絶頭の回転が速いので、負かされてしまう。
それにこう言った王族のものであれば、ロワーフ族のコネでそこらの商人よりも販路を持っているだろうから、ちょうどいい。
フリソスに聞いてオーケーも貰った。
後は彼女たちに連絡するだけだ。彼女たちは常に移動しているから定住先はほぼない。なので伝書鳩ならむ伝書犬を使うのだ。彼女たちからもらった、特別な香りのする香水を犬に嗅がせて、書類を届けさせるのだ。
届いてから一ヵ月もあれば、ここまでたどり着くだろう。
待っている間に売りたいものをまとめておくとするか。ついでに宝物庫も探そ。
そうこうしているとフリソスから、合わせたい人物がいるそうだ。
この国の自警団長をしているダニエル。なんでも元は反国王側に居て、レジスタンス活動をしていたが、国王が逃げた後は、国の治安維持をする自警団を結成したやり手の好青年だ。右片目を戦争で負傷しており、眼帯をしていた。だが弓の名手で、三〇〇メートル先のリンゴを射抜くことができるそうなのだから恐ろしい。
実は先日泊まった隣町の宿屋の主人も、自警団の一員だったそうだ。
驚きはそれだけではなかった。レジスタンスには、森に住むエルフ族も入っていたそうで、街道警備をしているが追いつかないそうだ。そこで町人は町間の移動は自警団と一緒に行動しているそだ。
俺に紹介するだけではすむはずもなく、ダニエルからの要望があった。
「自警団はほぼ無償で働いているのが実情だ。お給金が渡せると自警団員の生活も安定するばかりか、入団希望者も増えるし、装備も増やしたい」
とのことだ。ごもっともの内容で、要するに金策の件というわけだ。
だが、ない袖は振れないのが実情だ。
「現状この国にはお金がないが、用意する意思はある」
として今日のところはお引き取りしてもらった。
なんとしても自警団の解散だけは防ぎたい。これ以上治安が悪化したら、国としては壊滅状態に陥るからね。
いくら人徳のあるフリソスとは言えど、お金が絡むと人は変わるからな。
なんとしても早急に対処が必要なのが分かった。
そして、またしても謁見だそうだ。今度の方は、街外れで孤児院をしているシスターマリー。
食料とわずかな支援をしてほしいとのことだ。
先代の国王はたいそう支援を惜しみなかったそうだが、肉塊が国王になったとたん支援は徐々に減らされていったそうだ。
魔王と先代のシスターから知り合いだったとのこと。この孤児院では人間だけでなくエルフやドワーフ、亜人など、種族を超えて孤児を助けていたことに、大変感銘を受けてフリソスは支援していたそうだ。
それが功を奏してフリソスが旅の途中で、新鮮な海産物や野菜などを空間を渡って、送っていたそうだ。というよりも一方的に送っていたようで、いつの間にか助かっていたそうだ。シスターマリー、なんとも幸運の持ち主。
こちらの要望も結局は金策が必要なわけでして……。
「とりあえず本日は、食料の支援ではいかがでしょうか」
と、先ほど街の人からもらっていた野菜やキノコ、豚肉などを持ち帰ってもらうことにした。
困ったものだ、金策がここまで切羽詰まっているとなると、本格的に宝物庫を探さなくては!
それと一刻も早くロワーフ族の到着が待ち遠しい。
例え宝物庫を見つけても金策にならんからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます