第2話 勇者様は嫌われている。とさ

勇者である俺は、王からもらった豪華の装備を身に着け颯爽と旅を続けている。

途中の街道に出くわす低級モンスターは、よく切れる剣でバッサリとやっつけられた。さすがは良く鍛えられている剣だ。

何せ魔王の首を刈る装備としては申し分ないだろう。

街道を歩いていると不思議なことを感じた。すれ違う人に出会わないのだ。

その代わり低級のモンスターは、どこの街道でも出るところは出るのだが、ここの国の街道は低級モンスターに支配されていると言っても過言ではない。

「なにか変ですよね。低級モンスターがこんなにも出るとは」

「低級モンスターの出現数は、魔王が近くに居るかなんて関係ないはずだしな」

一日に数十匹を倒すことのある街道なんて、基本的にあるはずがない。

大抵街道警備兵がやっつけてしまうので、たまに出ても一~二匹がいいところだ。

それに石畳もデコボコで、これじゃ馬車がまともに通れないだろうな。

また、途中に立ち寄った町も荒廃がひどい。宿屋の主人も久々の客人だと言っていたし。人々の往来がほとんどないのだろう。

これも魔王が国を乗っ取ったせいなのか。

人々を混乱に陥れ、町や街道が荒廃している原因である、魔王を倒することが俺の任務だ。その旅も明日で終わりを迎える。元首都であるリスベル手前の町で宿を取って休息することに。

だが、この街でも不思議なことを聞かれたのである。

「あんたら、首都に居るを倒すおつもりかい?」

「だとしたら、どうするんだい」

支配している魔王を『様』呼ばわりする住民であるからには警戒する。

「いや、どってことはないんだが、命が惜しければ、やめておいたほうがいい」

「そんなに強いのか」

「強いなんてレベルじゃないさ。何せ本業を廃業してから二〇〇年も経っているとはいえ、魔王様は変わりはしない」

「そうか。それならそれでいいさ。俺の仕事も変わらないさ」

「そうかい。だが、命あってのってこともあるだろう。命を粗末にしなさんなよ」

「ありがとう。そういわれるのはこの仕事を請け負ってから、あんたで一五人目だわ」

さっきからなんなんだ、魔王に国をボロボロにされているんだろこの国の住人達は。

それなのに魔王討伐に来た俺は、住人にとってはお払い箱扱いかよ。

まぁ、前任者の八組がダメすぎたのだろうか。それで住民も呆れてあんな言葉をかけてたのかもしれない。

「魔王なんてかばっても誰も得しないだろうに」

「リリィもそう思うかい。だがこの戦いは単なる討伐とは違う気がするんだ」

俺は国王と町の人との魔王についての温度感の違いで、これが普通の討伐とは違う感覚を感じている。

「リコスも変な感じがするのかい」

「何となく……魔王にもだけど、あの二人には気を付けたほうがいいですね」

「あの二人って、クリストフとドンザレスのことかな」

「そう、聖なる力を身に着けていると、負のエネルギーを感じやすくなるんだ。あの二人からはそれをよく感じるのです」

「そっか、リリィがそう言うなら信じるよ」

「僕だって単なるヒーラーじゃないんだから、リコスのためなら……」

「ちなみに忠告をくれたさっきの宿屋の主人からは、負のエネルギーを感じるかい」

リリィは首を横に振る。

そうなると魔王には困っていないということなのか、隣に首都には魔王が居るっていうのに、負の感情が出てこないとは不思議た。

「僕、そろそろ寝るね」

「情報をありがとうリリィ。おやすみ」

そういい、お互いの部屋に入って行った。

翌日宿屋を出で街道を歩き、リスベルに到着した。

城壁には弓が何本も刺さっており、大砲によって開けられたと思わしき穴まで開いている。

ここで戦闘が行われたに違いない。

魔王対国王軍ってところだろうか。城門は破壊されているため隙間から下町に入る。

これはひどい状態だ。街の人々は路上に座って、疲れ切っている状態だ。家も半分以上壊れている家屋もあった。

ただ、子供たちは元気そのものだ。

石を蹴って遊んでいた。

だがその石は、今度は俺らにぶつけられた。

「痛っ」

「魔王様をやっつけにきた国王の犬だな」

「あのなぁ、坊主。魔王が居るから困っているのはお前たちのほうじゃないのか? 俺らは君たちを解放しにきただけさ」

「違うやい。国王の犬は帰れ! この国を救えるのは魔王様だけだ!」

そう言うと走って逃げて行った。

「だそうだとよ、さてこの状況で勇者様はどうする?」

「子供の戯言だ。引き返しはしないさ」

「だよな」

ドンザレスは苦笑いを浮かべ、クリストフと目を合わせた。

リリィは、負のエネルギを感じ取ったのか、リコスの服を引っ張った。

分かっている二人は何かを企んでいる。

街の人間からは白い目で見られながら、勇者一行は王宮を目指した。

途中、近道として下人街を通ったが、すごい悪臭だ。

劣悪な環境には、適した人物がたむろしているもの。

「ようよう。兄ちゃん達よ。有り金と装備一式を置いていけば、命だけは……」

俺はクリストフが呪文の詠唱に入ったのを察し、相手の要件を言いい終える前に、大地を蹴りだした。右手で剣を抜くと、チンピラとの間合いを詰め、首めがけて刃をかざした。

「……助けてやらんでもいいぜって、何やってんだよ」

「この首を切り落とされたくなければ、今すぐに静かに立ち去るんだな」

形勢逆転である。チンピラたちは蜘蛛の子を散らすかの如く、去っていった。

「さすがは勇者。手が速いですな」

「なに、クリストフが物騒な攻撃呪文を準備していたので、先にやつらを逃がしてやったまでだ」

「へー、魔法にも覚えがあるとは恐れ入ったよ。確かに俺は炎系の魔法で殲滅してやろうかと思ったまでだ。なぜ邪魔した」

「決まっているだろ。王宮の近くで派手にドンパチしたら、魔王に気づかれてしまうからさ」

「んーまぁ、そういうことにしておこうか。次はらせてくれよな」

不敵な笑みでそう言った。初めからそう思っていたが不気味な奴。

一方のドンザレスは不関心を装っていたが、槍の鞘を納めているところから、彼も殺しをしたかった様子だ。

殺しがしたいのが二人も居るなんて、とんでもないパーティーだな。

そんなにしたいのなら魔王戦で存分に披露してもらおう。

下人街を抜けると大きな通りに出た。王宮まであと少し。

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