第一章
第1話 勇者は旅立ちをした。とさ
ここは大陸の西側にあるベルデルグ王国。
勇者募集の広告を見てい来たのだが、この国は少しおかしなところがある。大体の国は中央部や交通の要所に首都を設けるのだが、ベルデルグ王国は違った。この王国といえば、昔はもっと南側に王都はあったはずなんだが、不思議と今は国の西側の国境山岳地帯に首都を構えている。
噂では内戦が勃発したとのことだが定かではない。
この勇者募集の広告ですら、怪しいとの噂だからな。真相は直接国の者に聞けば済むことだ。
俺は小ぢんまりとした王宮の門番に、勇者募集の広告を見てきたことを告げると、すんなりと通してくれた。
内部はきな臭い感じがする。戦争でも始めるのかというぐらい軍備を整えている。
個室に通されると早速面接の開始だ。俺は二人の面接官が担当された。
簡単な面談を軽く受け、実績について聞かれたので、傭兵時代の成果をざっくりと伝えた。
相手はこちらには聞こえないようなひそひそ話をしており、首を縦に振っているからにはある程度納得されたようだ。
そのあとは、王への謁見を許されたのだから、どうやら面接にパスしたようだ。
小ぢんまりとした王宮のため、面接に使われた個室を出ると、右に曲がりメインの通りに入ると大きな扉がそこにはあった。
玉座の間というのだろう、俺は緊張こそしていたが、小国の国王とのこともあり心穏やかに謁見することができた。
王は一人分の椅子では収まらず、ソファーのような大きな椅子に座り、何かの肉を頬張っていた。
「ご機嫌麗しゅうございます。国王陛下、謁見いただき感謝いたします」
帽子を取り片足を膝をつき、挨拶をする。
その間も何かの肉を食べている。
「げっふっ」
ゲップをすると国王は、側近にひそひそ話をしている。
「名はなんと申すと、国王様はおっしゃっております」
「はっ、名前ですか。リコス・バンディと申します」
王は食事が全く終わらない。次にまたなんかの肉を食べ始めた。
また側近に話すと
「良い名だ。と申しております」
「はっ、もったいなきお言葉、ありがたき幸せ」
王は食事をしつつ立ち上がると、側近に付き添われ階段を降りてきて、俺の前に立った。
「よく聞くがいい。お前で八人目だ。まったくもう。今度こそ憎き魔王の首を持っていまれ」
魔王とか言ったよな、あの魔王か。確か二〇〇年前に突然にして魔王業を廃業した魔王のことか。
「僭越ながら国王陛下、魔王というのは二〇〇年前に廃業したと聞きます。その魔王の首を刈るのが今回の任務でしょうか?」
「何度も言わせるな。魔王の首を持っていまれ、場所はわかっているか。かつての王都であるリスベルの宮廷に居るだろう」
「はっ、必ずや魔王の首を取ってまいります!」
国王は玉座となっているソファに戻ると
「期待しているが……いいか、お前で八人目だということを忘れるな!」
「ご期待に添えられるように目指してまいります」
そう俺は言うと立ち上がり、玉座の間を去ろうとしたとき、もう一度国王は言った。
「忘れる出ないぞ、相手は魔王だということを、人の国を乗っ取りやがって。あれから食欲が戻らん」
そういい終えると、またしても何かの肉をかじり始めた。
なんだよ。その食欲が戻らないって、めちゃくちゃ食ってるじゃんか。
それにあの太り方は何だ。まるで肉塊だな。さっき階段を降りることすらままならなかったくせに、まだ食べるつもりかよ肉塊。
そう思ういながら玉座の間を後にした。
するとさっきの面接官が待ち構えており、前金と王都までの地図と豪華な装備をくれた。
剣も研ぎに出したいと思っていたところだし、ちょうどよかった。
それと討伐隊の仲間を紹介された。
剣士役がなかなか揃わずに、俺で最後だったみたいだ。
魔法使いのクリストフに、ヒーラーのリリィ、槍兵のドンザレス、そして剣士の俺で討伐パーティーの出来上がりだ。
クリストフは、魔導士らしい黒のローブに身を包み、顔の半分を覆っていて口元しかよく見えない。
リリィは、少年かと思える少女だ。私の正拳にご加護をってぐらいやんちゃな子だ。ただし、装備はヒーラーらしく白いローブに身を包んで、聖書らしき書物を手に持っている。
最後のゴツイのはドンザレス。職業は槍兵らしく長物を持参している。
両端を筒に入れているところをみると双頭らしい。
俺は新しい装備に身を包むと、勇者らしく見えるのか、周りで作業していた兵士からも激励をもらった。
ちょびっとだけどやる気を出した俺達は、山岳地帯の王都を後にした。
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