第58話 セリス視点
……もう、ユウマったら。
そういえば、再会した時にも下着姿を見られたんだったわ。
……思い出したら恥ずかしくなってきた。
「セリスさん」
「ひゃ!? な、なに?」
「どうしたんです? 耳が真っ赤ですけど」
「な、何でもないわ……意外とカレンは落ち着いているわね」
水にずぶ濡れした時も動揺はしてたけど、その後は割とけろっとしていた。
も、もしかして殿方との経験があるとか!?
「ああいう遊びはよくやってましたから。もちろん、相手がユウマさんっていうのもありますよ? むしろ、ユウマさんの方が恥ずかしがっていた気がします」
「ふふ、そういえばそうだったわね。必死にこちらを見ないようにしてたし」
「えへへ、ちょっと可愛いなって思っちゃいました」
「少しわかる気がするわ……なにかしら?」
「なんだか、外が騒がしい気がしますね」
すると扉が開き、ノルン先生が入ってくる。
その顔はいつもと違って真面目で、すぐに何かが起きたのだと察した。
「ここにいたのね!」
「先生! なにがあったのですか?」
「ごめんね、とりあえず付いてきてくれる?」
私とカレンは頷き、先生と共に部屋を出て行く。
すると、砦の中で兵士たちが忙しなく動き回っていた。
そして移動しながら、何か起こっているのか説明を受けた。
「魔物の大群?」
「それはどうしてなのです?」
「原因はわからない。スタンピードの兆候はなかったのに……まるで、急に現れたみたい」
「そうなると理由は後ですわね」
「そういうこと。本当は生徒に頼むのなんて教師として失格なんだけど……手伝ってくれる?」
「「もちろんです!」」
そして私達は先生について行き、砦の外に出る。
そこでは、怒号が飛び交っていた。
「そっち行ったぞ!」
「こっちに人を!」
「こっちだって限界だ!」
忙しなく動く兵士、担架で運ばれる者もいた。
生徒達は中央付近で震えていて、その場に留まっている。
「あの子達は……」
「流石に無理には戦わせられないから。それに、悪いけど足手まといになっちゃうしね」
「わ、わたし達は良いのですか? その、ユウマさんなら話は別ですけど」
「そもそも、ユウマはどこに?」
ユウマなら、こういう時に真っ先に動きそうだけど。
「あぁーそれが……外に走りに行っちゃって」
「「はい??」」
「ふふ、彼も若いってことよ。とにかく、彼のことは平気。貴方達は試験をクリアしたし、自分の力も知ってる。だから、頼んだのですよ」
「……微力ながらお手伝いしますわ」
「わ、わたしもですっ」
「ありがとう。ちなみに、レオン君にはもう戦ってもらってるから」
そしてカレンは後方で癒しの支援、私は西側にある柵へ派遣される。
そこでは兵士たちと……なんと、カイル王子までもが戦っていた。
「カイル様!? 貴方までなにを……」
「ふっ、それはこちらの台詞だ。侯爵令嬢である其方が戦場に来るなど……」
「むっ……女だって戦えますわ」
「そうであったな……では、共に戦うとしよう」
……この短期間でなにかあったのかしら?
なんだか、憑き物が取れたような顔してる。
ううん、今は戦いに集中しないと。
「ギャギャ!」
「ブルァ!」
「なんのっ!」
「行きますわ!」
カイル様は見事な槍捌きで敵を一突きし、私は盾でガードしつつカウンターで仕留める。
思ったほど相性は悪くなく戦いやすかった。
「ふっ、やるではないか」
「カイル様こそ見事ですわ」
「……最初から、このように接していれば良かったのかもしれんな」
「カイル様?」
「いや、なんでもない」
「そうなのですか? ……とりあえず、引き続きよろしくお願いしますわ」
「ああ、こちらこそよろしく」
私達は協力しつつ、迫りくる魔物達を倒し続けるのでした。
……こ、これで終わったの?
私たちに来る魔物は清々、数十体だった。
それでも少ない方だったけど……疲労感が違いすぎる。
「こ、これが実戦……」
「いつも兵士の方々が感じてること……私達は平和な檻の中でぬくぬくとしてたいうことですの」
「俺は何もわかってなかった……このような様で何を勘違いしていたのか」
「カイル様……」
「其方にも迷惑……なんだ?」
振り返ると、そこには魔法陣が浮かんでいた。
そして……突如、そこから魔物が溢れ出す!
その中には、上位種であるジェネラルが数体もいる。
「ギャギャ!」
「ブルァ!!」
「な、なぜだ!?」
「カイル様! 逃げてください!」
王族であるこの方を死なせるわけにはいかない!
それに後ろには他の生徒達が!
みんなを守れる騎士になる、それが私が決めたこと。
「すぅ……土の壁よ、我らをまもりたまえ——アースウォール!」
迫りくる魔物達の前に十メートルほどの土壁を展開し、何とか押しとどめる!
「くぅ……! 今のうちに!」
「そ、そんなことできるものか!」
「は、早く……! そんなには持ちませんわ!」
魔力がどんどん減っていく!
それに、このままではすぐに回り込んでしまう!
私に、もっと力があれば……守れる力が。
その時、私の肩に手が置かれた。
「——良くやったね、セリス」
「……ユウマ」
そこには、全身血まみれ泥まみれのユウマがいた。
こんな状況だというのに、私の胸はときめいてしまうのでした。
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